【スバル クロストレック S:HEV 新型試乗】こんなに燃費の良いスバルは初めて!…中村孝仁

スバル クロストレック プレミアム S:HEV EX
スバル クロストレック プレミアム S:HEV EX全 33 枚

スバルはこれをストロングハイブリッドと呼ぶ。敢えてそうするのは、すでに「e-BOXER」と称するHEVモデルが存在し、それとの差別化を図るためである。

【画像】スバル クロストレック プレミアム S:HEV EX

正直なところ、スバルのクルマはこれまで性能的にも素晴らしく上質感もあって、特に走りの運動特性や快適な乗り心地など、いわゆる「走る・曲がる・止まる」という自動車としての基本三要素が高次元でまとまっていて、その走りの質感は玄人をうならせるに十分な資質を持っていた。ただ燃費がなぁ…というのがほとんど唯一無二の欠点といえた。エクステリアデザインに関しては、好みの問題もあって好きならそれでいいじゃん?とやや突き放した表現にとどめていた。まぁ、個人的にはあまり「推し」ではないが。

しかし、ストロングハイブリッドに関しては、その唯一無二の欠点が消えたといった良い。

スバル クロストレック プレミアム S:HEV EXスバル クロストレック プレミアム S:HEV EX

結論から先に書くと、今回の試乗でおおよそ160km程度走ってみたが(大した距離じゃないので次はもっと走ってみる)、一般道が占める割合が7割程度という走行パターンでも、15.8km/リットルと、これまでのスバルではあり得なかったような高スコアをマークした。過去最高は、恐らく同じクロストレックのFWD車で高速を流して達成した15.1km/リットル。今回とはまるで条件が違うし、その時も「とはいえ、一般道を普通に流すとその数値は一気に下がるから、やはり燃費はあまり期待できない。」と書いているから、半ば低燃費はあきらめの入った存在であった。

しかし、ストロングハイブリッドを得たことで、その諦めの必要はなくなった。もっとも2年前に試乗したFWDのクロストレックが、上級モデルのリミテッドでも306万90000円であったのに対し、今回のS:HEVの値段は、上級のEXでは405万3500円(試乗車はオプションを含んで426万2500円)だから、やはり追加したシステムの値段は車両価格を結構押し上げている。

◆フォレスターよりも「どっしり」とした走行感覚

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今回の試乗は先に新しい『フォレスター・ターボ』を試乗した後に、このストロングハイブリッドに乗った。当初はフォレスターもストロングハイブリッドが指定されたが、同じエンジンのクルマを乗り継いでも意味がないと思い、日本市場で最初にストロングハイブリッドが使われたクロストレックだけをストロングハイブリッドとして、フォレスターのストロングハイブリッドはもっと長距離が乗れる試乗に使ってみようと思う。

そんなわけで、恵比寿にあるスバル本社からフォレスターに代わりクロストレックで乗り出してみると、最初にあれっ?という感覚に襲われた。というのも、何故か車体の小さなクロストレックの方が、どっしりとした走行感覚だったからである。方やDセグ、一方のこちらはCセグなのに、このどっしり感は何なのか?という感覚である。

仕様書を見てみると、フォレスター・ターボ(車名はスポーツEXだ)の車重1660kgに対し、クロストレックS:HEVは、全く同じ1660kg。重さのなせる技もあるだろうが、大した大きさではない1.1kwhのバッテリーをリアに搭載した結果、ノーマルのクロストレックとはだいぶ前後の重量配分が変わった可能性があって、このどっしり感はそうした結果の産物かもしれない。残念ながら、今回はエンジニアと話す機会が全くなかったので、想像の域を出ないが、車体の大きなフォレスターの方がずっと軽快でスポーティーな走りと感じられた。

スバル クロストレック プレミアム S:HEV EXスバル クロストレック プレミアム S:HEV EX

新しいハイブリッドシステムは、トヨタのTHSをスバル流にアレンジしたものと聞いている(これも確認したわけではないが)。THSは確かに抜群の燃費を生み出す一方で、走りのダルさも提供してくれてしまうので、シャキっと走りたい向き(特にスバルユーザー)には、どちらかといえば不向きかもしれないが、それでも燃費という甘言に抵抗するのは難しい。

あれやこれやと色々試して走ってみても、特にサーキットを使った高速の試乗会などで見せるシャープの走りの感覚は失せ、冒頭話したようなどっしり感と、少し重ったるい鈍重な動きに支配される。つまり、2.5リットルNAとトランスミッションにモーターを二つ組み込んで、リアトランク下にバッテリーを積み込んだ仕様と、バッテリーもモーターも付かない純粋なICEのみの1.8リットルターボでは、同じ車重でも1.8リットルターボの方が走りの軽快感はずっと高いということだ。

◆スバル唯一の欠点がなくなった

スバル クロストレック プレミアム S:HEV EXスバル クロストレック プレミアム S:HEV EX

今回は前述したように、ほぼ一般道を低いスピード域の流れに乗って走るケースが大半を占め、信号のない長い区間を走るという状況になかったから、15.8km/リットルという燃費にとどまったが、高速主体で長距離を走れば、WLTCの燃費18.9km/リットルに近いスコアを叩き出すのは容易のように感じた。一方でフォレスター・ターボの燃費は、こちらも同じような走行パターンで9.8km/リットル。これも高速主体に切り替えれば燃費は伸びるが、とても18km台に届くとは思えないから、明らかにS:HEVの燃費はスバルのネガ潰しには確実に貢献している。

クロストレックの使い勝手に関しては、ラゲッジスペースの下段部分にバッテリーが押し込められた結果、ラゲッジ容量が減ったこと以外、既存のモデルと何も変わらず、相変わらず快適で上質な室内空間を持っている。

スバル クロストレック プレミアム S:HEV EXスバル クロストレック プレミアム S:HEV EX

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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