初心者マークだ! 自動運転バスの「社会的受容性」をデザインで探る---コンペ結果発表

自動運転バスのエクステリア・デザインコンペ表彰式
自動運転バスのエクステリア・デザインコンペ表彰式全 12 枚

かわいい! 自動運転バスの社会的受容性を高めるデザインとは? 交通安全環境研究所と筑波大学公共心理研究室が「自動運転バスのエクステリア・デザインコンペ」を開催し、10月13日に結果が発表され、川崎市役所で表彰式が行なわれた。コンペには川崎市が協力した。

【画像】12枚、自動運転バスのエクステリア・デザインコンペ受賞作品と表彰式

コンペのラッピング部門最優秀賞は福嶋咲さんの「人と自動運転の協調性」、ボディ部門最優秀賞は本田耕さんの「NIWA-BUS 地域で育てる庭のようなバス」と福田英盛さんの「K-mo-limo 軽自動リムジン × ケモノなノリモノ:ケモリモ」がそれぞれ受賞した。


◆コンペの目的:自動運転車両は不安を与えるから

自動運転技術の発展により、車両の安全性や運行システムは急速に整備されつつある。しかし、運転手がいない車両や慎重すぎる運転行動が、周囲の歩行者やドライバーに心理的な不安を与える場合もある。

この課題に対し、デザインの力で「地域に愛され、受け入れられる自動運転バス」を生み出すことが本コンペの狙いだ。運転行動そのものだけでなく、外観から感じる安心感や親しみやすさを通じて、社会的受容性を高めることを目的としている。

審査員の河合英直氏(交通安全環境研究所)は「自動運転車が社会に受け入れられるために、技術だけでなくデザインの力を借りたい」と語る。筑波大学の研究チームによる分析では、人々が“かわいい”や“弱い”といったデザインにより安心感を覚える傾向が明らかになっており、今回のコンペでも研究成果が生かされた。

◆審査と評価軸

コンペは「ラッピング部門」と「ボディ部門」に分かれ、それぞれ約40作品の応募があった。募集期間は6月1日から7月31日までで、一次審査(8月中旬)と二次審査(9月10日)のプレゼンテーション審査を経て、各賞が決定した。

審査は、
社会的受容性(周囲への配慮や安心感)
地域とのなじみ度(川崎らしさ)
意匠性(色彩・バランス・品位)

を基準に行なわれた。ボディ部門ではさらに「実現可能性」が加わった。

審査員は、河合英直(交通安全環境研究所)、佐治友基(BOLDLY株式会社)、谷口綾子(筑波大学システム情報系)、根津孝太(znug design,inc.)、山本早里(筑波大学芸術系)、山本卓身(カーデザイナー)。

自動運転バスのエクステリア・デザインコンペ表彰式自動運転バスのエクステリア・デザインコンペ表彰式

◆受賞作品

●ラッピング部門:走る初心者マーク

谷口綾子審査員(筑波大学システム情報系)はラッピング部門のデザインについて「社会的に受け入れられるかどうか、川崎らしさの2点が課題だった」と語る。

最優秀賞は福嶋咲さんの「人と自動運転の協調性」。「初心者」「人との協調」「地域とのつながり」という3要素を明快にデザインへ落とし込み、初心者マークの色使いで“発展途上の自動運転”を象徴した点が評価された。川崎市にゆかりのあるモチーフをさりげなく織り込み、地域との一体感を演出している。

ラッピング部門の最優秀作は、2025年10月から2026年3月まで川崎鶴見臨港バスのレベル4自動運転バスにラッピングされ、川崎市内で実際に運行予定だ。賞典として福嶋さんには受賞作のペーパークラフトが贈られた。

福嶋さんは「初心者、人とバスとの協調性、地域とのつながりの3点でデザインをまとめた。“初心者”とは、地域に愛される、地域に愛される、そういう存在だ。最初は協調性と地域性で考えていたが、交通機関らしさを考え、初心者マークをアレンジした。川崎市のことはよく知らなかったので、絵柄のモチーフに悩んだ」と作品について語る。

「試行錯誤が結果につながったので、とても嬉しい。制作を通じて、社会の中でデザインが果たせる役割について改めて考えるきっかけとなった。今後もデザインを通して地域と関わりながら、社会に貢献できるよう努力していきたい」

優秀賞+審査員賞には湯山愛梨さんの「自動運転修行中!熱血漢カワサキさん」が、特別賞には馬場愛さん「アートの町 川崎」と免田慶祐さん「音楽のまち・かわさき」が、審査員賞には奥村杏理さん「バスを動かすために頑張る生き物」がそれぞれ選ばれた。

ラッピング部門最優秀賞:福嶋咲さんの「人と自動運転の協調性」ラッピング部門最優秀賞:福嶋咲さんの「人と自動運転の協調性」

●ボディ部門:優劣つけ難く…

最優秀賞は、方向性の異なる2作品が選出された。

本田耕さんの「NIWA-BUS 地域で育てる庭のようなバス」は、地域コミュニティと共に緑を育むという思想を持ち、バス停や待合ベンチまで含めた“まちのモビリティ・ハブ”として評価された。

もう1つの最優秀賞は福田英盛さんの「K-mo-limo 軽自動リムジン × ケモノなノリモノ:ケモリモ」。動物的な耳や尾にセンサーを組み込み、車両の意図を自然に伝える工夫が特徴だ。方向感のわかりやすい造形と愛嬌あるデザインで「社会的受容性を高める完成度の高い作品」とされた。

河合審査員によると「ひとつはかわいいデザイン、もうひとつはバス停含めて自動運転システム全体をデザイン。方向性が違い、優劣つけ難いので最優秀賞を2点とした」と説明する。最優秀賞の賞典は、受賞作の絵葉書レンチキュラーと、同じく受賞作の3Dクリスタル彫刻。

審査員賞には塩月卓也さんの「生命を包むモビリティ」が選ばれた。

表彰式では川崎市の藤倉茂起副市長が福田紀彦市長のあいさつを代読した。「川崎市ではバス運転士不足の対策として、自動運転バスに取り組んでいる。デザインコンペのような機会を通じて、自動運転バスを地域の皆様に身近に感じてもらえることは、公共交通の未来にとって意義深いと考える」。

《高木啓》

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