エンタメ空間としての自動車…メーカー/サプライヤーはなにをすべきか?[インタビュー]

エンタメ空間としての自動車…メーカー/サプライヤーはなにをすべきか?[インタビュー]
エンタメ空間としての自動車…メーカー/サプライヤーはなにをすべきか?[インタビュー]全 5 枚

ドルビーラボラトリーズ 日本法人社長 大沢幸弘氏がレスポンスセミナーに登壇する。

「移動の手段から空間に変わる」クルマに求められる、もっと楽しいエンタメ空間とは」では、モデレーターに鈴木万治氏(デンソー技術企画部CX)を迎え、メーカーやサプライヤーにとっての新しいキャビン空間について、講演の他に対談や質疑応答も行われる。

どんな内容になるのか、大沢氏へのインタビューをベースに、その概要と考察をまとめたい。

技術と社会の進化がクルマの新しい体験の可能性を広げる

長い間、クルマは移動手段として、その機能にフォーカスした進化をとげてきた。クルマの魅力や価値ポイントも走行性能や経済性・効率性が重視されてきた。しかし、種々の技術の進化やライフスタイルの変化、そして車両そのものの技術進化が、クルマに新しい価値や体験をもたらしている。

静粛性や快適性が高まり、キャビンはより落ち着いた居住空間としての可能性を広げた。 半導体技術、通信技術、映像・画像処理技術、ソフトウェアの進化は、自動運転、高度運転支援だけでなく、コックピットのUIを変えた。クルマというハードウェアは、リビングやオフィスの作業スペース、寝室やリラックスルーム、災害時の避難場所としても利用できるようになった。趣味の相棒としても、運転や旅行以外の領域に広がっている。

この傾向は、電動車の充電という新しい体験(機能)が後押ししている部分もあるだろう。給油モデルにおいて、燃料補給は本来不要であり短ければ短いほどよい。しかし、EVにおける充電(経路充電・目的地充電)は、休憩や食事、娯楽や業務など移動以外の意味をもたせることができる。これは電動車に限らず、今後あらゆるクルマが移動時間の過ごし方を再定義する流れの一端ともいえる。

“クルマに必要なのは「走る」「曲がる」「止まる」であって、居住性についてもあくまで車内エンターテインメントはギミックで副次的であり、自動車ビジネスにおいて本流ではない”という立場もあろう。

「日本メーカーの本来の競争力VSエンタメ空間の迫力」で良いのか

だが、大沢氏の考えはすこし違う。

「日本車の国際競争力は高い。しかし、世の中の競争軸が日本の望まない形になっていないか危惧しています。ドイツ高級ブランドや中国新興勢など海外メーカーは、どんどんエンタメ体験を進化させています。日本の自動車は本来、世界で最も競争力があるはずなのに、“本来のクルマの良さ”と“エンタメの魅力”のどちらを取るかというような競争構造にされてしまうのは、非常にもったいないと思うんです」

自動車の競争軸として、ひとつは日本車が守ってきた従来型の「走る」「曲がる」「止まる」といった基本性能やデザイン、経済性、安全性等の本来の軸。もうひとつは、ドイツ高級ブランドや中国新興勢が進めるエンタメ体験の迫力を重視する新しい競争軸である。

日本車の品質・安全性・燃費等について、だれも異を唱えるものはいないだろう。それにアドオンされる価値や機能について、要不要の二元論で排除することはまた別問題だ。エンタメ体験で決して劣後せずに、そこは同等以上にして、日本車本来の高い基本的な優位性で勝負すれば、我国の自動車産業はますます世界市場で羽ばたいてくれる。

これが大沢氏のいう「もったいない」の意味だ。


《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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