無ければ作る、本気のワンオフ! クロスロード用リフトアップ車高調計画始動~カスタムHOW TO特別編~

無ければ作る、本気のワンオフ! クロスロード用リフトアップ車高調計画始動~カスタムHOW TO特別編~
無ければ作る、本気のワンオフ! クロスロード用リフトアップ車高調計画始動~カスタムHOW TO特別編~全 15 枚

とある取材の最中に編集部F氏から「車高調のワンオフができる会社ってないですかね?」という相談をされた。いきなりおかしなことを言う人なので、困惑しながら事情を聞くと、自身のクルマにリフトアップ車高調の設定が無いそうだ。

【画像全15枚】

彼が乗っているのは平成20年式のホンダ『クロスロード』で、確かに少々マニアックなクルマだ。現在はリフトアップスプリングで車高を上げているらしいが、フワフワと収まりが悪い動きでどうにか改善したいらしい。先に断っておくが、編集部のF氏は自腹だ。リアルなところで車高をアップさせてアウトドアなイメージを高めたいという。

  

ただでさえマイナー車種なのに、その車高をアップさせるサスキットはもちろんない。そうなるとオーダーメイドでどうにかするしかない。とはいえオーダーメイド車高調とはどんな世界なのか。紹介したのはサスペンション専門メーカーであるTEIN(テイン)だ。

テインは横浜に本社を置く日本企業。ラリー競技でコンビを組んでいた市野諮(いちの・はかる)さんと藤本吉郎(ふじもと・よしお)さんが2人で始めた会社。約40年前、国内には過酷なラリーに耐えるサスペンションがなかった。それならば自分たちで作ろうと始めたのだ。そして現在は横浜と中国に工場を持つサスペンション専業メーカーになった。

  

オリジナルでサスペンションを作りたいと相談したのは広報の渡邊宏尚さん。「大丈夫ですよ」とあっさり答えが返ってきた。数多くのラインアップを持つテインは自社工場で製造する。自社工場内で鉄の棒を切削し、熱処理をしてさらにメッキ加工まで施し、ダンパーの重要部分であるシャフトを製造することにこだわっている。ケースもブラケットも自社内でつくることにこだわる。だからこそオーダーメイドの一品物であるサスペンションも作れるのだという。

  

「当社は自社で製造することにこだわっています。ですのでワンオフ品も作ることができます。専門部隊がいまして、オーダー品や旧車用の一品物、レース用や競技用などさまざまなオーダー品を専門に作っています。最近だとレストアしてデモランしている古いF1とかパリダカ車両など、そういったクルマも当時のサスペンションでは、もうオイルが漏れていて、でも代替え品もないということで当社でワンオフ製造しています」(渡邊さん)

◆テインは二刀流だからこそ選べる、単筒式と複筒式

  

サスペンションは大きく分けて単筒式と複筒式の2種類の構造がある。そしてテインは数少ないその両方を製造している。ワンオフ品もどちらの構造にするかというところから相談することができる。

その構造の違いは何が違っているのか。純正サスペンションはそのほとんどが複筒式。オイルが満たされているシリンダーがあり、そこにはピストンバルブと呼ばれる、レンコンのような穴の空いたピストンがある。そこにシャフトが刺さっていてオイルの中を移動する抵抗が減衰力を生んでいる。この構造は、単筒式も複筒式も同じだ。

複筒式は、このケースの下端にベースバルブと呼ばれるバルブがあり、そこからケースの外側にオイルが流れたり戻ったりできる。このシェルケースとシリンダーのスペースにオイルが流れたり戻ったりしつつ、そこにはガスも入れられている。複筒式というだけあって、サスペンションとして見えているのはシェルケースで、その中にシリンダーというもうひとつの筒があるのだ。英語でいうところのツインチューブと呼ばれる構造。

  

特徴は製造工程が比較的シンプルでコストが安く済む、ベースバルブによってオイルに加圧できるのでガス圧を低くできる、ガス室を直列に配置しなくていいのでストローク量を確保しやすい、などのメリットがある。ただし、難しいことを書き出すとキリがないのでまとめると、乗り心地を良くしやすいのだ。安く作れる。でも逆さにしたり取り付け角度には制限がある。ピストンバルブの径が内側のシリンダー径の大きさになるので小さくなりやすい。

単筒式は、オイルが入っている中にピストンバルブがあり、そこにシャフトが刺さっている。その先にはフリーピストンと呼ばれるゴムの仕切りがあり、フリーピストンの先にはガスが入れられている。いわゆる注射器的な構造になっている。高圧ガスがオイルに圧力をかけておくことで、素早くストロークしたときにオイルに気泡が混ざるエアレーションを防いでくれるため、ある程度のガス圧が必要。そうなると街乗りなどで乗り心地でコツコツと段差を拾いやすかったりする。しかしピストンバルブを大きくできるので、微細な減衰力セッティングも出しやすい。オイル容量も多く取れるし、シリンダーが直接外気に触れるので熱も放出しやすい。

  

こちらもまとめると、サーキットを走ったりするときの素早い動きやセッティング幅の広さを得やすい。熱ダレもしにくい。だが乗り心地的には複筒式よりは不利。ストローク量も複筒式よりは確保しにくい。組立時にオイル内から慎重にエア抜きをしなければならず、製造コストが高くなりがち。こういった特徴から、複筒式はリーズナブルで乗り心地もよく街乗り向け。単筒式はスポーティな走りに向いたもの、といった意見が多い。

しかしたしかにそういった傾向もあるものの、最新のレーシングカーではさまざまなメリットから複筒式が多い。とくにフォーミュラカーはほぼ複筒式が使われている。複筒式だから街乗り向けの安いサスというわけではないのだ。

◆今回は使い方からRX1をベースに---クロスロード用「車高アゲ系」ワンオフ!

  

渡邊さんはヒアリングにより、クロスロードの使われ方は高速道路の移動と街乗りとのことで、乗り心地の良さからベースは複筒式のRX1とした。RX1は複筒式構造にプラスしてテイン独自のH.B.S.(ハイドロバンプストッパー)を内蔵した全長調整式モデル。通常のサスペンションは、大きく沈んでストロークした最後は、バンプラバーと呼ばれるウレタンにタッチして動きを止める。このバンプタッチと呼ばれるときに乗り心地がガツンと悪く感じやすい。そこでバンプタッチしそうになったとき減衰力を高めてジワッと勢いを吸収。その力は熱エネルギーにして吸収してしまおうというのがH.B.S.の構造。ラリーでのジャンプからの着地時に作用するように生まれたもので、これがあることで大きくストロークしたときの乗り心地を大幅に改善できる。

  

このRX1をベースに、長さなどを伸ばして車高を上げられるようにしていくという。全長調整式なので車高を変化させてもバネが遊んだりする心配もない。これまで、テインではクロスロード用のサスペンションを作ったことがあるため、採寸データもあります。しかし車高アップとなるといくつか確認したいことがあるということで再度計測を行うことになった。

ちなみにワンオフのスペシャライズドダンパーは、製作実績があれば要望に応じてすぐに製造できる。製作実績がない場合は、実車測定や純正サスペンションの測定などを行ってから仕様をすり合わせて、開発する。今回は取材のためにテインの工場に入庫して撮影したが、通常時は各ショップで計測し、そのデータをもとに開発されるので、クルマをテインに持ち込む必要はない。大前提としては個人からの注文は不可で、プロショップや量販店などからオーダーすることになる。

  

基本納期は約1.5か月という驚きの速さ。それも専門部隊があるからなせることだという。そして注目の価格は仕様によるが20万円から。とはいえ実際は高いのでは? と渡邊さんに聞いてみたが、

「アッパーマウントをピロ化するなど、さまざまなオプションを増やせば価格は上がりますが、だいたい30万円から35万円程度のお客様が多いです」

とのこと。あのテインが自分専用の、しかもラインアップにないサスペンションを専用仕様で作ってくれてその価格、ハッキリ言って安いのではないだろうか。編集F号のできあがりは追って報告することにしよう。

《加茂新》

加茂新

加茂新|チューニングカーライター チューニング雑誌を編集長含め丸15年製作して独立。その間、乗り継いたチューニングカーは、AE86(現在所有)/180SX/S15/SCP10/86前期/86後期/GR86(現在所有)/ZC33S(現在所有)。自分のカラダやフィーリング、使う用途に合わせてチューニングすることで、もっと乗りやすく楽しくなるカーライフの世界を紹介。

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