「鍛造vs鋳造」どっちが速い? バネ下重量と回転慣性で読む“勝てるホイール”~カスタムHOW TO~

「鍛造vs鋳造」どっちが速い? バネ下重量と回転慣性で読む“勝てるホイール”~カスタムHOW TO~
「鍛造vs鋳造」どっちが速い? バネ下重量と回転慣性で読む“勝てるホイール”~カスタムHOW TO~全 4 枚

チューニングやカスタムの大きな要素として挙げられるのがホイール。ホイールはもちろん純正でも装着されているが、アフターパーツのホイールに交換することで見た目の雰囲気を変えられるほか、走行性能を大幅にアップさせることもできる。

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今回は特にスポーツホイールにターゲットを絞り、そのカスタマイズの世界を紹介したい。

スポーツホイールは軽量で高剛性に作られている。ホイールは軽いほどバネ下重量(サスペンションのスプリングよりもタイヤ側にある重量)が減るため、運動性能の向上に大きな効果を発揮する。バネ下重量はそれより上のボディの軽量化に比べ、同じ重量でも3倍から5倍の効果があると言われる。つまりホイールを10kg軽くすると、ボディを50kg軽くしたのと同じくらいの効果があるとされている。

そこでスポーツホイールは特に軽さにこだわって作られている。また、ホイールは高速で回転するため、重さ以上に回転慣性も関係する。軽いホイールほど回りやすく止まりやすいので加速性能が良くなり、ブレーキを踏んだときの減速性能も向上する。重いホイールほど回転中はなかなか止めにくく、ブレーキが効きにくい。さらに停止状態から加速するときも慣性が大きく、なかなか加速していかないということになる。

スポーツホイールの製法は大きく鍛造と鋳造の2つに分かれる。この2つはどちらが優れているのか。一般に、鍛造ホイールの方が高価で優れているとされるが、必ずしもそうとは限らない。

まず鋳造製法はアルミを溶融し、液体状の素材を型に流し込んで冷やして作る。日本古来の鉄器づくりに近いイメージだ。型に流し込むため手間が少なく大量生産向きで、コストを抑えやすい。複雑な形状でも型さえ作ればアルミを流し込むだけで成形でき、細かなデザインの造形も比較的行いやすい。

対する鍛造製法は刀の作り方に近い。アルミをある程度熱した状態で、上下から数千トン、場合によっては1万トンを超える力でプレスし、型の形状へと押し延ばす。刀でいうと真っ赤な鋼を金づちで叩きながら伸ばしていくのに近い。この鍛造のメリットは、強い力で素材を潰しながら押し延ばすことでアルミの金属組織が緻密化し、粘り強く変化する点だ。

その結果、同じ剛性や強度を満たすなら鋳造に比べ薄肉化できる。薄く作れるということは軽く作れるということ。ホイールの軽量化に大きく貢献する。

性能面のメリットは大きいが、弱点は製造時の手間。1本ずつ巨大なプレス機に温めた素材をセットし、1本あたり何分もかけて何度もプレスする必要がある。設備費や工数が膨大となり、コストは非常に高くなる。

またプレス成形では細かな造形が作りにくく、精緻なデザインはプレス後に金属加工で仕上げる必要がある。これもコストアップの要因だ。

さらにレース用など製造本数が少ない鍛造ホイールでは、スポークの開いていない型で先に円盤状の素材を成形し、それをNC工作機械で削ってスポークやリムを作る方法もある。製造時の自由度は高いが、プレス後に膨大な時間をかけて金属加工が必要となるため、やはりコストは高くなる。

こうしたメリットとデメリットがあるため、一概にどちらが優れているとは言えない。鋳造ホイールでも近年は、力のかかりやすいリムを上下からローラーで挟み強い力をかけながら圧延するリムスピニング製法を採用するメーカーが多い。

この製法によりリムは鍛造に近い粘りを得られ、性能面で鍛造ホイールに非常に近いものが作れる。製造コストは鍛造より抑えられ、従来の鋳造よりは高くなるものの、それでも鋳造寄りの価格で入手可能だ。実際にスーパー耐久やワンメイクレースでは、このリムスピニング製法を用いた鋳造ホイールが結果を出している例も多い。価格、強度、重量、デザインなど多角的な要素から、自分の用途に合うホイールを選べる時代になっている。

《加茂新》

加茂新

加茂新|チューニングカーライター チューニング雑誌を編集長含め丸15年製作して独立。その間、乗り継いたチューニングカーは、AE86(現在所有)/180SX/S15/SCP10/86前期/86後期/GR86(現在所有)/ZC33S(現在所有)。自分のカラダやフィーリング、使う用途に合わせてチューニングすることで、もっと乗りやすく楽しくなるカーライフの世界を紹介。

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