テイン中国マザー工場に現地取材! ラリー発祥ショックアブソーバーが生まれる「2万1000平米の現場」とは?

工業団地のなかでひときはめだつ『TEIN』のロゴ
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チューニング用ショックアブソーバーで有名なテインは、マザー工場を中国に持っている。チューニング用ショックアブソーバーや車高調サスペンションで知られるサスペンションメーカー・テインが、なぜ中国にマザー工場を構えたのか。その成り立ちやグローバル戦略、工場が秘めるポテンシャルを探っていく。

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2025年10月、テインは中国にてグローバル試乗会と工場見学会を開催。試乗会の模様についてはすでに報告済みなので、こちらでは工場見学を中心にテインについての解説をしていく。

◆ラリー発祥のテインショックアブソーバーの歴史

テインの歴史は社長である市野諮と専務の藤本吉郎の2名の歴史と言っても過言ではない。

1980年代、市野はメカニック&コ・ドライバー、藤本はドライバーという立場で異なるチームに所属していたが、市野の全日本ラリー出場を機に合流し、コンビを組むことになる。当時、ラリー用競技車両を製作するにあたりさまざまなショックアブソーバーをテストしたが、2人を満足させる製品はなかった。若い2人がたどり着いた結論は「自分たちで満足する製品を作る」であり、1985年には横浜市内に工場兼事務所を借りてテインを設立した。わずか7坪の事業所でのスタートであった。

ラリーに参加しているショップへ営業し、そのリクエストに確実に応えるというオーダーメイドの生産方式からスタートしたテインであったが、その性能の高さは瞬く間にモータースポーツ業界に浸透。ラリー界はもとよりサーキットレース界へも波及していったテイン製品は、1990年には量産化も開始されるが、生産キャパシティを超える注文を受けうれしい悲鳴を上げたという。

藤本、市野はテインを通してショックアブソーバーの開発から製造、販売までを行っていたが、2人の原点であるモータースポーツ活動を停止したわけではなかった。

創業年にあたる1985年には全日本ラリーに参戦、87年に香港~北京ラリー、89年にはWRCにも参戦を開始した。なかでも95年に日本人として初めてのトヨタワークスドライバーに抜てきされ、参戦したサファリラリーでは日本人初となる総合優勝を飾った。製品の高性能はもとより、開発をおこなう2トップのモータースポーツにおける活躍は、さらなる裏付けとなってテインの人気を押し上げることになる。

◆国内工場から世界へ広がるテインのサスペンション事業

テインの事業は順風満帆であった。1995年には本社工場を同じ横浜市の都筑区川向町に移転、96年には新工場、技術開発センター、物流センターが完成。97年、池辺工場完成。98年には折本工場が完成し本社工場をこちらに移転する。

2001年には北米に進出し「TEIN U.S.A., Inc.」を設立した。中国進出は販売会社からのスタートで2009年に天御遠東国際貿易(北京)有限公司を設立している。今回訪れた江蘇省宿遷に天御減振器制造有限公司が設立されたのは2014年のこと。

国内では2003年に本社、各工場、技術開発センターおよび横浜営業所を戸塚区上矢部町に移転。2014年には同町内の広い敷地に移転している。

通常、日本のモノ作りのスタイルでは日本の工場がマザー工場となり、中国などの他国で生産するが、テインの考え方は違う。中国の工場こそがマザーであり、そこから世界に波及していくというのだ。そのため工場とはいっても単純に製造するだけではなく、開発から図面の製作、製造、出荷、物流管理といったあらゆる部分を中国宿遷の工場は担っている。一方で日本も同様の体制をとりつつ、EDFCなどの電子制御パーツの開発やハイエンド車高調のチューニングを行っている。

テイン中国工場は総敷地面積が2万1000平方メートル。従業員数は300名で、2交代制を採用し生産能力は1日4000ユニットと多い。さまざまなタイプのショックアブソーバーを用意するテインだが、おもに中国工場で製造されるのは純正形状の「EnduraPro」&「EnduraPro PLUS」、ストリート&ドレスアップ用車高調の「STREET BASIS Z」&「STREET ADVANCE Z」、ハイスペック車高調の「4×4シリーズ」&「FS2」、ストリート&ドレスアップ車高調の「FLEX Z」などだ。

テイン製品の強みは多品種・少量生産を可能とした生産ラインと、そのシステムを生かした高性能・高品質のモノ作りにある。そして必要とあれば大量生産も可能なキャパも持っていることだ。高性能の裏付けは名ドライバーである藤本吉郎専務と、その教えを引き継いでいる開発担当者によるもの。本当の世界を知り、本当の路面を知る者が何が必要で何をすればいいのか? を理解して開発している。

◆中国・宿遷マザー工場のIoT化と環境への取り組み

高品質の裏付けは藤本専務がもともとエンジニア出身であることが大きい。大手ベアリングメーカーでエンジニアとして働いてきた藤本氏は、妥協を許さないクオリティを追求している。

製造過程を見ると、とにかく清掃と検査の繰り返しである。そして、不具合品が発生した際には、それを隠すことなく展示し、情報を共有して合格品の製造に生かし歩留まりを上げるという手法が採られている。

中国という地で効率的に正しい製造ができるのは、『万能ステーション』という名のIoTシステムの採用が大きく影響している。万能ステーションは作業工程ごとに配置される情報端末で、過去の不適合や設備故障事例、作業標準、工程表、生産品図面、設備TPM情報(DB化一元管理)、ERP実績入力画面、Marimba設備稼働状況など、設備のIoT化による稼働率管理に必要な情報、検査表入力などが表示される。作業工程については動画でも説明されるため、慣れない作業者であっても確実な作業ができるようになっている。

またAGV(無人搬送車)の導入も進んでいる。AGVは倉庫での品出しのみならず、作業現場への材料搬送にも利用されており、必要な材料を1日に何度も細かく運ぶことが可能。このため作業現場では必要な材料を選びやすくなり、効率がアップしている。

環境に対する配慮は非常に高いレベルだ。工場で排出されるさまざまな端材やゴミ、物質に対して徹底して分別し、リサイクルできるものは40種類、リサイクル不可なものは11種類に分けられる。これらは有償、無償、有料に分けられ回収される。そのリサイクル率は93%にもなり、環境に優しい工場として市から表彰されるレベルに達している。

工場の屋上や倉庫と工場の間など、考えられるあらゆる部分に太陽光パネルを設置。その面積は1万2040平方メートルにもなり、1日に1万2000kWhの発電能力を有している。雨水についても有効利用が行われ、敷地内の貯水量は120トン。空調に利用することで電気代を25%削減し、太陽光パネルや工場通路の清掃などにも利用されている。

テインを見ていると、「中国製だから……」などという言葉は間違いであることに気付く。大切なのは、製品に対する真摯な姿勢と愛情、そしてモータースポーツで鍛えられた技術力だ。テインのショックアブソーバーと車高調サスペンションは、中国マザー工場の高い品質管理と環境配慮によって支えられていると強く感じるのであった。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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