世界一のバイク整備士が決定! 技術とおもてなしの“二刀流”を評価、ヤマハが7年ぶりに「ワールド・テクニシャン・グランプリ2025」開催

世界一のバイク整備士を決める「ワールド・テクニシャン・グランプリ2025」をヤマハ発動機が開催
世界一のバイク整備士を決める「ワールド・テクニシャン・グランプリ2025」をヤマハ発動機が開催全 68 枚

ヤマハ発動機は11月19日、世界一の整備士を決めるコンテスト「ワールド・テクニシャン・グランプリ2025」を7年ぶりに、静岡県磐田市の本社で開催した。世界中のヤマハの認定整備士の中から勝ち抜いた19か国、22名が整備と店舗対応のウデを競い合い、コミューター(スクーター)クラスはアルゼンチンのファン・クルス・ルナド・ロチャ選手、スポーツモデルクラスはイギリスのリアム・コフィ選手がそれぞれグランドチャンピオンの栄光を手にした。

【画像】世界一のバイク整備士を決める「ワールド・テクニシャン・グランプリ2025」

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ワールド・テクニシャン・グランプリ(WTGP)は、世界中のヤマハ二輪車販売店で働く整備士の中から、世界一の整備士を決めるコンテスト。参加できるのはヤマハが2001年から世界展開をおこなう整備士教育プログラム「YTA(ヤマハ・テクニカル・アカデミー)」で認定を受けた整備士。2025年時点では世界に3万5700人が認定整備士となっているという。高い整備技術はもちろん、豊富な知識やユーザーが安心できる対応が求められる。

WTGPは、YTAで育った整備士により高いモチベーションとなるレベルアップを喚起するほか、優秀な整備士に永く販売店で活躍してもらうことで各市場での顧客満足度を向上させることなどを目的とする。競技は「故障診断」と「お客様対応」の2つでおこなわれ、それぞれで高得点を取得することでチャンピオンが決まる。

◆整備技術とおもてなし、求められる二刀流

ワールド・テクニシャン・グランプリ2025ワールド・テクニシャン・グランプリ2025

「故障診断」は80分の時間の中で、用意された車両にあらかじめ仕込まれたトラブルを診断、不具合を検出し修理をおこない、完成検査をおこなうまでを審査する。市場によって取り扱う車種が異なるため、「スポーツモデルクラス」と「コミューターモデルクラス」の2つのクラスに分かれ、スポーツモデルは『MT-07』を、コミューターモデルは『AEROX』もしくは『NMAX125』をそれぞれ担当する。診断機を使って正しい手順で故障箇所を見つけられるか、パーツの取り外しなどの際に“お客さま”の車両を丁寧に取り扱っているか、工具や機器も大切に取り扱っているか、などを厳しくチェックされる。細かい配点などは明かされていないが、採点の項目は26以上にのぼる。

ヤマハによると「一発ビンゴでラッキー!はない」と言い、その部品がなぜ故障したのか、その確信に至る根拠を示して「正しいプロセス」を辿ることができなければ高得点を取ることは難しいという。今回はエンジンの不調が仕込まれており、その原因を探り、修理対応をおこなった。時間いっぱいまで分解、取り付け作業をおこなう人や、何度もエンジンを掛けながら音を頼りに不具合をチェックする人、時間に余裕を持って作業を完了し談笑する人など、各代表の状況はさまざま。緊張感が漂う中、いかに普段通りの作業ができるかが勝負の分かれ目となった。

ワールド・テクニシャン・グランプリ2025ワールド・テクニシャン・グランプリ2025

「お客様対応」は30分の時間の中で、店舗を模した会場を舞台に、点検に出した愛車を受け取りに来た“お客様“に対し点検・修理の結果やアドバイスを的確に伝えられているか、質問に対する対応力などを審査する。整備士は顧客に最も近い「ブランドの顔」だけに、整備技術だけでなく接客対応力も重要だとヤマハは考えている。実際、採点基準もおよそ半々だといい、つまりどちらかだけが高得点でもダメ、ということだ。お客様対応では、安心感を生むコミュニケーション力や、身だしなみ、言葉遣いの丁寧さ、豊富な知識や気配りによる「おもてなし」ができているかを厳しくチェックした。

椅子から立ち上がってお客様を迎えているか、目を見て説明しているか、点検チェックシートをちゃんと指差し確認しながら説明しているかなど、50以上ものチェック項目で、知識や行動そのものが評価されるという。さらに、最後にお客様から投げかけられる質問に対する応用力も求められた。原則、言葉を発することが禁じられた「故障診断」競技とは異なり、さまざまな言語が飛び交う「お客様対応」競技では、各国のコミュニケーションの違いによる対応力の差も見どころとなった。

なお、この競技は現地の共通語で対応することが求められるため、審査員にはヤマハの社員から各言語に精通する社員が選ばれたという。ヤマハの人材の豊富さには驚かされる。

◆「お客様の期待を超えるサービス実現が使命」

スポーツモデルクラスのチャンピオン、イギリスのリアム・コフィ選手とヤマハ発動機 設楽元文社長スポーツモデルクラスのチャンピオン、イギリスのリアム・コフィ選手とヤマハ発動機 設楽元文社長

1日をかけておこなわれたWTGP。コミュータークラスは1位がアルゼンチンのファン・クルス・ルナド・ロチャ選手、2位がインドのチェタン ジャンギ選手、3位がインドネシアのロベット・シマヌレン選手。スポーツモデルクラスは1位がイギリスのリアム・コフィ選手、2位がオーストラリアのリンカン・ブライアン選手、3位がアメリカのブライアン・ラードナー選手という結果となった。

スポーツモデルクラスのチャンピオン、コフィ選手は、ヤマハの設楽元文社長からトロフィーを渡されると「人生で最も大きな名誉です。競技はとてもハードでしたが、ここにいる皆が“ベスト・オブ・ベスト”です。ありがとう」と喜びを表現した。

設楽社長はすべての挑戦者に対し、「皆さま、本当にお疲れさまでした。そしておめでとうございます。お客様がヤマハ製品を購入される瞬間から、“ヤマハとの長い旅”が始まります。安全・快適・安心を提供し、お客様の期待を超えるサービスを実現することが我々の使命です。ここで得た経験を、それぞれの会社に持ち帰り、ヤマハ技術者の模範として活躍されることを願っています」と熱いメッセージを贈った上で、「2027年の次回大会で再びお会いできることを楽しみにしています」と次回開催を約束し、WTGPは幕を閉じた。

ワールド・テクニシャン・グランプリ2025ワールド・テクニシャン・グランプリ2025

バイクは、電動化や知能化などをはじめ日々進化し続けている。整備士に求められる知識や技術も、常にアップデートが必要となる。顧客にとってみれば「ちゃんと整備してもらえるのは当たり前」。整備士にいかにモチベーションを持ち続けてもらえるかは重要な課題だ。ブランドの顔となるのは、メーカーや開発者、あるいは製品ではなく、店舗で顧客と対面で接する整備士だからだ。それだけに「ちゃんと整備する」だけでなく、顧客に対しいかに「感動体験」を与えることができるかがブランドの繁栄にもつながる。「感動創造企業」を掲げるヤマハにとって、世界中に3万5700人いる認定整備士は大きな財産だといえる。

WTGP2025の様子は、ライブ配信がおこなわれ、アーカイブとしても映像が配信される。日本語、英語に対応した実況もおこなわれているので臨場感のあるコンテンストの様子を楽しむことができるだろう。

《宮崎壮人》

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