リチウムイオン電池の安全性試験を強化、新施設を山梨県北杜市に開設…ケミトックス

リチウムイオン電池を内蔵した「モバイルバッテリ」の発火
リチウムイオン電池を内蔵した「モバイルバッテリ」の発火全 3 枚

ケミトックスは、山梨県北杜市須玉町で実施していたリチウムイオン電池(LiB)試験を、同市武川町の「北杜LiB試験センター」に移転し、安全性評価試験サービスを大幅に拡充したと発表した。

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昨今、リチウムイオン電池を原因とする事故や火災が社会的に大きな問題となっている。特に、リチウムイオン電池セルで構成されるモバイルバッテリーの事故が増加しており、過充電、外部短絡、高温、衝撃、劣化セルの使用などが火災の要因として報告されている。発火時には1000度を超える高温の炎が噴き出すことがあり、周囲の可燃物への延焼や航空機内での重大インシデントにつながるケースも確認されている。

モバイルバッテリーは、需要拡大に伴い、大容量化・多セル化が進む一方で、発火時の危険性も増している。航空会社では運航の安全対策として、預入荷物への収納禁止のみならず、手荷物棚への保管も禁止されるなど、従来以上に厳しい対応が求められる。

北杜LiB試験センターでは、これらの社会的背景を受け、安全性評価試験のさらなる拡充を行い、顧客のニーズに迅速に対応するため、設備増強および評価項目の追加を行った。

主な強化ポイントとして、まず新設されたRC部屋(鉄筋コンクリート構造の安全試験室)では、最大1200Whまでのリチウムイオン電池に対する各種安全性試験が可能となった。高エネルギーセルの熱暴走、発火、爆発に関わる試験を安全に実施できる環境を整備し、より幅広い電池評価ニーズに対応する。

次に、国際規格および国内規格に対応した安全性試験を拡大した。UN38.3、IEC62133、JIS C8715/JIS C8714(定置用・携帯機器用)、自動車関連規格(例:ISO12405、ISO6469等)に対応している。

評価設備としては、釘刺し・圧壊試験装置(釘刺し試験であれば5営業日で完了)、過充電・過放電試験設備、外部短絡試験設備、高温・低温環境試験チャンバーを備える。釘差し試験以外でも、RC部屋の空き状況に応じて迅速に試験を開始できる体制を整えている。

北杜LiB試験センターの特長は、セル単体を中心とした安全性試験に特化した評価環境、防爆対策を施し安全性を確保した試験棟、専門技術者による安全性評価のサポート体制、試験計画の策定からレポート作成まで一貫対応という点にある。

ケミトックスは、電池メーカー、電動モビリティメーカー、蓄電システム事業者など、多様な産業分野の技術革新を支えるため、北杜LiB試験センターのさらなる拡張を進めていく方針だ。

《森脇稔》

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