トヨタフィナンシャルサービスのMaaSアプリ「my route」は日本信号、レシップとともに国土交通省が進める「交通空白」解消に向けたパイロット・プロジェクトの一つ「二次元バーコードチケッティングAPI標準化プロジェクト」に参画し、11月27日に熊本県で実証実験を実施した。
国交省では、全国の「交通空白」解消など地域交通の「リ・デザイン」をさらに加速し、持続可能な地域交通を実現するため、連携・協働を軸とした地域交通DX推進プロジェクト「COMmmmONS(コモンズ)」が今年6月から始動している。
本実証実験では、my routeアプリ上で発行した二次元バーコード(QRコード)を共通の標準仕様に基づいて運用し、複数の交通事業者・サービスをまたいだ共通QRコードによるシームレスな移動体験を検証する。
実施日は11月27日10時から15時まで。実施場所は熊本駅、上熊本駅、桜町バスターミナルほか。参加交通事業者等は、鉄道が九州旅客鉄道、バスが九州産交バス(チャーター便を活用)、商店がユナイテッドトヨタ熊本のePallette(イーパレット)を商店として活用する。バス車載システムはレシップ、改札システムは日本信号が担当する。
現在、スマートフォンの画面に表示できる「二次元バーコード」は、公共交通分野でのデジタルチケットとして急速に普及している。一方で、事業者ごとにチケット仕様が異なり、乗り換えのたびに異なるチケットを切り替える必要があるなど、利用者にとっての見えない不便が残っている。
また、多くの改札機器メーカー等の認証事業者が独自仕様の二次元バーコードを発行していることから、駅改札機など認証機器との連携にはサービスごとに個別のシステム開発が必要となり、開発コストおよび導入リードタイムの増大がMaaSの本格的な普及・拡大を阻む要因となっていた。
こうした課題を解決するため、TFSおよび日本信号、レシップは、MaaSサービサーと認証サービサーとの間で利用可能な共通仕様を策定し、二次元バーコードチケッティングAPIの標準化を目指す本プロジェクトを推進している。
本実証では、複数の交通事業者・サービスをまたいだ共通QRコードによるシームレスな移動体験、鉄道・バス・商店といった異なるサービス間でのAPI連携および運用面の実現可能性、既存の改札機器・認証機器との連携における技術的・運用的な課題の抽出と改善ポイントの整理、ユーザーにとってのわかりやすさ・使いやすさなど、ユーザー体験(UX)の評価を行う。
得られた知見は、今後の仕様策定や社会実装に向けた標準化検討にフィードバックし、より多くの地域・事業者に展開可能なモデル構築に活用していく。
本プロジェクトの最大のゴールは、「複数の交通事業者をまたいでも、1つの二次元バーコードでシームレスに移動できる環境」を実現すること。鉄道もバスも、将来的には観光施設や体験コンテンツ、商店での購買なども、1枚の二次元バーコードでつながることで、「真に移動しやすい社会」を目指す。
MaaSアプリ「my route」は、「もっと移動したくなる環境」をつくることで移動総量の増加を促し、街や地域の活性化に貢献することをビジョンに掲げている。二次元バーコードチケッティングAPIの標準化は、その中核となる取り組みだ。
二次元バーコードは、スマートフォンなどの表示機器さえあればすぐに利用でき、設備導入コストも比較的低く抑えられる。特に若年層を中心に利用のハードルが低く、「まず使ってみる」場面に適した技術であり、デジタルチケットの普及を加速させる有力な手段だ。
本プロジェクトが目指しているのは、単なる技術導入にとどまらない。鉄道やバスといった交通手段だけでなく、観光・地域体験・商業などの非交通領域とも連携した「移動中心のエコシステム」を構築することだ。
二次元バーコードのチケットだけで、どこにでも行ける、さまざまな体験に参加できる。そうした仕組みが広がることで、移動がより身近で前向きな行動となり地域の魅力発見や活性化にも自然とつながっていくことが期待される。
また、交通弱者が多い地域においては、デジタルチケッティングによる利便性向上・運用負荷の軽減効果がより大きくなると考えている。TFS、日本信号、レシップは、今後も多様な事業者・自治体と連携し、社会実装を見据えた取り組みを推進していく。
my routeは、本実証で得られた知見をもとに、二次元バーコードチケッティングを活用したデジタルチケット対応領域をさらに拡大し、MaaSの利便性向上と地域の移動課題の解決に貢献していく。また、国土交通省COMmmmONSプロジェクトをはじめとした各種取り組みを通じて、業界横断での標準化・オープンなエコシステム構築に積極的に取り組んでいく。




