自動運転は物流・交通を変えられるか? いすゞの大型トラック&バスに試乗してわかった、技術の現在地と課題とは

いすゞの「自動運転レベル4」トラック
いすゞの「自動運転レベル4」トラック全 19 枚

2025年11月中旬、「いすゞ自動運転ソリューション説明会」(開催地:いすゞ北海道試験場)がメディア向けに開催された。この場では、いすゞが開発を進める自動運転技術やそれを活用した事業化についての説明が座学として行われたほか、北海道試験場にある1周約5kmの高速周回路を使って、自動運転トラックの幹線輸送を模擬したデモンストレーション走行が行われた。今回、筆者はその自動運転トラックの助手席に同乗することができた。

運転席にはセーフティドライバーが乗車するが、今回はテストコースであるため発車から駐車までドライバーの手を介さない自動化レベル4の自動走行で行った。

試乗には全部で7つのシナリオが用意された。さらに試乗に先立って行われた座学を開催の建屋からテストコースまでの連絡路では、自動化レベル4状態で走行する大型路線バスの同乗試乗も行うことができた。


◆熟練ドライバー並みの運転操作

(1)自動発車と自動駐車

セーフティドライバーが車載モニターを通じて周囲の安全を確認したのち、自動運転モードボタンを押下すると、車体前後左右にはターコイズブルーのLEDランプが点灯し自動走行モードであることが周囲に示される。

その後、同乗している筆者の頭が動かないくらい丁寧なアクセルワークで自動発車を行った。自動駐車もしかりで、高速道路上のSA(サービスエリア)に設けられる(一部は既に存在する)自動運転トラック向けの専用駐車スペースに見立てた場所に対し、修正舵を加えずに一発で停車する。ここでは、停止直前にブレーキをわずかに緩めるなど熟練ドライバーのような運転操作をみせた。

(2)本線合流

事業化では主に高速道路の走行を想定している。今回は合流路でしっかり加速するシナリオだったが、本線を走る後方車両をミリ波/LiDARでしっかり検出しながら、相対速度差から安全に本線合流できるタイミングでハンドルが切られていく。丁寧な運転操作だが、大型車を運転する筆者からすると若干、横加速度が強い(≒躍度が大きい)と感じた。

試乗後、この点をいすゞの技術者に伺うと、「ご試乗いただいた車両は、高速道路の合流路に最適となるようシステム設計を行っています。今回はテストコースで合流路に見立てた道路の走行距離が短いことから、そうお感じになったのかと思います」、とのこと。

(3)速度規制対応

道路側に設置されている規制速度の看板を読み取り、示された車速をきっちりと守る。実際の道路環境ではこうなる。たとえば80km/h巡航時に40km/hの規制速度の看板を認識すると、一定の減速度を保ったまま40km/hへと滑らかに減速する。過去に商用車の開発ドライバー職を務めた筆者の体感だが、減速度は0.2を超えない常識的なもので、当然ブレーキランプが点灯するので自車周囲への影響もない。

◆ACCと自動運転の違いが顕著に

(4)他車の割り込み対応
(5)渋滞追従

前走車との間に一定の車間距離を保ち追従する「ACC/アダプティブクルーズコントロール」。ACCは、日本で新車販売された乗用車における普及率が99%以上(2022年)に達する一般的な運転支援技術。よって制御内容はイメージしやすいだろう。割り込みされた際は安全な車間距離を保つため減速制御が行われるが、自動運転トラックでも同じく滑らかなブレーキ操作で車間が保たれた。

自動運転トラックでの減速度は、こちらも体感値ながら0.2程度で、とてもリニアだ。つまり減速開始から終了まで、まるで新幹線のように一定の減速度を保ちながら速度を落とす。

本格的な自動化レベル4の自動運転トラックではドライバーがいないのだから、こんなに丁寧な運転操作が必要なのかと思われるかもしれない。しかし、荷台には荷主からの大切な荷物を積載しているため、この先もやさしい運転操作は不可欠だ。

また、速度の乱高下を示す波状運転からも遠ざかるため周囲の交通環境にもやさしく、さらに燃費数値の悪化も抑制できるため環境にもやさしい。自動運転技術は、まさしく「三方よし」である。

一般的なACCと異なるのは、自車周囲360度の交通状況を把握する能力が極めて高いこと。自動運転技術の要である「認知→予測→判断→操作」の連携プレーがスムースであることの証だ。

一般的なACCでは基本的に前走車の動きのみを検出して制御内容が決定されるため、時に制御が粗くなるが、自動運転トラックの場合は周囲の交通環境に対し、前述した高度な連携プレーにより敏感に反応できるため、すべての運転操作に余裕がある。つまり、急がつく加減速の変化が一切ない、これが優位点だ。

将来的には、液体を運ぶタンクローリーへの応用にも期待がもてる。タンクローリーでは、スロッシングと呼ばれる液面揺動(≒液体がタンク内で激しく動く)が起こるため運転操作がむずかしいが、交通環境の先よりとIMUとの連携度合いを高めるなど手段を講じれば実現の可能性がみえてくる。


《西村直人@NAC》

西村直人@NAC

クルマとバイク、ふたつの社会の架け橋となることを目指す。専門分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためにWRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席したほか、東京都交通局のバスモニター役も務めた。大型第二種免許/けん引免許/大型二輪免許、2級小型船舶免許所有。日本自動車ジャーナリスト協会(A.J.A.J)理事。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会・東京二輪車安全運転推進委員会指導員。

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