ソニー・ホンダ『AFEELA 1』に盛り込まれた「ゲームエンジン」、そのねらいとは…Unreal Fest Tokyo 2025

ソニー・ホンダモビリティのゼネラルマネージャー西林卓也氏
ソニー・ホンダモビリティのゼネラルマネージャー西林卓也氏全 21 枚

『フォートナイト』や『ギアーズ・オブ・ウォー』などの人気ゲームを手掛ける米国のEpic Games(エピックゲームズ)が、11月14日・15日に「Unreal Fest Tokyo 2025」を開催。同社が開発するゲームエンジン「Unreal Engine(アンリアルエンジン=UE)」の活用について、最新トレンドの発信をおこなった。

【画像】Unreal Fest Tokyo 2025で紹介された『AFEELA 1』のマップ機能

14日は「ノンゲームデイ」として、自動車、建築、映像などゲーム外の業界に向けたプレゼンテーションを実施。車両開発にUEを取り入れるソニー・ホンダモビリティが、『AFEELA 1』のHMI開発における活用例やUEのメリットについて語った。

◆クルマにエンターテイメントを盛り込むアンリアルエンジン

AFEELA 1のE/Eアーキテクチャーについて紹介するソニー・ホンダモビリティのゼネラルマネージャー西林卓也氏AFEELA 1のE/Eアーキテクチャーについて紹介するソニー・ホンダモビリティのゼネラルマネージャー西林卓也氏

「Making the AFEELA 1 Cockpit Unreal」と題したカンファレンスに登壇したのは、ソニー・ホンダモビリティのゼネラルマネージャー西林卓也氏、ソフトウェアエンジニアの山口雄也氏、キュー・ゲームスのソフトウェアエンジニアであるPierre Mizzi氏、そしてEpic Games JapanのSenior Solutions Architect 向井秀哉氏の4名。

西林氏はAFEELA 1で実現しようとしている自動運転機能や、ソニー・ホンダのビジョンを紹介。その中で、UEを導入する理由について「この車が今何を考えていて、どこに向かおうとしているか。それを1つのエンターテインメントとして表現ができないかと考えて、まさにここにエピックゲームズが推進しているUEを使っている」と語った。

その根幹には「リアルとバーチャルを結びたいという強い思いがあった」という。「クリエイターの皆様にこのリアルとバーチャルをくっつけていただこうと思うと、非常にケーパビリティが高いグラフィックスエンジンが必要になる。3D空間と3D空間を結んでいくために、3Dエンジンが必要だということで、UEを採用した」。

アンリアルエンジンで3D再現されたマップ画面アンリアルエンジンで3D再現されたマップ画面

Epic Games Japanの向井氏からは、実際にUEが使用されているマップ機能が紹介された。現在も開発が進められている途中だというこのマップ機能には「3つの柱」があるとし、それが「Highly Flexible(柔軟性があるマップ機能であること)」「Turnkey(鍵を回せばすぐ使えること)」「Engaging Experiences(没入感のある体験)」であると語る。

柔軟性があるマップ機能については、カスタマイズ性の高さを紹介。「巷の車のマップシステム、カーナビはUIとの統合や制御、表示内容に関して制限が厳しく、開発できる体験の価値の幅がだいぶ制限されている。特に、自動運転が一般化するにつれて、単に地点Aから地点Bに移動するだけではなく、特定の地域を回っていく様々な体験価値が求められてきている。そういった開発者やユーザーの需要に答えられるように柔軟性のあるシステムにしたいと考えている」とし、ターンキーについてはプログラムをドラッグ&ドロップで使用できるようにするなど、開発面での敷居を下げ、作業コストの低減をねらう。

そして没入感のある体験は、まさにUEの真骨頂だ。「自動運転が発達するにつれて、現実空間とバーチャル空間のインタラクションや体験価値がより求められる。そういったものを実現できる地図との新たなインタラクションの方法が可能になるマップを実現できれば」とし、3Dで再現されたシアトルやニューヨークの街並みを紹介した。昼夜がシームレスに変化する様子や、ビルのガラスに映るリアルな表現などを映像で見せ、「新たな体験価値を作り出す強力な表現力を提供していきたい」とした。

Epic Games JapanのSenior Solutions Architect 向井秀哉氏Epic Games JapanのSenior Solutions Architect 向井秀哉氏

「開発者がどんなデザイン体験を生み出すのか、私たちも非常に楽しみ。また、機能の拡充だけではなく、実際にちゃんと使えるということもとても重要な部分。実際のナビ機能は、渋滞情報など多くのサブシステムと連携している。これらのサブシステムが全て車載ハードウェア上で稼働可能な状態になるように全力で開発を進めている」と話した。

このほか、AFEELAのHMI開発においてアプリケーションを手掛けるキュー・ゲームスのMizzi氏が開発環境のデモンストレーションを公開したほか、ダッシュボード内に登場するバーチャルキャラクターも紹介。このキャラクターはAFEELAの分身のような存在で、クルマが走っている時には一緒に走ったり、ドアを開けると手を振ってくれるといったアクションをディスプレイ内でおこなう。ソニー・ホンダが実現しようとするエンターテイメント性を、ゲームエンジンであるUEが支えているひとつの好例だ。

アンリアルエンジンの「ブループリント」機能によって、ノードによるドラッグ&ドロップで開発ができることを強調アンリアルエンジンの「ブループリント」機能によって、ノードによるドラッグ&ドロップで開発ができることを強調

◆CES2026で新たな発表も

プレゼンテーションの最後には、来場者からの質問にも答えた。注目の質問は、「UEで開発されているマップ機能は、今後誰でも触れるようになっていくのか」。これに向井氏は「誰でも使えるように、今後は機能として公開する予定」と明かした。

「ただ、現在開発中の機能で、開発を進めながらソニー・ホンダさんに使ってもらっている状況。まだ正直、誰でもが使える(正式実装できる)状況ではない。時期については未定だが、来年1月のCES2026でそうした機能の方針発表があると思う」

ソニー・ホンダの量産第一号となるAFEELA 1は、2026年にまずは米国でデリバリーを開始する。CES2026ではその先行量産車が公開されるほか、デリバリーに向けた最新状況を紹介するとともに、新たなコンセプトモデルも初公開する予定だという。製品の完成度はもちろんだが、その中身であるUEの進化にも注目だ。

Unreal Fest Tokyo 2025Unreal Fest Tokyo 2025

《宮崎壮人》

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