パワーエレクトロニクスの権威であり電動車両の分解調査で有名な山本真義教授(名古屋大学 未来材料・システム研究所)が、ステアバイワイヤのエキスパート高橋俊博氏(ジェイテクト自動車事業本部 先行システム開発部 第1システム開発室 上席プロフェッショナル)とSDVをテーマに対談を行う。
モデレーターにはスズキマンジ事務所 代表 鈴木万治氏(株式会社デンソー 技術企画部 CX)を迎えるレスポンスセミナー「【BEV分解調査で分かった】SDV時代のクルマの将来像とステアバイワイヤの最前線」では、ステアバイワイヤ技術を軸に、SDVの可能性と、それによってもたらされる市場の変化、将来のビジョンについて語られる。
山本教授は、テスラ、サイバートラック、ヤンワンU8など次世代電動車の分解調査から得られた知見をベースにステアバイワイヤの最前線についてセミナーとパネルディスカッションを行う予定だ。セミナー部分はどんな内容になるのか、その概要について聞いた。
ステアリングを電子制御にする意味
山本教授は、「電子制御を加えた自動車やコネクテッドカーとSDVの違いは、パーソナル化にあると見ている」という。

AIによる自動運転が進化するようになると、パーソナライズはあまり関係なくなるのではと考えるかもしれない。しかし、自動運転におけるステアリングの意味やあり方を考えると、むしろその逆だとも言える。
ステアリングは車両のインターフェイスとしては基本中の基本だ。ドライバーの意思を車にダイレクトに伝える部品のひとつである。同時に、路面や車両の状態を伝える機能も持っており、重要な入出力装置であることは間違いない。
ステアバイワイヤ技術は、一般的にはシステムが油圧から電気信号に変わるという説明の仕方をされる。これだけでも、応答性が上がりなめらかなきめ細かい制御が可能になる効果がある。また、高速、低速といった状況に応じた制御の調整も可能になる。
制御の幅が広がることは、パーソナライズにとっても重要である。本来、求められるステアリングフィールは、プロのドライバーや買い物の足として使う主婦で同じでいいはずはない。ある人にとって運転しやすい応答性は、別の人にとっては不快であり運転しにくいものになる。
SDVでは、アップデートによる車両のライフサイクルや利用スタイルも変わるとされている。トヨタなどが積極的に研究しているが、シェアカーやサブスクリプションカーでは、フィーリングやセッティングの入れ替え、引継ぎ機能が必須になるかもしれない。
バイワイヤー技術の安全思想
次に気になるのは安全性だ。すべてを電気信号で制御する場合、システムの二重化やフェールセーフ機能の充実が欠かせない。一般的にはECUやアクチュエータを二重化するなどシステムを冗長構成にすることになる。
山本教授はサイバートラックの分解で、興味深い知見を得たという。
「サイバートラックは後輪操舵制御も行うので、アクチュエータは、ステアリングコラムに1個。フロントのラックギアに2個。リアのラックギアに1個で合計4個となる。これらを制御するMCU(プロセッサ基板)はアクチュエータごとに搭載される」
欧州や日本の機能安全に関する基準および思想では、操舵を行うラックギアのアクチュエータを冗長構成とすることが多い。サイバートラックでは、フロントは冗長構成にしているものの、リアアクスルの操舵アクチュエータは1つで済ませていたそうだ。
「サイバートラックは、補器類や電装品の電圧に48Vシステムを採用しているという特徴もある。したがって、これらのアクチュエータは48Vで駆動される。設計や冗長化の考え方の違い、バリエーションがあるのは興味深い」

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