【スズキ DR-Z4SM 試乗】ワインディング最速説ふたたび!? 妥協なき仕上がりは「間違いない」…鈴木大五郎

スズキ DR-Z4SM
スズキ DR-Z4SM全 28 枚

普通にバイクに乗っているだけだと実感しにくいことではあるが、クローズドコースでの遊びに関しては、今はなかなかのオフロードブームであると感じる。週末にオフロードコースに足を運べば、多くのライダーで賑わっている光景を目にする。トランポにて運ばれるエンデューロマシンが多数を占めるが、自走組のナンバー付きマシンもちらほら。しかし「公道を走れるオフロードバイクが少ない!」と嘆く声もよく聞かれる。ここ数年では少し増えてきた印象もあるが、この現場だけを見ればニーズに合っているとは言えないだろう。
 
いや、それに似た声はずいぶんと昔にも聞いた記憶がある。同時に、250ccでは物足りないという声も。いっぽうで、レーサーほど過激なマシンはメリットばかりではない。なによりメンテナンスサイクルなど、走る以外の負担も少なくない。

【詳細画像】スズキ DR-Z4SM

スズキ DR-Z400SM(2004年)スズキ DR-Z400SM(2004年)

そんな状況下で登場したのがかつてのスズキ『DR-Z400S』。物足りないという声を一蹴しつつ高い耐久性も備えていた。ときは2000年代。スーパーモタードブームもあり、DR-Z400Sの足回りを変更して前後に17インチホイールを履かせた『DR-Z400SM』もラインナップに加わる。軽量かつパワフルなキャラクターは確かな走りと扱いやすさ、そしてスタイリッシュさも持ち合わせて人気を博した。

それからすでに20年以上ものときが流れ、ついにその後継モデルが待望の登場となった。今回はもともとSMモデルもありきの設計とされ、フレームも新設計されている。

◆洗練された力強いエンジンと「適度な軽さ」

スズキ DR-Z4SMスズキ DR-Z4SM

新型『DR-Z4S』そして『DR-Z4SM』はシート高こそ高いものの、スリムさと軽量さの恩恵で数値からのイメージよりもフレンドリーである。レーシングマシンのように軽くはないものの、安心感を備えたバランスの良い軽さである。

そのキャラクターを活かして、取り回しは軽快でスイスイと意のままに操ることが出来る。軽いことが全て正解であるという評価は間違っていると長いテスト経験で学んだ。しかしやはり軽さは多くの場面でメリットとなることも確かである。そして大切なのは、とくに公道においては「適度な軽さ」というのがポイントとなる。

スズキ DR-Z4SMスズキ DR-Z4SM

10月にメーカー主催のプレス試乗会が行われたが、テストはサーキット走行だけであった。速度を落としてから、また加速。といった公道を見立てたテストも行うが、広いサーキットでは速度感やフィーリングは異なる。じつはそのエンジンパワーをやや物足りなくも感じたが、公道におけるDR-Zのパワーは必要十分+αであることが確認できた。スタートからしっかりとトルクが出て、そのままパワフルに吹け上がる。発進直後にすぐさまパワーバンドに突入するため、待ちがなく、すぐに美味しい領域を味わうことが出来る。

というと、ギクシャクしてしまうイメージもあるが、トルクの厚みが絶妙なうえ、足回りのクッション性の高さも相まって、ギクシャク感もない。規制をクリアしつつ過去のDR-Zと同等以上の性能を確保している新型エンジンは吹け上がりも軽く、より洗練されている印象だ。

◆無駄を省きつつ、ツボを抑えた装備が好印象

スズキ DR-Z4SMスズキ DR-Z4SM

また、パワーモードが3種類選択できるのもメリットとなる。Aモードがもっともレスポンス良く、B、Cと徐々に穏やかなキャラクターにセットアップされるが、どのモードも開け始めの唐突感がなく、よく煮詰められている。シンプルなボタン操作により、気分やシチュエーションによって選択出来るのが嬉しい。

また、トラクションコントロールの装備も時代の移り変わりを感じさせる。正直、このパワフルさであればほとんどの場面で不必要と感じたのではあるが、では必要ない装備かといえばそうとは思わない。結果的にこの装備に助けられたというライダーはかならず現れるはずである。

スズキのバイクは基本、シンプルというのが特徴でもある。無駄を省きつつ、ツボを抑えた装備が好印象だ。シンプル化することは、コスト削減を狙っただけでなく、軽量化にもつながっているはず。そしてそれらは様々なテストをおこなった上で、必要な最良なものだけを取り入れているともいえるのである。

◆ワインディング最速説ふたたび

スズキ DR-Z4SMスズキ DR-Z4SM

従来型のDR-Zはタイトなワインディングでは最速級の走りを持っていたが、これは最新型にも引き継がれている。軽量さと安定感のバランスが非常に優れているのだ。さらなるハイパワー、軽量モデルではグリップの良いタイヤをきっちり温めて、しっかり荷重をかけてあげれば高い能力を発揮させるが、それが不十分だと接地感が希薄であったりもする。

DR-Zはさほど神経を尖らせる必要なく、そのポテンシャルを引き出しやすい。足回りは柔らかめで、乗り心地の良さにもつながっている。エンジン性能はもちろんであるが、とくに足回りの進化によって、時代をタイムスリップしたかのような印象をもった。ブレーキはシングルながら制動力自体は十分。サスペンションとの相性を考えるとバランスの良い制動力といえるだろう。

スズキ DR-Z4SMスズキ DR-Z4SM

いまどき、ワインディング最速などと謳うのもどうかとも思うが、自由度も高く、面白さを身近に味わえるのも魅力的な点だ。

119万円という価格設定は、コストパフォーマンスの高い製品を数多く生み出しているスズキのマシンにしてみると、割高に感じられるかもしれない。しかし、妥協なく本格的なものを作ったという結果としての対価。作品としては間違いないものに仕上がっている。

スズキ DR-Z4SMと鈴木大五郎氏スズキ DR-Z4SMと鈴木大五郎氏

■5つ星評価
パワーソース:★★★★
ハンドリング:★★★★
扱いやすさ:★★★★
快適性:★★★
オススメ度:★★★★

鈴木大五郎|モーターサイクルジャーナリスト
AMAスーパーバイクや鈴鹿8耐参戦など、レース畑のバックボーンをもつモーターサイクルジャーナリスト。1998年よりテスター業を開始し、これまで数百台に渡るマシンをテスト。現在はBMWモトラッドの公認インストラクターをはじめ、様々なメーカーやイベントでスクールを行なう。スポーツライディングの基礎の習得を目指すBKライディングスクール、ダートトラックの技術をベースにスキルアップを目指すBKスライディングスクールを主宰。

《鈴木大五郎》

鈴木大五郎

AMAスーパーバイクや鈴鹿8耐参戦など、レース畑のバックボーンをもつモーターサイクルジャーナリスト。1998年よりテスター業を開始し、これまで数百台に渡るマシンをテスト。現在はBMWモトラッドの公認インストラクターをはじめ、様々なメーカーやイベントでスクールを行なう。スポーツライディングの基礎の習得を目指すBKライディングスクール、ダートトラックの技術をベースにスキルアップを目指すBKスライディングスクールを主宰。

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