フロントガラスを60秒で解氷、エネルギー消費も95%削減…EV向け解氷技術にバイコーの電源モジュール採用

エネルギー消費を従来の1/20に抑えながら、自動車のフロントガラスの解氷を60秒足らず完了
エネルギー消費を従来の1/20に抑えながら、自動車のフロントガラスの解氷を60秒足らず完了全 3 枚

米国の電源モジュールメーカーのバイコー(Vicor)は、カナダのベターフロスト・テクノロジーズが開発した革新的な解氷システムに、同社の電源モジュールが採用されたと発表した。

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従来のフロントガラスの霜取りは、内燃エンジンから発生する大量の廃熱を利用していた。しかし、この手法は熱がフロントガラスの表面に均一に伝わらないためエネルギー効率が低いという課題があった。電気自動車の普及に伴い、空調システムはバッテリー駆動へ移行したが、依然としてこの従来の手法を踏襲している。

さらに、EVは静粛性を高めるために車内の気密性が高く、窓ガラスの「曇り」がより大きな課題となっている。特に外気温が氷点下の場合には、走行中にフロントガラスが短時間で凍りつき視界を遮る危険性もある。現行のHVAC方式ではエネルギー効率が悪く十分な対応ができないため、EVにおける除霜技術の根本的な見直しが必要だ。

ベターフロストは、この霜取りの課題を解決する画期的なソリューションを開発した。独自のアルゴリズムと高電力密度の電力変換モジュールを用いたパルス電力供給技術により、乗用車やトラックの窓ガラスの霜を60秒で溶かす。現行のHVACシステムと比較してエネルギー消費量を1/20にまで低減することに成功した。

さらに重要なのは、乗用車や商用トラックの電動化へ伴う変化。これまで「無料」で利用できた廃熱が使えなくなり、除霜や曇り除去のエネルギーをメインバッテリーから供給することになるため、走行に使う電力を消費してしまう。

ベターフロストは2015年に、ダートマス大学のICE(氷・気候・環境)研究室において、「フロントガラスの霜を取り除く際、氷を完全に溶かす必要はない」という画期的な発見をもとに誕生した。霜取りには、氷とガラスが接する「界面層」の結合を弱めるだけで十分だったのだ。

これを実現するために、ベターフロストは制御された短いパルス電力をガラス表面に印加する。これにより氷の下に薄い疑似液体層が形成され、ガラス全体を加熱することなく瞬時に氷を剥離させることが可能になる。

フロントガラスやサンルーフの多くは、銀や酸化インジウムスズ(ITO)などの低放射(Low-E)導電膜がコーティングされている。ベターフロスト独自の電力制御アルゴリズムはこのコーティングを電気回路として利用する。これにより、従来のHVACシステムでは約25分を要していたフロントガラスの解氷がわずか1分足らずで完了し、内燃エンジン車と比較してエネルギー消費量を95%も削減することに成功した。

この技術ではガラスの表面を均一に温めるため、ひび割れの原因となる熱ストレスも軽減できる。さらに、外気温が氷点下20度の環境で暖房に必要なエネルギーが最大27%削減でき、EVの航続距離を延ばすことに直接貢献する。

騒音の原因となるブロワーモーターや、大きくかさばるエアダクトを排除することができるため、快適性が向上し、それにより生まれた車内スペースを他の用途に有効活用できるようになる。

ベターフロストの技術は、他の産業への応用にも適している。航空機の翼に使われる高価な除氷材の代替や、風力タービンのブレードへの着氷防止、さらに冷凍倉庫における除霜のエネルギー効率向上させることによる冷却コストの削減も可能だ。

ベターフロストのソリューションにおいて重要な要素は、48Vを中心とした電力供給ネットワーク。安全かつ高効率で高速のパルスをガラス表面に印加するため、高電力密度で車載グレードのバイコー電圧変換比固定バスコンバーターBCM(800Vまたは400Vから48Vへ変換)が採用されている。

バイコーのBCM6135は、3.4kW/in³という業界トップクラスの高電力密度を備えたDC-DCトランスとして動作する。高電圧側に入力された電圧は、モジュールの変換比(Kファクター)に従い低電圧へ変換される。例えば、Kファクターが1/16の場合、800Vの入力に対して50Vの出力が得られる。

また、バイコーの電源モジュールBCMは、従来のDC-DCコンバータと比較して最大90%の小型化を実現しながら、沿面距離と空間距離の厳格な基準を満たしている。

ベターフロストは現在、自動車メーカーやティア1サプライヤー、物流・運送業者との協業を積極的に進めており、商用トラックやプレミアムEVの早期導入企業(アーリーアダプター)との連携を深めている。今後3~5年の間で、EV・ハイブリッド車への導入拡大を見込んでいる。

ベターフロストは研究室での発見を、自動車業界を変革する技術へと成長させ、バイコーのようなパートナーとのエコシステム形成を通じて、冬季に頻発する最も危険な課題である霜への対処法を刷新しようとしている。

バイコーは高性能電源モジュールのリーディングカンパニー。電力源から負荷点まで高い電力密度と高効率を実現する電力供給ネットワークを、モジュールで構成する電源システムソリューションによって実現し、顧客の技術革新に貢献している。配電アーキテクチャ、電力変換技術、パッケージ技術を長年にわたり進化させることで、バイコーの電源モジュールは電力密度、効率、電力容量の向上を続けてきた。バイコーは、ハイパフォーマンスコンピューティング、産業機器、自動車、航空宇宙・防衛などの顧客に製品を供給しており、要件の厳しい産業分野で電源モジュールの設計、開発、製造を40年以上続けている。

《森脇稔》

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