三菱電機は、京都大学大学院工学研究科との共同研究により、ファンデルワールス積層材料の一種である高配向性熱分解グラファイト(HOPG)が自己復元特性を持つことを世界で初めて確認したと発表した。
HOPGのマイクロレベル試験片に繰り返し曲げ負荷を与える試験を実施した結果、負荷回数の増加に伴い試験片が軟化するものの、時間経過とともに硬さを含む機械的強度が元に戻る「自己復元特性」を持つことが明らかになった。
試験では、一方向のみに変形させる片振り試験と、両方向に変形させる両振り試験の2つの方法で実施。片振り試験では1万回の負荷で変形抵抗が初期の66%まで低下したが、38日間放置することで91%まで回復した。両振り試験では1000回の負荷で41%まで低下した変形抵抗が、7日間で97%までほぼ完全に回復することを確認した。
この自己復元特性は、ファンデルワールス積層を構成する二次元材料であるグラフェンが高強度かつ柔軟であることと、グラフェン同士の間にはたらくファンデルワールス相互作用が、層間すべりによって一度切れたとしても再び形成されるという特性を持つことに起因する。
本成果は、ファンデルワールス積層材料を用いた微小電気機械システム(MEMS)の長寿命化を実現し、MEMSを搭載するさまざまな機器の信頼性向上に寄与する。近年、スマートフォンの高機能化、車載システムにおける自動運転・安全制御の高度化、ウェアラブルデバイスの普及などに伴い、加速度センサーや圧力センサーなどのMEMSの需要が急速に拡大しており、長期間の振動や衝撃に耐える高い耐久性を確保しながら軽量化を実現することが求められている。
今後は、この自己復元特性をMEMSの振動吸収機構に応用し、長寿命で信頼性の高い振動吸収機構の開発を目指す。また、他のファンデルワールス積層材料についても自己復元特性の研究を深めていくとともに、材料の変形によって電位が発生するファンデルワールス積層材料への応用も進め、変形エネルギーを効率的に電気エネルギーに変換し続けるMEMSの実現に取り組んでいく。




