『WR125R』はオフロードへの入門バイクか、それとも「断崖絶壁」か? ヤマハに伝えたい「切なる願い」

ヤマハ WR125R
ヤマハ WR125R全 50 枚

ヤマハの新型デュアルパーパス『WR125R』が発売した。ヤマハのみならず、他の国産メーカーを含めても、この125ccクラスには久しく本格的なオフロードモデルが存在しなかったわけだが、そのポテンシャルの一端に触れてみた。

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◆走り出せば「爽快」のひと言

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筆者(伊丹孝裕)の身長は174cmである。寄る年波とともに多少縮んでいる可能性もあるし、股下の長さは平均以下ではあるが、ビッグアドベンチャーに乗ったとしても、足つきで絶望したことはあまりない。

WR125Rなら尚更、875mmのシート高は、両足にツマ先立ちを強いるものの、特に不安感やプレッシャーは感じない。乗車のためにシートをまたぐ際、一応目視で足の上がり具合を確認しておかないとリアフェンダーに引っ掛ける可能性があるくらいだ。50歳も半ばに到達すると、自分の頭の中のイメージと実際の体の動きが一致していないことがある。若者は知らなくてよい。

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WR125Rで街中を走り出す。これは「爽快」のひと言に尽きる。視点は高く、見晴らしは最高。車両側面は足の動きを妨げるものがなにもなく、下半身をホールドすることにも前後に大きく動くことにも寛容で、車線変更も旋回も自由自在だ。

オフロードモデルらしいスリムさや軽さもさることながら、人車一体の感覚を強く後押ししているのが、リニアリティに富むエンジン特性にある。

◆WR(ワイドレシオ)の名に恥じない125ccエンジン

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125ccの水冷4ストロークSOHCシングルは、『MT-125』や『YZF-R125』、『XSR125』で実績のあるユニットを、このモデル専用にチューニング。15ps/10000rpmの最高出力は共通のスペックだが、兄弟モデルが12Nmの最大トルクを8000rpmで発生するところを、WR125は11Nm/6500rpmに最適化。そこにショート化された2次減速比の効果が加わり、スロットル操作に対してタタタンッとリズミカルなステップを披露する。

アベレージスピードの高い道路環境下でも、交通の流れをリードすることはたやすく、回転はスムーズに上昇。右手に少々力を込めれば、VVA(可変バルブ)が機能する7000rpmをあっさりと超え、サウンドに野太さを加えながら11000rpmあたりまで淀みなく回り切る。

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排気量が排気量だけに、ことさら力強いわけではないが、クラッチのつながりに神経質さは微塵もなく、タイヤがわずかでも転がり出せば、スロットル全閉でもトコトコと粘りながら進む。ストレスなく渋滞路をこなし、郊外に至ればハツラツとスピードに乗せられるレンジの広さは、排気量の縛りを感じさせず、WR(ワイドレシオ)の名に恥じない。

標準装着されたダンロップのD605は、ブロックタイヤと言ってさしつかえないパターンながらオンロードにおけるグリップ感とハンドリングも良好で、ストリートをキビキビスルスルと駆け抜けることをためらわせない。日々の通勤路がアスファルトだとしても、楽しさが削がれることはないはずだ。

◆オフロードでも「楽しい」って本当?

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うん、やはりいいバイクである。同業の多くが「楽しい」と書き、「おもしろい」と口にすることに賛同できる。賛同はできるがしかし、同業の多くがオンロードだけでなく、オフロードに踏み入れてなお、そうなのだ。本当に?

だって、シート高875mmのフルサイズ(フロント21インチ/リア18インチ)だよ。138kgの車重は、数値ほどの手応えはないし、低速低回転域で扱いやすい既述のエンジンは、オフロードでこそ活きるのは確か。

とはいえ、オンロードでは、つまりほぼフラットな路面では気にならなかった足つきの印象は、わだちが続いたり、ガレ場を含んだオフロードでは一変する。バランスを少々崩し、パッと足を出す動作に妨げはなくとも、着こうとした先に地面はなく、ブーツは何度も空を切る。転倒こそなかったものの、時速数キロでゆるゆると進んでいるだけで疲労が半端なく、気温ヒトケタの中で汗がにじむ。

サスペンションにたっぷり余力があることも、ライディングポジションに自由度があることも、オンロードでは若干感じたフロントまわりの重さがオフロードでは安定感に変換されることもわかった。わかったがしかし、やはり決して優しいキャラクターではない。きちんと手強い。「行こうかな、行けるかな」という迷いが浮かんだ時、かなりの確率で「やめておこう」を選択することになった。

◆「125でも本気」だからこそ入門モデルではない

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ヤマハは、WR125Rのことを「オフロードワールドへ誘う入門モデル」としているが、「WR」はエンデューロレーサーの流れを汲むネーミングであり、モトクロッサーである『YZシリーズ』のスタイルを盛り込んでいることを明言。さらに言えば、『テネレ700』のイメージも見え隠れする。

それはつまり、「排気量は小さくとも本気で作ってますからね」という宣言に等しく、その意味でコンセプト通りに仕上がっている。したがって、「足つきが悪い」だの「車体が大きい」だのは言いがかりに等しい。

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たとえば、止まることを前提としないクローズドコースだったり、オフロードでも比較的フラットで開けていけるシチュエーションだったり、あとは単純にそれなりにスキルのあるライダーだったりすると、これは確かに楽しい乗り物に違いない。

一方、未舗装路になると途端に挙動が不審になる自分のようなライダーだと入門すらさせてもらえず、「今日のところはこれくらいにしといたろ」とUターンするのが精一杯で、路面の凸凹が激しかったり、傾斜がきつかったりするとUターンすらできず、車体を押し歩くことになる。

◆ヤマハに伝えておきたい切なる願い

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WR125Rとともに8日間ほど過ごし、切なる願いとしてヤマハに伝えておきたいことは次のようなことだ。

WR125Rには、アセアン諸国を中心に『WR155R』という兄貴分が存在する。であれば、日本国内で「YZF-R125」と『YZF-R15』が共存しているのと同様、まずWR125RとWR155Rの2本立てにしてもらうのが、まずひとつ。

その上で、YZ直系の本格イメージはWR155Rに担ってもらい、WR125Rは排気量のみならず、車体もダウンサイズされた弟分としてラインナップ。具体的には、『YZ85LW』や『TT-R125LWE』、あるいはかつての『トリッカー』のように、ホイール径にフロント19インチ、リア16インチを組み合わせてもらうというのが、もうひとつだ。

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丸太越えや大ジャンプは想定から外し、サスペンションのストローク量も減らしてもらって構わない。なんなら、『YZ85』のようにフロント17インチ、リア14インチでもいいと思っているくらいだが、それはさておいても、ともかく真のオフロード入門モデルの存在を望みたい。

誰のためって、自分と自分のようなライダーのために。足つきに不安がなく、車体が少し縮めば、街中でもプラスの要素こそあれ、マイナスはなく、ライダーの裾野は格段に広がるに違いない。

◆「忘れていたなにか」を取り戻したくなる

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ヤマハももちろん、むげに突き放してはいない。最大で70mmほどシート高をローダウンできるリンクとシートを用意してくれているのだが、アクセサリーとして設定するのと、最初からコンパクトなディメンションで作り込むのとでは、仕上がりは異なるはず。

オフロードの世界へ足を踏み入れ、そのフリーな感覚に触れられるか、返り討ちにあうのかでは、その後のバイクライフが天と地ほども違ってくるはずだ。

MTシリーズに「MT-125」から「MT-10」まで、YZF-RシリーズにもYZF-R125から「R1」まであり、きれいでなだらかな階段が作られている。対して、ヤマハのオフロードカテゴリーには、WR125Rとテネレ700しか存在せず、階段どころか断崖絶壁で隔てられているのが現実である。これが250ccや400ccというならまだしも、125ccという最初の一歩で振るい落とされるのは、あまりにもったいない。

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もっとも、こうやってああだったら、こうだったらと思いを巡らせ、あれこれとリクエストしたくなること自体、WR125Rの魅力の一端に触れてしまったからに他ならない。

「行こうかな、行けるかな」という思いに対し、迷わず行ってしまえていた若かりし頃が呼び覚まされたと言ってもよく、メーカー所有の広報車両では無茶できなくとも、自分のものとして落ちたり、まくれたり、突き刺さったりするなら悪くない。

さすがにもう痛いのは避けたいけれど、忘れていたなにかを取り戻したくなるモデルだった。

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■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
ハンドリング:★★★★★
扱いやすさ:★★★
快適性:★★★
オススメ度:★★★

伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト
1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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