ブリヂストン『AirFree』東京都内初実装、杉並区のグリーンスローモビリティで見えた実力

左から杉並区都市整備部 交通企画担当課長の石森健氏、ブリヂストン 新モビリティ事業部門長の太田正樹氏、ブリヂストン 探索事業AirFree開発推進部長の岩淵芳典氏
左から杉並区都市整備部 交通企画担当課長の石森健氏、ブリヂストン 新モビリティ事業部門長の太田正樹氏、ブリヂストン 探索事業AirFree開発推進部長の岩淵芳典氏全 13 枚

ブリヂストンは、次世代タイヤ『AirFree』を装着したグリーンスローモビリティの実証実験を東京都杉並区で開始した。都内でのAirFree実証実験は初となる。

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◆ブリヂストンの次世代タイヤAirFreeが杉並区で実証実験を開始

AirFreeは、「エアフリーコンセプト」として技術開発が進められてきた空気を使わないタイヤである。現在は東京都小平市のブリヂストン技術センターを中心に開発・テストが行われているほか、富山県富山市や福岡県久留米市でも公道を走らせる実証実験が進められている。

今回の実証実験は、東京都杉並区とブリヂストンがグリーンスローモビリティ運行事業とAirFreeに関する連携協定を締結したことで実現した。ブリヂストンによれば「本協定は、杉並区のグリーンスローモビリティ運行事業を活用し、ブリヂストンのAirFree技術開発を支援し、ならびに事業開発の促進を図るとともに、資源を有効活用し、廃棄物をできる限り削減する循環型社会を目指す杉並区の振興・発展に寄与することを目的としています」としている。杉並区は、岸本聡子区長が自転車で登庁するなど、環境問題に敏感な区として知られている。

◆荻窪駅西口を起点にした循環コースで運行

杉並区では、グリーンスローモビリティの試乗会を2021年に実施した。2022年に無償での実証運行、2024年に有償での実証運行を経て、同年に本格運行が始まった。運行コースは、荻窪駅西口から大田黒公園、荻外荘公園、桃井第二小学校を経て荻窪駅西口に戻る、1周2.5kmの循環コースである。利用料金は1回100円だ。

杉並区には「荻窪三庭園」と呼ばれる名跡があり、大田黒公園と荻外荘公園はそのうちの2つにあたる。残る1つの角川庭園も荻外荘公園から300mほどの場所にあり、このグリーンスローモビリティの循環コースは3庭園を結ぶルートにもなっている。

この循環コースを走るグリーンスローモビリティは、乗客5名定員のカート型と、乗客7名定員のバス型の2タイプである。このうちブリヂストンのAirFreeが装着されるのはカート型で、1日24便のうち半分の12便がカート型となる。カート型はヤマハ製の「AR-07」と呼ばれるモデルで、8~12時間の充電で45~55kmの走行が可能だという。

◆発表会では杉並区とブリヂストンが期待を語る

今回の実証実験についての発表会は、荻外荘公園で行われた。荻外荘公園は1927(昭和2)年に大正天皇の侍医・入澤達吉の別邸として建てられ、その後は本邸となった。1937(昭和12)年には近衞文麿が移り住んだという由緒ある地である。

発表会では、杉並区都市整備部交通企画担当課長の石森健氏から、次のような説明があった。

「杉並区では、誰もが気軽で快適に移動できる地域社会の実現に向けて、グリーンスローモビリティの運行を取り組みとして推進しています」

「グリーンスローモビリティは、20km/h未満で公道を走れ、電気で走ることから環境に優しいといったメリットがあります。また、ゆっくり走るので景色を楽しめます。小型で開放的であることから、車内での会話も弾みやすく、地域のコミュニケーションツールとしての活用も期待しています。運行から1年が経過し、想定を上回る利用となっていますが、まだまだ利用を伸ばしていくために、使いやすく利便性の向上を図っていかなければならないと考えています」

「このたび、AirFreeに関する実証実験については、リサイクル可能な素材により資源の有効活用や廃棄物削減に寄与すること、パンクしないことで運行の継続性が高まること、青いホイールにより視認性が向上し安全運行の確保につながることといった効果を期待しています。こうした効果が期待できることから、実証実験に協力することにしました」

「こうした取り組みが、区の目指す持続可能な公共交通の実現やゼロカーボンシティの推進に資するものと期待しています。多くの方にAirFreeを体験していただくことで、地域の活性化につながればと考えています」

また、ブリヂストン新モビリティ事業部門長の太田正樹氏は、次のように説明した。

「本日、この杉並区にて実証実験を開始しました。AirFreeはサステナビリティを中核とし、2008年より開発を続けています。現在は第3世代まで進化し、パートナーとの実証を通じて社会実装を目指しています」

「地域社会のモビリティを支えることをミッションとし、『移動を止めない』『サステナビリティ』『安心安全』の三つの提供価値は、小型・低速・低炭素なグリーンスローモビリティとの親和性が非常に高いと考えています。ちなみに、空気を使わないAirFreeの技術は、空気の使えない宇宙・月面環境で使用する月面探査車用タイヤにも活用しており、そのミッションを拡大しています」

「先ほど石森課長よりご説明いただきました、AirFreeへの三つの期待、運行の持続性の担保、資源の有効活用、廃棄物の削減、ゼロカーボンシティの実現に対し、その提供価値により、しっかりとお応えできるものと考えております。本日開始しましたこの実証実験で、AirFreeの提供価値の検証を進めていきます」

「昨2025年11月には富山市にて、全国初のグリーンスローモビリティによる公道実証実験を実施しました。富山市ではバス型のグリーンスローモビリティだったのに対し、今回は杉並区における実証実験として、カート型のグリーンスローモビリティで実施します。このカート型のグリーンスローモビリティとしては全国初の公道実証実験であり、かつ都内では初のグリーンスローモビリティによる公道実証実験となります」

「都市部ならではの住宅街を巡る歩行者の多い走行環境、密な運行スケジュール、多くの利用者というように、車両タイプも使用環境も異なる条件下で、AirFreeのさらなる価値の検証を進められることを期待しております。また、この荻窪駅南側エリアのさらなる活性化、荻窪三庭園や地域商店街へのアクセスに少しでも貢献できることを願っております」

「ブリヂストンは『安全をすべてに優先する』という安全宣言を経営の基盤に置いています。本日より開始する実証実験においても、利用者、運行者、その他すべての方々の安全を最優先に取り組んでいきます」

◆実際に乗車して見えたAirFreeの可能性

筆者は荻窪駅西口から荻外荘公園まで乗車したが、乗り心地は十分に確保されており快適だった。カート型のグリーンスローモビリティにドアはなく、オープンエアとなっている。ただし、雨などを防ぐために透明なビニールカバーが用意されており、花粉症の筆者には少し助けられる装備という印象だった。

運行を担当するのは、地元のタクシー会社であるキャピタルモータースだ。記者会見のあと、キャピタルモータースで運転を担当する方に話を聞いたところ、従来の空気入りタイヤよりも運転が楽だという印象を持っているとのことだった。

まずはグリーンスローモビリティという低速走行の領域で実証実験が始まったAirFreeだが、今後はさらに高い速度や荷重などにも対応していくことだろう。空気入りタイヤの宿命だったパンクというトラブルから解放されたAirFreeは、モビリティに新しい風を吹き込む存在になりそうだ。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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