「新型セレナAUTECH SPORTS SPECで、サーキットを走ってみませんか?」
日産『セレナ AUTECH SPORTS SPEC』
レスポンス編集部から届いたその一報は、冬の朝の澄んだ空気のように、どこか輪郭がはっきりしないまま私の耳に届きました。セレナとサーキット。日常と非日常、家族の時間とタイムアタックの世界。その二つがひとつの文脈に並ぶことに、わずかな違和感を覚えたのは正直なところです。
セレナは日産が誇るミドルサイズミニバンであり、ライバルと比べても、たしかに走りの質は高い部類に入ります。ですが、走行性能をことさらに誇示するクルマではありません。家族や友人を乗せ、荷物を積み込み、目的地へ穏やかに向かうことが主たる使命です。
日産『セレナ AUTECH SPORTS SPEC』“走る”のではなく“移動を快適にする”速さよりも快適さ、刺激よりも安心感。それがセレナという存在の根幹にある価値観です。だからこそ、サーキットという舞台が設定されたと聞いたとき、どこか不自然さを覚えました。ミニバンを限界まで攻める姿など、すぐには想像できなかったからです。
最も、それが「AUTECH SPORTS SPEC」だとわかった瞬間、その戸惑いは次第に興味へと変わっていきました。というのも、このモデルは単なるドレスアップ仕様ではないからです。外観に専用の意匠を与えるだけでなく、動力性能と操縦性にも明確に手を入れている。つまり、見た目だけではなく中身にも魂を注いだセレナなのです。
日産『セレナ AUTECH SPORTS SPEC』標準車のセレナは、多くのミニバンの中でも走りを丁寧に整えてきたモデルです。重心が高く、車体も大きいという物理的制約を抱えながらも、日常域での安定感や操縦性の自然さには定評があります。その基礎体力をさらに磨き上げたというのですから、サーキットを走らせることも決して荒唐無稽ではないのかもしれない。そんな思いが胸の内でゆっくりと広がっていきました。
◆新型セレナを“AUTECH”が仕立てると何が違うのか
日産『セレナ AUTECH SPORTS SPEC』試乗当日は、よく晴れた冬の日でした。空気は凛と冷え、路面は乾ききっています。佇んでいたのは、いつものAUTECHらしい出で立ちのセレナでした。
“いつもの”と表現したのは、リーフやオーラ、さらにはエクストレイルなどに設定されているAUTECHとデザイン言語を共有しているからです。ブランドとしての統一感が、たしかにそこにあります。
日産『セレナ AUTECH SPORTS SPEC』AUTECHブルーは、深みと光沢をたたえ、陽光を受けて静かに揺らいでいました。AUTECHブランド発祥の地である神奈川県・湘南の海と空を思わせる色合いです。水面のきらめきを連想させるフロントグリル、水中へ差し込む光のように輝くホイール。そのひとつひとつが、ただの装飾ではなく情緒をまとった意匠として成立しています。
日産『セレナ AUTECH SPORTS SPEC』フロントアンダーからリアバンパーへと連なるメタル調フィニッシュのプロテクターは、ボディを包み込むように走り、AUTECHであることを静かに主張します。過剰ではない、それでも確実に標準車とは違う佇まいです。
日産『セレナ AUTECH SPORTS SPEC』インテリアもまた、青の気配に満ちていて、本革巻きステアリングはしっとりと手になじみ、ブルーのステッチがダッシュパネルからコンソールボックスへ流れるように走っています。湘南ビーチのさざなみを思わせるシートデザインも印象的です。その中央に縫い込まれた「AUTECH」のロゴは立体的で、まるで誇りの証のように浮かび上がっていました。
◆SPORTS SPECの走りはどこまで変わるのか
日産『セレナ AUTECH SPORTS SPEC』はやる気持ちを抑えきれず、私はエンジンスタートボタンを押しました。パドックからコースへ乗り入れた瞬間、SPORTS SPECという名の意味を身体で理解しました。ステアリングの応答が、明らかに違うのです。
日産『セレナ AUTECH SPORTS SPEC』初期操舵から“スッ”と旋回モーメントが立ち上がるのですが、それはスプリングレートが引き上げられており、フロントは約15%、リヤは約20%も強化しているからで、併せてショックアブソーバーの減衰特性も専用化されているのです。
重心の高いミニバンにありがちな“ぐらり”とした挙動は抑え込まれ、姿勢は終始安定していました。
日産『セレナ AUTECH SPORTS SPEC』さらにSPORTS SPEC 専用装備となるミシュラン パイロットスポーツ5が路面を確実に捉え、ドライバーの意思を遅れなく反映します。しかし、タイヤのグリップだけを高めたようなアンバランスさはありません。
速度を高めても、その確かさは揺らぎません。旋回特性に乱れはなく、荷重移動は自然で滑らかです。タイヤに荷重を乗せるように負荷を高めても、操縦安定性が破綻する気配はありませんでした。
日産『セレナ AUTECH SPORTS SPEC』その理由は、サスペンションだけにとどまりません。サスペンションメンバーステーやクロスメンバーの追加、板厚を増したリアクロスメンバー、さらにヤマハ製パフォーマンスダンパーによるボディ補剛。単に剛性を高めるのではなく、ボディそのものに減衰特性を持たせる思想が貫かれています。
結果として得られたのは、硬質な塊ではなくしなやかな強さでした。鍛え抜かれたアスリートが、実は柔軟な筋肉を併せ持つように、剛と柔が高い次元で同居しています。
◆抜かりないトータルチューニングが日常走行で効く理由
日産『セレナ AUTECH SPORTS SPEC』もちろん、これはタイムを削るためのミニバンではありません。限界域でタイヤが悲鳴を上げるような攻め方を想定したモデルではないのです。ですが、交差点を曲がる瞬間の安心感や、高速道路での直進安定性といった日常の場面で、この操縦性は確実に効いてきます。
日産『セレナ AUTECH SPORTS SPEC』動力性能も頼もしいものです。レンジエクステンダー式ハイブリッドのe-POWERは、1.4リッター直列3気筒エンジンを発電専用とし、駆動はモーターが担います。アクセルを踏み込んだ瞬間から、滑らかで力強い加速が立ち上がります。
日産『セレナ AUTECH SPORTS SPEC』SPORTS SPECではドライブモードにも専用の味付けが施されています。スタンダードモードでも出力特性は高められ、スポーツモードでは右足の動きにより敏感に反応します。まるで手綱を引かなければ前へ前へと駆け出そうとする愛犬のようです。
日産『セレナ AUTECH SPORTS SPEC』それでいて、静粛性は極めて高いのです。遮音ガラス、ダッシュ奥のインシュレーターなどの効果が重なり、車内は穏やかな静けさに包まれます。パフォーマンスダンパーは路面からの振動を巧みに整え、乗り心地も犠牲にしていません。
◆新型セレナ AUTECH SPORTS SPECは家族向けミニバンの新しい答えか
日産『セレナ AUTECH SPORTS SPEC』走行時間が尽きるまで、私はコースを周回し続けました。ミニバンを操りながら、背中に心地よい汗をかいたのは初めての経験です。編集部がなぜクローズドコースを選んだのか、その理由がようやく理解できました。セレナ AUTECH SPORTS SPECの走りのレベルを、疑いなく実感させたかったのでしょう。
日産『セレナ AUTECH SPORTS SPEC』セレナは依然として、家族のためのミニバンです。しかしその内側には、確かな操縦性と動力性能が息づいています。日常のストレスをやわらかく解きほぐし、移動の時間を少しだけ豊かなものに変えてくれる。そこに、このクルマの本質があります。
日産『セレナ AUTECH SPORTS SPEC』あの日、サーキットで感じたのは速さそのものではありませんでした。クルマが持つ可能性の広がりです。セレナは、ただ“移動するだけ”の存在にとどまりません。その新しいミニバンのスポーティさを、私は確かに感じることができました。
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