◆ネオクラの枠を超えた完成度
回さずとも湧き出る力強さ! ワインディングではアクセルひとつで向きを変え、力強く立ち上がる!! ストリートの扱いやすさとスポーツ性を高次元で両立したスポーツネイキッド、スズキ『GSX-8T』だ。
【詳細画像】ただの“昔風”バイクじゃないスズキ『GSX-8T』
昨今注目を集める“ネオクラシック”カテゴリーに登場した話題のニューモデルだが、単なる“昔風”のバイクではない。走り出した瞬間に、それを確認した。クラシックなムードをまといながらも、感じられるのは懐かしさではなく、ネイキッドスポーツとしての高い完成度、それが何よりも際立っている。
スズキ GSX-8T
デザインは、1968年の「スズキT500」に着想を得たものとされるが、全体としてはあくまで現代的。ヘッドライトはフラットボトム形状のモノラウンドLEDを採用し、クラシカルな意匠と現代的な配光性能を両立した。
メーターには5インチカラーTFT液晶を採用。速度、回転数はもちろん、ギヤ段数や燃料など豊富な情報を視認性高く表示する。
◆回さずとも味わえる分厚いトルク
スズキ GSX-8T搭載される776ccの並列2気筒エンジンは270度クランクを採用し、低回転域から厚みのあるトルクを発生。日常域での扱いやすさと、パフォーマンスを巧みに両立させている。
力強さは十分にありながら過敏すぎず、必要なだけのパワーを右手ひとつで引き出せる感覚が、このパワーユニットの魅力だ。
スズキ GSX-8Tわずか2000rpm付近からでも滑らかに加速し、スロットル操作に対して遅れなく応える。角の取れた心地よい鼓動感とともに速度を乗せていき、高回転まで引っ張らずとも、ストリートでは不足を感じることはない。頻繁なシフト操作を必要とせず、余裕をもってスムーズに流せるのがいい。
一方でアクセルを大きく開ければ、その表情は一変する。回転の上昇とともに加速は一気に鋭さを増し、ひねった分だけダイレクトに前へ出る。
◆コーナーで光るシャシーと足まわり
スズキ GSX-8Tコーナーが続く道では、その実力の高さを存分に実感できた。前後サスペンションはKYBで統一。フロントは41mm倒立フォーク、リアはリンク式モノショックを組み合わせ、剛性感と路面追従性を高いレベルで両立し、確実にトラクションを引き出す。
前後ともダンピングがしっかりと効いて、ペースを上げた際の安定感が高い。荒れた路面ではややコツコツとした入力が伝わるものの、前後バランスに優れ、コントロール性を重視したセッティングにより、ブレーキングから車体の寝かし込み、そして立ち上がりへと至る一連の動きがじつにスムーズ。ライダーに余計な緊張を強いることなく、自然な流れでコーナーをクリアしていける。
スズキ GSX-8TフロントブレーキはΦ310mmダブルディスクにラジアルマウント4ピストンキャリパーを組み合わせ、コントロール性と制動力を高い次元で獲得している。
リアにはΦ240mmシングルディスクを採用し、車体姿勢を安定させながら繊細な速度調整を担う。コーナー出口ではトルクを活かした力強い加速が味わえ、スロットル操作に応じて自然に向きを変えながら、狙ったラインを外すことなく加速していく。
◆扱いやすさと先進性が支える総合力
スズキ GSX-8Tクイックシフターはアップ/ダウン双方向に対応。低速域ではわずかなショックを伴うこともあるが、変速は確実で、スポーティに走る場面では大きな武器となるのはいうまでもない。オン/オフの切り替えも可能で、シーンに応じて使い分けるのもいいだろう。
電子制御の完成度も高い。ドライブモードセレクターやトラクションコントロール、電子制御スロットルに加え、ローRPMアシストやイージースタートといった装備も充実。各制御の介入は自然で、ライダーの操作を妨げることなく安心感を底上げしてくれる。コンディションの悪い路面でも挙動は穏やかで、気負うことなく走らせることができた。
スズキ GSX-8T軽く前傾したライディングポジションは自然で、数値以上にコンパクトに感じられる車体と相まって取り回しのしやすさも印象的だ。タック&ロールデザインのシートは絞り込まれた形状で、高密度フォームによって快適性に優れる。写真は身長175cmの筆者がまたがった場合で、足つき性に不安はない。
◆新時代のスタンダードネイキッド
穏やかに流すもよし、ペースを上げてアグレッシブに走るのもよし。そのどちらにも応える懐の深さを持ち、スズキらしく全体をそつなくまとめながらも、高いポテンシャルをしっかりと感じさせる仕上がりだ。
1台で日常からワインディングまで楽しみ尽くせる、新時代のスタンダードネイキッドといえる。
スズキ GSX-8T青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。




