公道向け「着るエアバッグ」が初公開、アールエスタイチが“四輪業界の巨人”とタッグを組んだ理由とは…東京モーターサイクルショー2026

アールエスタイチが発表したベストタイプのエアバッグ『T-SABE(ティーセーブ)』(東京モーターサイクルショー2026)
アールエスタイチが発表したベストタイプのエアバッグ『T-SABE(ティーセーブ)』(東京モーターサイクルショー2026)全 30 枚

◆公道におけるリスクに特化し開発された

本格的なツーリングシーズンを前に、ライダーの安全確保に向けた新たな選択肢が現れた。「東京モーターサイクルショー2026」でアールエスタイチが発表したベストタイプの着るエアバッグ『T-SABE(ティーセーブ)』だ。

【画像】アールエスタイチの着るエアバッグ『T-SABE(ティーセーブ)』

デモンストレーションで爆発音とともにエアバッグが膨らむと、ギャラリーたちは「おおっ!!」と声を漏らし、目を輝かせた。

サーキットではなく、日常の道路環境に照準を合わせたエアバッグベストで、市街地のストップ&ゴーや郊外路のワインディングなど、現実に起こり得る事故パターンを徹底的に分析。立ちゴケなど軽微な転倒と事故を見極め、必要な瞬間だけ確実に作動するアルゴリズムを構築している。

『T-SABE』作動前(左)と作動後(右)『T-SABE』作動前(左)と作動後(右)

リスクを検知した瞬間、エアバッグが展開し、ライダーと障害物の間に約75~80mmの空気層を作り出すが、その反応速度はわずか0.049秒。検知から展開完了まで、人間の瞬きよりも速い時間でエアバッグが膨張し、胸部と背中を包み込む。

エアバッグは一次衝突だけでなく、その後の転がりによる二次衝突にも対応。レースでは転倒後、すぐに再スタートを切らなければならない状況もあるが、公道用として開発されたティーセーブでは、展開後すぐに空気が抜けない設計とすることで、複数回の衝撃からもライダーを守ってくれる。

◆四輪業界の巨人とタッグを組んだ

アールエスタイチが発表したベストタイプのエアバッグ『T-SABE(ティーセーブ)』(東京モーターサイクルショー2026)アールエスタイチが発表したベストタイプのエアバッグ『T-SABE(ティーセーブ)』(東京モーターサイクルショー2026)

開発を支えたのが、自動車用エアバッグで世界をリードするオートリブだ。世界シェア約44%を誇る同社が二輪分野に踏み込んだ背景には、看過できない現実がある。

二輪車の死亡事故リスクは四輪車の約6倍にも達し、さらに世界では年間約25万2000人が命を落とし、1000万人以上が長期療養や後遺症を負っている。

「二輪の安全強化は急務」と、実績ある四輪の安全技術を応用し、電子制御式エアバッグという新たな解決策を提示すべく、アールエスタイチとの共同開発に踏み切ったのだ。

約30か月に及ぶ開発期間の中で、衝突試験用ダミーによる評価、実走テスト、さらにはプロのスタントライダーを起用した過酷な検証を重ね、「確実に作動し、不要なときは作動しない」という相反する命題を高い次元で両立させている。

◆ダメージを低減するために

『T-SABE』を共同開発したエアバッグメーカー「オートリブ」担当者によるプレゼン(東京モーターサイクルショー2026)『T-SABE』を共同開発したエアバッグメーカー「オートリブ」担当者によるプレゼン(東京モーターサイクルショー2026)

東京モーターサイクルショー2026で、エアバッグ展開を実演した担当者は、ジャケットの中に着用するだけで「中程度の障害リスクを26.64%、重傷リスクを最大56.55%低減する」と、実証実験で得た数値を明かした。

また注目すべきは、事故後の対応までを見据えていることだ。ライダーをいかに早く救命できるかが、その後の生死、障害を負うリスクに大きく関わる。

ティーセーブでは専用アプリ「T-SABE CONNECT」と連携することで、転倒時には登録した家族へGPS位置情報付きの緊急通知を自動送信。事故によるダメージ低減だけでなく、迅速な救命につなげる。

◆充電不要で1泊2日のツーリングへ

アールエスタイチが発表したベストタイプのエアバッグ『T-SABE(ティーセーブ)』(東京モーターサイクルショー2026)アールエスタイチが発表したベストタイプのエアバッグ『T-SABE(ティーセーブ)』(東京モーターサイクルショー2026)

実用面も抜かりはない。電子ユニットを取り外すことで、ベスト本体を手洗いによって洗濯することができる。常に清潔な状態で、日常使いからツーリングまで快適に使用できる。

バッテリーはフル充電で約30時間稼働し、1泊2日のツーリングであればそのまま使用可能。USB-Cによる充電は約4時間で完了する。

電子ユニット部はIP54相当の防水設計。重さは約1.8kgでしかなく、サイズ展開は、S、M、L、XL、BXLと幅広く設定され、女性専用設計のWMもある。

アールエスタイチが発表したベストタイプのエアバッグ『T-SABE(ティーセーブ)』(東京モーターサイクルショー2026)アールエスタイチが発表したベストタイプのエアバッグ『T-SABE(ティーセーブ)』(東京モーターサイクルショー2026)

希望小売価格は8万8000円(税込み)とし、月額利用料といったサブスクリプション制を採用せず、購入後はメンテナンス費用などを除き、追加の運用コストなしで継続して使用できる。

作動後は、エアバッグに損傷がなければインフレーターの交換で再使用が可能。万が一、大きなダメージを受けた場合でも、買い替え時には30%オフのサポートプログラムが用意されている。

アールエスタイチがバイクギヤで培ってきた実用性や優れるフィット感と、自動車業界で長年蓄積されてきた安全技術が融合したティーセーブ。担当者は「ゴールデンウィーク前に発売したい」としている。

TAICHIブース(東京モーターサイクルショー2026)TAICHIブース(東京モーターサイクルショー2026)

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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