ポテンザ新作「RE71RZ」「RE005」試乗! 先代と比べて“別物級”の進化を体感する

ポテンザ新作「RE71RZ」「RE005」試乗! 先代と比べて“別物級”の進化を体感する
ポテンザ新作「RE71RZ」「RE005」試乗! 先代と比べて“別物級”の進化を体感する全 28 枚

こんなにはっきりと、まるでサスペンションのセッティングを根こそぎ変更したのではないかと疑いたくなるほど、“速くなった”ことを意識させられるタイヤは珍しい。

【画像全28枚】

ステアリング越しに伝わるその変化は、単なる性能向上という言葉では片づけられない。いつものサーキットの路面が、新たにハイグリップな路面に敷き替えられたかのような変化を感じたのだ。

◆ブリヂストン「RE71RZ」は履き替えた瞬間に速さを感じるタイヤだった

ブリヂストン ポテンザRE71RZブリヂストン ポテンザRE71RZ

空気入りタイヤの起源は、いまから138年前の1888年に遡る。20世紀初頭にはカーボンブラックが配合され、耐久性は劇的に向上した。それ以来、長い年月を経てもタイヤは“黒くて丸い”という極めて素朴な姿のまま進化を続けてきた。どれほど技術が飛躍しようとも、この属性から逃れられずにいる。いわば、同じ旋律を奏で続けながらも、編曲だけで新しい感動を生み出し続けている楽曲のような存在なのだ。だからこそ、性能がそろそろ飽和しても誰も責めないはずだった。

だというのに、今回デビューしたブリヂストン「RE71RZ」は、ステアリングを握る僕をハッとさせるほど進化していた。試乗を終えたあと、“タイヤはまだ進化するというのだろうか……”と呆然とつぶやきながら、思わずため息が漏れた。その空気が気持ちを代弁していたように思う。

ブリヂストン ポテンザRE71RZ(新製品)を装着したトヨタ GRカローラRZブリヂストン ポテンザRE71RZ(新製品)を装着したトヨタ GRカローラRZ

この新作はスポーツブランド「ポテンザ」の中でも、リアルスポーツタイヤの頂点に位置づけられる存在である。先代「RE71RS」の進化形という立ち位置で、最大の特徴は言うまでもなく圧倒的なグリップ性能だ。

今回、GRカローラ RZに装着し、新旧の走行フィールを比較した。舞台は筑波サーキット1000。つまり、ほぼタイムアタックである。RE71RSで3周し、ピットイン。すぐさまRE71RZに履き替えて3周。新品から新品へ――まるでスーパーGTのタイヤテストのような緊張感の中でのアタック、いや、試乗だったのだ。

すると……。

履き替えてコースに出た瞬間、発熱の早さに腰を抜かしかけた。テストは3月中旬。青空には恵まれていたものの、路面温度は決して高くない。それでも、いきなりグリップが立ち上がったことには驚かされた。恐る恐るウエービングをしたものの、その必要はない。比較的ソフト系のコンパウンドを採用したのではないかと直感し、その予感は当たっていたようだ。1周目からベストタイムを刻んだのが、その証拠である。

その後の周回でも、粘着質でありながら破綻のないグリップが続いた。まるで路面の突起ひとつひとつに指先を絡めるような感触である。ミクロの世界では、石粒や窪みをゴムが包み込みながら進んでいるのではないか――そんな空想すら浮かんだ。RE71RSが荷重をしっかり受け止めながら旋回するのに対し、RE71RZは強い磁力で吸着しているかのように路面を離さない。それでいてトレッド剛性に不足はない。アウト側のよりスリック化したパターンが効果を発揮しているのだろう。粘着質でありながら腰砕けにはならない。重い荷重を受けても破綻の兆しがないことには、素直に感心した。

◆リアタイヤの頼もしさがコーナリング性能を底上げする

ブリヂストン ポテンザRE71RZ(新製品)を装着したトヨタ GRカローラRZブリヂストン ポテンザRE71RZ(新製品)を装着したトヨタ GRカローラRZ

操縦特性で印象的だったのは、リアタイヤの頼もしさである。ステア初期から素早くコーナリングフォースを立ち上げる。そのため、フロントヘビーかつ四輪駆動の試乗車は基本的にアンダーステア傾向になるはずだ。かなり強引にコーナーへ飛び込んでも、一度もリバースステアを強いられることはなかった。先代ではタイトヘアピンでカウンターを当てる場面があったのだから、その進化は明らかである。

ブリヂストン ポテンザRE71RS(左)/ブリヂストン ポテンザRE71RZ(右)ブリヂストン ポテンザRE71RS(左)/ブリヂストン ポテンザRE71RZ(右)

ドライグリップがここまで高ければ、当然ウエット性能が気になるところだ。センターグルーブが3本から2本に減ったことで排水性に一抹の不安を覚えたけれど、実際にはウエット性能も向上しているというデータが示されている。ドライでラップタイムが1.2%短縮。60秒なら約0.7秒短縮です。混戦の予選ならポールと敗退の差になり得る。ウエットでも1.1%短縮という数字は、決して軽く見られるものではない。

おそらく浅いウエット路面では、柔軟なゴムが路面に吸着するのだろう。ヘビーレインでの挙動はこの日試せなかったけれど、いずれ再び向き合う機会を楽しみにしたいところだ。

◆アドレナリンRE005は日常域で光る軽快なスポーツタイヤ

ブリヂストン アドレナリンRE005ブリヂストン アドレナリンRE005

そして今回の発表では、「アドレナリンRE005」の存在も見逃せない。RE71RZがリアルスポーツの頂点なら、アドレナリンは日常に寄り添うカジュアルスポーツに属する。同じポテンザの血統でありながら、性格は異なるのだ。

ブリヂストン アドレナリンRE005ブリヂストン アドレナリンRE005

試乗車はホットハッチの基準ともいえるVWゴルフGTI。正直に言えば、事前の期待はそれほど高くなかった。ケーシングは大きく変えておらず、主な変更はトレッドパターンだと聞いていたからだ。そのパターンも奇抜ではなく、いわば正統派の縦横溝デザインである。しかし、そのわずかな変更が驚くほどフィーリングを変えていた。

ブリヂストン アドレナリンRE005ブリヂストン アドレナリンRE005

ステア初期の応答が実に素直である。微小舵角からグリップが立ち上がった。パイロンを並べたジムカーナスタイルのコースでは、まるで軽やかなダンサーのようにクルマが向きを変えてくれた。サッサッサとパイロンを払いのけるように駆け抜けるその姿は、足取りの軽さそのものが性能であると教えてくれた。

ブリヂストン アドレナリンRE005を装着したトヨタ カローラスポーツブリヂストン アドレナリンRE005を装着したトヨタ カローラスポーツ

これまでは、スラロームなどでラインが丸く膨らみがちになっていた。荷重移動が大きいことで、ヨイショヨイショと荷重を入れ替えながら進むうちに、動きも大きくなりやすい。少々大袈裟に表現するなら、どこかでリセットしなければ、タイミングの遅れが致命的になる。ところが新型アドレナリンRE005なら、ステアリングを握る手首を、クイックに跳ねるだけでスラロームをクリアできる。コースが緩く感じたほどである。

ブリヂストン アドレナリンRE005ブリヂストン アドレナリンRE005

アドレナリンのコンセプトは、日常の少し延長線にあるスポーツであり、通勤通学に使いながら時にはワインディングを走ることもできる点にある。だが、交差点をススッと曲がるような、日常の一瞬に、ニヤッと笑みがこぼれるようなスポーツ性を感じた。

タイヤは黒くて丸い。けれどその内側には、まだまだ無数の可能性が折り畳まれている。そう実感させられた一日だった。

《木下隆之》

木下隆之

学生時代からモータースポーツをはじめ、出版社・編集部勤務を経て独立。クルマ好きの感動、思いを読者に伝えようとする。短編小説『ジェイズな奴ら』も上梓。日本・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。「心躍るモデルに高得点を与えるつもり」。海外レース経験も豊富で、ライフワークとしているニュルブルクリンク24時間レースにおいては、日本人最高位(総合5位)と最多出場記録を更新中。

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