「未来の家は“生きた家”」MWの成田修造CEOに聞く…フィジカルAIとロボティクスが再定義する

フィジカルAIとロボティクスで住環境を再定義する「生きた家」とは?MWのCEO成田修造氏に聞く
フィジカルAIとロボティクスで住環境を再定義する「生きた家」とは?MWのCEO成田修造氏に聞く全 39 枚

最先端のAIとロボットを使って住環境を再定義する、挑戦が始まっている。

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「私たちは、建築・ソフトウェア・ハードウェアを融合させた“未来の家”をゼロから創るチャレンジをしています。コンセプトは『生きた家(Living Home)』です。あらゆる技術の進化を取り入れた未来の家はどうあるべきか。この問いに対し、ロボティクス、AI、IoTを活用して『住まいの概念』を再定義します」

そう語るのは、株式会社MW(ムウ)のCo-Founder & CEO、成田修造氏だ。

株式会社MW(ムウ)のCo-Founder & CEOの成田修造氏

このプロジェクトには同社Head of AI / Roboticsで、元エクサウィザーズCTOの浅谷学嗣氏が、Hardware Designerにはトヨタ自動車でレクサスのデザインを手がけた経験もある株式会社レフテの田中大敦氏が参画している。

株式会社MWのHead of AI / Robotics、浅谷学嗣氏
デザインを担当する株式会社レフテの田中大敦氏(右)

また、AIロボティクスの開発には、高さ4.5mの搭乗型ロボット「ARCHAX」の開発を手掛けるロボット企業 ツバメインダストリと連携し、Technical Advisorとして早稲田大学の尾形哲也氏(一般社団法人AIロボット協会(AIRoA)の理事長)を迎えている。

「MWの家」のAIロボットは天井や壁面のレールを使って、 素早く、正確、安全に家の中を移動する。「レールシステム」がひとつの鍵を握る

「住まいの概念」を再定義する「生きた家 Living Home」とは具体的にはどのようなものなのか。株式会社MWを訪ねた。

MWが掲げる「生きた家 Living Home」とは


Q.MWの「生きた家 Living Home」について教えてください

成田修造氏
我々は、家や住環境とフィジカルAIが融合していく未来を創造していこうと、真剣に取り組んでいます。
現在の住空間は1900年代前半に形成されたものです。産業革命や技術革新によって、鉄が大量生産され、建築にコンクリートが利用されるようになり、大量の物流やサプライチェーンが浸透する社会に合わせて最適化された住環境が生み出されました。
その後、大きな革新としてはエレベータが登場し、高層階の建物が建築されましたが、住宅の空間自体に大きな変革は生まれませんでした。

AIやIoT、Amazon AlexaやGoogleアシスタントといったスマートホーム技術は登場しているものの、一般家庭に広く普及しているとは言い難いのが現状です。
私たちは、急速に進化しているAIやロボティクスなどの技術を住宅に組み合わせることで、これまでにない住環境を実現できるのではないかと考えています。その発想から事業を展開しています。

Q.家庭用AIロボットを開発し、販売するのでしょうか?

成田修造氏
私たちのアプローチは、家庭用のAIロボット単体を開発して売るというアプローチではなく、家の中にAIロボットを組み込むアプローチをとります。
最近は急速にヒューマノイドが注目されていますが、本当にヒューマノイドが家庭に望まれている姿なのかというと疑問です。そこで、家庭の中の様々な作業に最適化されたデザインのAIロボットを開発していこうと思っています。
私たちは建築家集団でもあります。MWとして「家そのもの」をデザイン、建築し、販売していきます。

田中大敦氏
施工も自分たちで行い、内装も自分たちで作ります。家の中にはたくさんのセンサーを組み込み、データを連携させて、家自体を知能化していきます。例えば、居住者をセンサーで検知することはもちろん、睡眠状態を解析して健康を管理できるように拡張したいと思っています。家にはAIやロボットがいて、AIと音声で対話したり、ロボットと音声でやりとりすることを考えています。

株式会社レフテの田中大敦氏

家電ごとにリモコンがあるのでなく、MWの家にはスマホやタブレットが1台あるだけ。それで家の機器類を制御したり、あるいは居住者は制御をする必要もない、家に話しかければすべてやってくれるという住環境を実現します。

Home Control Apps。入居時からいつでもどこでも家電が動かせる、スマホ・タブレットアプリを開発中。スイッチやリモコンのない洗練された空間を実現する

MW bot (ムウボット)が家事を代行


成田修造氏
MWの家のコンセプトは、知能化したAIロボットとシステムを連携させて、煩わしいと感じる家事を家が代行します。私たちはこれを「生きた家 Living Home」と呼んでいます。

家そのものが機能を持ち、情緒を持ち、ユーザーの感覚や状況などを理解しながら、先回りしてロボットが動いたり、あるいは人がいない時間に、自律したAIロボットが散らかった部屋を片付ける、そんな未来を創っていこうと思っています。

浅谷学嗣氏
通常の家では、キッチンの作業スペースの高さや洗濯機の位置など、人が作業しやすいように最適化されていますが、MWの家ではAIロボットが作業するのに最適な環境も考えてデザインします。
人が中心の環境はAIにとってはカオスなので、迅速に対応できないという課題があります。例えば、ケーブルやコードなど何か躓くものがあったら、よろけたり転倒してしまうとか、棚が高過ぎて手が届かない、隙間に手が入らないなどです。

家庭内に入ってAIロボットが効率的に作業するには、このようなAIにとってはカオスな環境を、家をデザインする時点からAIロボットがタスクを作業しやすい環境に予め変えておくことが最適解ではないかと考えています。

AIロボットの開発が進行中。ロボットは天井に組み込まれたレールを使って移動する。レール自体も可動式で、タスクに応じてロボットが作業スペースに自由に移動できるように設計する。
MW bot with Nest。「MW bot」は普段は"巣"に収納されており、必要な時に現れて生活を支援する。家の中で圧迫感や怖さを感じることなくロボットと共生できる。

私たちが家のデザインからロボットやソフトウェアの開発まで、一貫して開発して提供できるメリットはそこにあると思っています。

ロボットアームも内製で開発中
ロボットアームだけでなく、ロボットハンド(エンドエフェクタ)の開発も進められている。
様々な形状のエンドエフェクタを開発中

Q.「MW bot(ムウボット)」はどんな価値を提供してくれますか

成田修造氏
すべての家事を完璧にできるロボットやシステムを目指しているわけではありません。例えば、朝起きると昨日、リビングで脱ぎ散らかした衣服が片付いてスッキリしている。カバンやタブレット等が所定の位置に移動されている。玄関の靴がきれいに揃えられている。ダイニングテーブルの食器が下げられ、食洗機に入れられていて、キッチンも片付いている。
仕事から帰宅するとベッドメイキングされて気持ちいい。洗面台では出かける前に使った歯ブラシやコップ、化粧品などが棚に片付けられていて、タオルはきれいなものに交換されている。
最初のフェーズでは、居住者が視覚的に快適だと感じる部分をまずは自動化していこうと思っています。

運搬はヒューマノイドより専用機「MW Cargo」という発想


成田修造氏
家庭内では物を運ぶ運搬作業もたくさんあります。例えば、ヒト型ロボットがダンボール箱や洗濯物、ゴミ袋を手に抱えて移動する姿が理想なのかと言うと、そうとも言えません。
それよりも運搬は運搬ロボット「MW Cargo」に任せる方が効率的だし自然でしょう。
例えば洗濯物を畳む作業はロボットがやって、畳んだ洗濯物をベランダや庭に運搬する作業は「カーゴ」ロボットがやる、というAIロボットの連携です。その実現のためにAI運搬ロボットも開発中で、この「カーゴ」も天井のレールを使って移動します。

MW botと協働する運搬システム「MW Cargo」。買い物袋・衣類・ゴミなど様々なものを乗せてレールシステムで運び、家事の負担を軽やかにする。

成田修造氏
朝、あわただしく準備して出かける人は多いと思いますが、出かけた後にAIロボットがベッドメイキングをして、洗面所に出しっぱなしの歯みがきセットやゴミを片付け、タオルを整頓して洗面台を掃除、テーブルに残った食器類を仕分けして食洗機にいれ、洗濯カゴの衣服を洗濯機に入れ、散らかった玄関の靴を整理整頓する。
ホテルに宿泊して、朝出かけて帰ってくると、ベッドメイキングされて部屋がきれいに片付いていて、清潔なタオルに入れ替わっている・・そんな気持ちがいい毎日を自宅でも実現できると思っています。

最終的にはAIロボットが料理もする環境を目指しています。

AIロボットはどう育てるのか 模倣学習×強化学習×データファクトリー


Q.AIロボットはどのように学習するのですか
 

浅谷学嗣氏
AIロボットの学習については、最初は遠隔操作で人がやってそのデータを蓄積していきます。模倣学習です。そのデータをシミュレーション環境に展開して、様々なパターンを自動生成してAIを強化学習し、高精度なモデル化を実現していきます。

いわゆるVLA(Vision-Language-Action)型のロボット基盤モデルと親和性が高い「フィジカルAI」のアプローチをとる。

膨大なデータを蓄積する必要があるので、複数のロボットを設置したデータファクトリーを設立する予定です。

MWのビジネスモデル、住宅販売、マンション・リノベ、住宅OSの構築

成田修造氏
私たちはハウスメーカーであり住宅販売会社でもあるので、最初の3年ぐらいは「AIロボットやICTを組み込んだ住宅」そのものを販売します。特に戸建て住宅です。
その後のプランは複数あります。ひとつは各戸にAIロボットを装備した小型のMWマンションを自分たちで創って販売していきます。分譲だけでなく賃貸の物件も用意します。もうひとつはリノべーションによってAIロボットを装備したMWの家に改装するサービスの提供です。

そして、もうひとつのグランドビジョンとして「Android OS」のように、デファクトスタンダードとして、このOSやエコシステムをマンションデベロッパーやハウスメーカーなど各社にプラットフォームとして提供したいと考えています。

【マイルストーン】
2026年4月 バイラテラル制御を前提にしたロボット搭載型トレーラーハウスデモをリリース予定
2027年4月 AIによる自律制御を前提にしたロボット搭載の木造住宅モデルルームとデモをリリース予定
2028年X月 MW bot Home を販売開始予定

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ヒューマノイドは競合か、協働か MWが描く家庭内ロボットの役割分担


米国のTeslaやFigure、中国のUnitreeやAgiBot等が、家庭用の汎用ヒューマノイドを軸に開発している中で、MWは“住宅側を変える”という異なるアプローチをとる。
MWにとってこれらヒューマノイドは競合になるのか、それとも連携するデバイスのひとつになるのか?

成田修造氏
競合であり連携デバイスでもあり、半々の可能性があると考えています。はっきり言えることは、現時点でMWが二足歩行のフルヒューマノイドを開発する考えは全くありません。

仮に60~70平米の日本スタイルの家に、ヒューマノイドが入ってくるのは大きな圧迫感を伴うと考えています。さらには転倒リスクや床や壁を傷つける可能性なども考慮する必要があります。
また、タスクの実効性(実行可能で成果につながる状態)にも疑問があります。例えば、ベッドメイクひとつとっても、ヒューマノイドが高精度に作業するのはとても難しい。一方、天井からアプローチする「MW bot」にとってはそれほど難しい作業ではありません。
ダイニングテーブルを片付けるタスクでも、ヒューマノイドは家具や障害物を避けて移動しなければならないし、大切なものを踏んづけてしまうリスクもあります。天井をレールで移動できる「MW bot」は効率的にリスクなく移動し、片付けのタスクを実行することができます。
これらを考慮すると、家庭内にヒューマノイドが求められている姿なのか、と懐疑的です。ただ、仮に将来、劇的にヒューマノイドのコストが下がり、家事の多くを汎用的にこなすことができるようになったとしたら、私たちは連携する方法を選択すべきだと考えています。

Q.「MW bot」は、異なるフロアを含めて家中を移動できることを想定していますか。

田中大敦氏
「MW bot」は天井に張り巡らせたレールを使って移動します。レールは格子状に張り巡らせることでタスクを実行するのに最適な場所に自由に移動できます。また、レール自体も動かすことができるようにすれば更に自由度はあがります。なお、天井のレールは目立たないようにデザインする予定です。

成田修造氏
テスラ等がビジョンとして描いているとおりに、ヒューマノイドが年間で数万台から数十万台規模で生産される時代が来るとしたら、価格は劇的に下がるでしょう。私たちのAIロボット付き住宅も価格はおそらく徐々に下がっていきます。ただ、私たちはヒューマノイドを否定するものでもありません。「MW bot」が得意なタスクと、ヒューマノイドの得意なタスクを、それぞれのロボットが役割分担を決めて協働することも可能です。敵対するものではありません。

Q.「MW bot」の価格感を教えてください。

成田修造氏
住宅の購入価格はどんどん上がっています。8~9000万、1億円超という声も聞こえてきます。私たちはまず富裕層やパワーカップルに訴求していきたい。そうなると、建設費用全体に占めるロボティクス価格の割合はそれほど大きくならないと見積もっています。そうなると、費用はそれほど上乗せせず、朝起きたり、帰宅したときに家中が片付いていて快適な空間が提供されている、UXが良いことが実感できれば、MWの家を選ぶ人も多いのでないか、と想定しています。

Q.フィジカルAIの取り組みについて、再度詳しく聞かせてください

浅谷学嗣氏
AIロボットの知能化については、模倣学習や強化学習を活用します。π0(パイゼロ)やNVIDIAなどいろいろなロボット基盤モデルで学習し、ファインチューニングをした上で、当社に最も有効なプラットフォームやエコシステムを使って知能を高めていく検証を行っています。

すでにリーダー/フォロワーのシステムでデータ収集を始めていて、2026年5月から「データ収集ファクトリー」を設置して稼働させます。そこでは数十台規模のロボットを用いて膨大な学習データを収集していく仕組みを確立します。

リーダー/フォロワーのシステムを開発中。模倣学習から大規模データ収集を行う
こちらもリーダー/フォロワーの模倣学習のデータ収集システム

家庭用の汎用ヒューマノイドか、AIとロボットを含めた住宅の再定義か。
フィジカルAIの実装競争は、「ロボットを進化させるのか、それとも住環境を変える革新か」という分岐点に差し掛かっている。MWの挑戦は、後者による解を提示している。

トレーラーハウスに「生きた家 Living Home」のデモ環境を構築

成田修造氏
ロボットを含めた住環境の研究開発を進めていますが、私たちのコンセプトや技術を実際に見て体験していただくために、移動式のトレーラーハウスの中にデモ空間を作ろうと考えています。30平米程度ですが、小さなホテルやロッジをイメージした家で、実際にロボットが動き、タスクを実行する「小さいMWの家」を創ります。

約30平米のトレーラーハウスにMWの家のデモ環境を構築。イベントや展示会など、どこででもMWの家が体験できるようにする

トレーラーハウスで体験していただくデモの内容としては、玄関に置いた買い物袋を「カーゴ」がキッチンに運び、アームロボットが買い物袋から購入した製品を取り出し、製品を識別して仕分けし、要冷蔵のものは冷蔵庫に入れ、そうでないものは棚や所定の位置に収納するというタスクを行うものを想定しています。

このような環境がトレーラーハウス内に組み込まれる予定

これをイベントや展示会の会場に移動していって実際に体感していただこうと思っています。トレーラーハウスはこれから急ぎ開発しますので、デモ環境が整ったら、是非また見て体験しに来てください。


ロボスタでは「MWが語る 住宅 × フィジカルAI × ロボティクス最前線」セミナーを開催

ロボスタオンラインセミナーとして「人とロボットが共生するこれからの住環境 MWが語る 住宅 × フィジカルAI × ロボティクス最前線」を、2026年5月15日(金)に開催。先着50名様を無料ご招待します。

フィジカルAIやヒューマノイドが世界的に話題になるなか、今後問われるべきもののひとつに「ロボットやAIが溶け込む住宅とは何か」という、近い未来に起こり得る住環境の再設計があります。
セミナーでは株式会社MWの成田修造氏を迎え、住宅そのものにレールやロボットを組み込む「先進の住環境デザイン構想」や「実装のロードマップ」を紹介。ロボットを家具や建具など、住環境の一部である存在として捉え、フィジカルAIやセンサー、IoTを基盤に、人とロボットの動線を最適化する住宅設計について講演して頂きます。
オンラインセミナーの詳細とお申し込みはこちらです。

フィジカルAIとロボティクスで住環境を再定義する「生きた家」とは?MWのCEO成田修造氏に聞く

《神崎 洋治》

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