トヨタ自動車は5月7日、愛知県豊田市・岡崎市にまたがる研究開発拠点「トヨタ テクニカル センター 下山」(TTC-S)において、「もっといいクルマづくり」の現場を公開した。
あわせて、同拠点で開発されたレクサスの新型車『TZ』を発表。さらに、ヘリコプターを活用した移動体験の実証や、豊田市と連携した防災訓練も実施した。
■「道がクルマをつくる」 30年の構想が結実
TTC-Sの原点は、マスタードライバーでもある豊田章男前社長(モリゾウ)の「ニュルブルクリンクでしかできないことが、なぜ日本でできないのだろう」という問いにある。
その背景には、テストドライバーの故・成瀬弘氏がニュルブルクリンクで示した「道がクルマをつくる」という言葉があった。厳しい道を走り、壊れた箇所を見つけ、その場で直し、また走る。このサイクルを繰り返すことでクルマを鍛えるという開発思想を日本で実現する場として構想されたのがTTC-Sだ。
構想開始から約30年、2018年4月に建設着工し、2024年3月に全面運用を開始した。
■壁のないワンフロア設計で約3000名が連携
TTC-Sの最大の特徴は、壁のないワンフロア設計により、デザイン・設計・評価・整備といった一連の開発サイクルを一拠点内で完結できる点だ。約3000名に及ぶ多様な領域のメンバーが同じ空間で連携し、機能横断で一体となって開発に取り組む環境を実現している。
■主な施設とコース
「Toyota Technical Center Shimoyama」
第3周回路は、ニュルブルクリンクを参考に4分の1規模で設計された全長約5.3km、高低差75mのカントリー路。道づくりにはテストドライバーも参画し、造成に10年を要した。
ダートコースは、モリゾウの「もっとクルマを鍛えたい」という思いから計画外で追加造成。モリゾウ自身が横転するまで走り込んだ厳しい路面環境で、耐久評価やGRパーツ開発にも活用される。
整備フロア。レクサス『TZ』のプロトタイプ整備フロア(1階)は最大40台を収容。テストコース直結の環境でメカニックがその場で修理・調整を実施する。
企画・設計部門フロア(2階)は、エンジニアがデータを分析し、改善策を検討。ガレージの真上に位置し、即座に連携できる。
デザイン部門フロア(3階)は、クレイモデリングからデジタルレビューまで、造形をつくり込むプロセスを一体で行える空間。
レクサスカンパニーとGRカンパニーの事業・開発拠点が同じ場所に共存し、異なる価値を追求するチームが互いに刺激し合いながらクルマづくりを進化させている。
■レクサス初のEVで3列シートSUV「TZ」を発表
レクサスの新型EV『TZ』レクサスTZは、「道がクルマをつくる」という思いのもとTTC-Sで生まれたモデルだ。すべての乗員が笑顔になれる上質な移動空間「Driving Lounge」をコンセプトに、快適な空間とレクサスらしい走りを高次元で融合したレクサス初のEVの3列シートSUVとなる。
開発にあたっては、TTC-Sのテストコースでエンジニア・デザイナー・メカニック・テストドライバーが一体となり、「走る・壊す・直す」のサイクルを幾度も重ねて走りと品質を磨き上げた。
■ヘリコプター実証と防災訓練で地域と共生
エアロトヨタ社の機体を活用ヘリコプター新型TZの発表とあわせ、将来の空のモビリティ実現に向けた取り組みとして、エアロトヨタ社の機体を活用したヘリコプターによる移動体験の実証を実施。豊田市と連携した防災訓練も行った。
この取り組みの背景には、トヨタ創業者・豊田喜一郎が1923年の関東大震災で「道がなくても人を運べるモビリティ」の必要性を痛感し、1943年にヘリコプター試作機を完成させた歴史がある。
TTC-Sが位置する豊田市内の山村地域は、南海トラフ地震や激甚化する風水害による集落孤立リスクが高まっており、今回は災害時の孤立集落対策としてヘリコプターを活用した物資運搬訓練を実施している。




