オラフを支える技術とは? ディズニーのフィジカルAI…Humanoids Summit Tokyo 2026 講演

ディズニー・リサーチ「ロボットではなくキャラクターを作るエンターテインメント向けフィジカルAI」 BDX Droidやオラフを支える技術とは
ディズニー・リサーチ「ロボットではなくキャラクターを作るエンターテインメント向けフィジカルAI」 BDX Droidやオラフを支える技術とは全 8 枚

2026年5月28日「Humanoids Summit Tokyo 2026」において、ディズニーリサーチのMoritz Baecher氏が講演し、テーマパークで活躍するロボティック・キャラクターを支える技術基盤を紹介した。Disneyが目指しているのは、産業用ロボットや労働力としてのヒューマノイドではなく、映画やアニメのキャラクターを現実世界で「生きている存在」として表現すること。
その実現に向けて、共通ロボット基盤、強化学習、Sim-to-Real、独自シミュレータなどを活用しながら、「キャラクターを現実へ連れてくる」取り組みを進めている。

【画像全8枚】

Moritz Baecher氏, Director, Zurich Lab at Disney Research.

■創るのは「ロボット」ではなく「キャラクター」

Disney Researchが開発するロボティック・キャラクターの代表例として紹介されたのが、スター・ウォーズに登場するような「BDX Droid」や、『アナと雪の女王』シリーズに登場する「オラフ」。

これらは自律ロボットの開発と実装ではなく、テーマパークを訪れたゲストと交流し、その場で物語体験を生み出す「生きたキャラクター」を求めている。Moritz氏は、「私たちはロボットを見せたいのではない。キャラクターを見せたい」と強調した。来場者にとって重要なのは機械の性能ではなく、本当にそのキャラクターが目の前に存在していると感じられることだという。

また、BDX Droidは映画からテーマパークへ展開されただけでなく、パークで生まれた新たなキャラクターが再び映像作品へ取り込まれるなど、映画と現実世界を往復する存在になっていることも紹介された。

■数か月で新キャラクターを実装

Disney Researchは新しいキャラクターを数か月単位で実装することを目標にしている、という。
そのため、アクチュエータやセンサー、バッテリー、制御基板、NVIDIAの超小型AIコンピュータ「Jetson」ベースの計算基盤などを共通モジュール化し、キャラクターごとに再利用している。オラフのような特殊な外観を持つキャラクターでも、多くの構成要素は既存資産を活用することで開発期間を短縮した。

一方で、目や口、表情機構などキャラクター性を生み出す部分は専用設計し、「共通化」と「個性」の両立を図っている。

■歩き方はプログラムしない

講演で最も印象的だったのは、Disneyが歩行、歩き方をプログラミングしていないという説明だ。
シミュレーション環境の中で何千体もの仮想ロボットを並列学習させ、強化学習によって歩き方そのものを獲得させる。今回紹介された例では、4,096体のシミュレーションを同時実行し、現実世界なら何年もかかる学習を短期間で実現した。

特にオラフでは、「転ばない」だけでは不十分。雪だるまであるオラフは、重い足音を立てて歩いてはいけない。そこで学習時に衝撃を減らす報酬を追加し、より静かで柔らかな歩行を実現したという。

さらに、AIの学習ではモーターの発熱を抑える動作に対して報酬も導入し、真夏の屋外環境でもキャラクターらしさを維持できるよう工夫しているとした。

■Sim-to-Realと基盤モデルの挑戦

Disney Researchはシミュレーションで学習した動作を、そのまま実機へ適用する「Sim-to-Real」にも力を入れている。
そのために、アクチュエータのバックラッシュや摩擦、個体差、温度変化、経年劣化までシミュレータへ反映。学習済みモデルを実機へ転送した瞬間から自然な動作を実現している。
また、複雑なキャラクターロボットを強化学習できるシミュレーション基盤「Kamino」も独自に開発。ケーブル駆動や複雑なリンク機構など、従来のロボットシミュレータが苦手とするキャラクターロボット特有の構造を再現できるという。

■Disney独自のシミュレーター「Kamino」

Disney Researchは、複雑なキャラクターロボットを効率的に開発するため、独自のシミュレーション基盤「Kamino」も開発している。

Moritz氏によると、一般的なロボットシミュレーターは、モーターと関節で構成された比較的シンプルなロボットを前提としている。しかしDisneyが手がけるキャラクターロボットは、巨大な頭部や細い首、複雑なリンク機構、ケーブル駆動機構、表情機構などを備えており、従来のシミュレーターでは正確な再現が難しいという。そこで開発されたのがKaminoだ。Disneyは強化学習によってロボットに歩行や動作を習得させているが、その学習環境としてKaminoを活用している。

講演では、オラフのような特殊な体型を持つキャラクターについても、シミュレーション上で「転ばない」「静かに歩く」「頭部を安定させる」「過熱を防ぐ」といった条件を学習させていると説明した。

さらに、人間のインターネット規模のモーションデータをロボットへ転写する研究も進めている。将来的には、多様なキャラクターやロボットへ動作を適応できるFoundation Modelの実現も視野に入れている。

同氏は、こうした技術はテーマパーク向けキャラクターロボットだけでなく、将来的には屋外作業ロボットやヒューマノイドにも応用できると述べ、「キャラクターロボット開発を通じて、ロボティクス全体を前進させたい」との考えを示した。

Disney Researchが目指しているのは、人間の代わりに働くロボットではなく、人々が感情移入できる存在としてのロボットだ。エンターテインメントの世界で培われたフィジカルAIの技術は、今後のヒューマノイド開発にも新たな視点を与えそうだ。

ディズニー・リサーチ「ロボットではなくキャラクターを作るエンターテインメント向けフィジカルAI」 BDX Droidやオラフを支える技術とは

《神崎 洋治》

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