名車『Z1』のDNAを現代に受け継ぎ、ネオクラシック界の絶対王者として君臨し続けているカワサキの『Z900RS』。その2026年モデルの国内試乗会へと向かった。
【詳細画像】カワサキ Z900RS Black Ball Edition
結論から言おう。今回の変更は、ただのカラーチェンジや排ガス対応といったお茶を濁すようなマイナーチェンジではない。走りの質を根底から引き上げる、まさにフルモデルチェンジ級の大進化を遂げていたのである。
◆見た目はレトロ、中身は最先端の「電脳てんこ盛り」
カワサキ Z900RS Black Ball Edition
実車を前にして、まず目を奪われたのが新設定された「Black Ball Edition(ブラックボール・エディション)」だ。かつてのZ1を彷彿とさせる漆黒のカラーリングは、光の当たり方で妖艶な表情を見せる。レトロスポーツとしての凄みと高級感が完璧に表現されており、この佇まいだけで乗り手の所有欲をビンビンに満たしてくれる。
しかし、本当に驚くべきはその中身だ。
クラシカルな外観とは裏腹に、今回からついに電子制御スロットル(ETV)が採用された。それに伴い、6軸IMU(慣性計測ユニット)で車体姿勢を緻密に制御する「KCMF」や、待望のクイックシフター(KQS)、クルーズコントロールまで一挙に網羅している。
思い返せば、2017年に初期型がデビューした際、大分の「オートポリス」で初試乗した筆者は、その過激な走りっぷりに「ネイキッドの形をしたスーパースポーツだ」と評した記憶がある。今回の新型はその尖った長所はそのままに、現代の最先端スポーツへと見事なアップデートを遂げているのだ。
◆右手と後輪が直結! 直4ハウリングに痺れる
カワサキ Z900RS Black Ball Editionさっそくコースインして驚いたのが、ETV(電スロ)によるスロットルレスポンスの滑らかさである。従来のワイヤー式で時折見られた、開け始めの「ドン突き」のようなシビアさが完全に消え去っている。低速域でのギクシャク感がなく、タイトコーナーからの立ち上がりでも、躊躇なく右手を大きく開けていけるのだ。
これには、6軸IMUで制御されるKCMFの存在も大きい。バンク中でのブレーキ力やトラクションを電脳が安全圏でコントロールしてくれるという絶大な安心感があるからこそ、ライダーは気持ちに余裕を持ってライン取りに集中できる。今回はサーキット試乗であったが、これなら街中の交差点やワインディングでも、最高に気持ちいい走りを堪能できるはずだ。
カワサキ Z900RS Black Ball Editionそして、この扱いやすさの先に待っているのが、最高出力が従来から5psアップして116psへと到達した直列4気筒エンジンの真価である。
中回転域を過ぎたあたりから、カワサキ「Z」特有の図太いハウリングの効いた咆哮とともに一気に加速ゾーンへ突入する。高回転域におけるパワーの盛り上がりと、レブリミットに向けてさらに伸びていく上昇感は明らかに従来型を上回る。これぞ直4全開加速! 官能的なエキサイティングが全身を突き抜けていく。文句なく最高に気持ちいい。
◆コンパクトかつスポーティに馴染むライポジ
カワサキ Z900RS Black Ball Edition地味に大きく変わったのがライポジだ。ハンドル幅が50mm狭くなり、高さも38mm低くなった。最初に跨ったときに「あれ、バイクが小さくなった?」と勘違いしたほどで、従来の大柄なライポジからすると、だいぶコンパクトかつスポーティに馴染む。
個人的には、昔ながらのスーパーバイク乗りのように、肘を張ってワイドハンドルで捻じ伏せる雰囲気も好きであったが、多くのライダーにとっては新型のほうが自然にフィットして扱いやすいはずだ。
カワサキ Z900RS Black Ball Editionシート高は10mm高くなったが、ウレタンの厚みが増しただけなので、足着き性はほぼ変わらず、ロングツーリングでの快適性が向上しているのも嬉しいポイントである。
新型Z900RSは単なる雰囲気を楽しむレトロモダンに留まらない、真のスポーツバイクとしての凄みをさらに極めた1台に仕上がっていた。“漢カワサキ”のブレないバイク作りを、ぜひ皆さんにも体感してほしい。
カワサキ Z900RS Black Ball EditionとZ900RS SE■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
ハンドリング:★★★★★
扱いやすさ:★★★★
快適性:★★★★
オススメ度:★★★★★
佐川健太郎|モーターサイクルジャーナリスト
早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。(株)モト・マニアックス代表。バイク動画ジャーナル『MOTOCOM』編集長。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。




