“整備難民”を防ぐ…トヨタモビリティパーツ岐阜支社が地域部品商とも手を組み、整備事業者をバックアップ

岐阜の「整備難民」を防ぐ …トヨタモビリティパーツ岐阜支社が地域部品商とも手を組み、優良な整備事業者を徹底バックアップ…TMP岐阜パートナーズクラブにみる理想的な “ 地域連携 ”
岐阜の「整備難民」を防ぐ …トヨタモビリティパーツ岐阜支社が地域部品商とも手を組み、優良な整備事業者を徹底バックアップ…TMP岐阜パートナーズクラブにみる理想的な “ 地域連携 ”全 10 枚

若手不足と高齢化が進む中で、自動車の整備や鈑金塗装を行う事業者は、電子制御化や自動ブレーキ搭載義務化などによる高度な技術対応と設備投資の壁に直面している。

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先行き不透明な中東情勢による納入不安やコスト高の長期化は、整備・鈑金塗装事業者の経営を圧迫し事業撤退が加速すると、愛車を預ける場所がなくなったカーオーナーは「整備難民」になってしまう。

こうした事態を避けるべく、地域で優良な整備事業者に寄り添って課題解決を支援する取り組みが、岐阜県で着実な成果を上げている。自動車関連部品・用品の卸売業・トヨタモビリティパーツ株式会社岐阜支社(中西直孝支社長/TMP岐阜支社)が旗振り役となり、2022年2月に発足された『トヨタモビリティパーツ岐阜パートナーズクラブ』(TMP岐阜PC)の活動だ。

当編集部では、TMP岐阜PCの画期的な取り組みに注目し、2023年夏に徹底取材レポートを公開した。それから3年経過した2026年7月現在においても、TMP岐阜PCの取り組みは全国的にみて類を見ない画期的な地域連携モデルとして継続されている。部品サプライヤーと顧客という枠を超えた “ 共生関係 ” へと進化を続けるTMP岐阜PCの最新の活動状況をお伝えしたい。





実利と活気を生み出す活動へ

3年前の取材時、TMP岐阜PCが掲げていたのは、技術情報提供などの支援を通じて、岐阜県内のトヨタ車オーナーの信頼を獲得する “ 品質の高いサービスを通じて地域に信頼される整備事業者 ” を増やし、地域全体の自動車アフターサービスを継続的に担保するという理念であった。2026年現在、その理念は、会員工場の経営者層や現場メカニックたちに、明確な “ 実利 ” をもたらす地域連携として定着している。

活動の核は、TMP岐阜支社 技術支援グループの伊神裕介氏と石田貴大氏が定期的に会員工場へ足を運び、現場の困りごとを対面で聞き取りながら、密にコミュニケーションを深めて課題解決に向けたサポートを続けている点にある。

左から、石田貴大氏(外販部 外販企画室 技術支援グループ 2級自動車整備士)と伊神裕介氏(外販部 外販企画室 技術支援グループ 2級自動車整備士)。二人はTMP岐阜PC技術支援の専任スタッフとして、会員工場への巡回訪問や課題のヒアリング、技術研鑽会の企画などを行っている

2023年から始まった「技術研鑽会」や、2025年から新たにスタートした「工具安全点検」の効果も大きい。スキャンツールを活用した故障診断や配線図の使い方、HVバッテリー脱着方法など、現場ですぐに活かせる実践的なテーマ設定で、座学や実技の研修が行われている。昨年初の試みとして会員工場の経営者層が参加する「代表者交流会」が企画され、岐阜エリア以外で、DX導入など先進的な取り組みで効率化・省力化を実現している優良な整備工場の見学会も行われている。

これらの取り組みは、技術支援グループの伊神氏と石田氏が、会員工場を個別訪問してヒアリングしてわかったニーズを聞き取って研修カリキュラムを企画されている。本年度(2026年4月~2027年3月)は、販促支援動画撮影・製作や、エアコンガス充填講習、大型機器点検研修、代表者交流会、技術研鑽会などを予定。会員工場が本当に学びたい研修内容のため活気に満ちた学びの場となっている。

高額な設備のレンタルやオリジナルツールも開発

先進安全自動車の特定整備・電子制御装置整備を自社で対応したい整備事業者にとって、最初のハードルとなるのが、車種ごとに異なるエーミング用ターゲット(反射板などのボード)を揃えるための設備投資と保管スペースの確保だ。

この課題を、TMP岐阜支社は徹底的にサポート。複数の自動車メーカーの車種に対応できるように多数のターゲットを自社で保有し、会員工場には月額500円(年間6,000円)のサブスクリプション方式でツール・レンタルサービスを提供。毎日の部品配達(1日2回)時にターゲットなどを会員工場まで届け、作業が終われば回収するフローを構築している。

トヨタモビリティパーツ岐阜支社の拠点内に設けられた「エーミング作業場」は、エアコンが導入され、平滑な床面にガイドラインが引かれており、パンタグラフ式リフトが導入されている

これにより、会員工場は初期投資や保管場所、ツールのメンテナンスの負担もない。TMP岐阜支社にエーミング作業を丸投げするのではなく、多彩な車種のエーミング作業を内製化しやすい支援環境を整え、会員工場の自立を促す仕組みになっている点がポイントだ。

TMP岐阜PCの活動は、整えられた環境に甘んじることなく「ムリ・ムラ・ムダ」を排除して、生産性と品質を向上させるトヨタの「改善(カイゼン)」の思想が取り入れられていることがわかる。

3年前は10社だった会員数が、2026年7月現在は14社に拡大している。特筆すべきは、TMP岐阜支社の競合とも言える地域部品商と取引している整備工場(部品商2次店)が、会員として加入している点だ。

商圏エリアの垣根を超え、地域部品商と友好的に連携することで、会員工場への支援環境を充実させ、会員数拡大につなげている。このタッグの組み方は、TMP岐阜支社と地域部品商との深い信頼関係があってこそであり、全国的にも稀な画期的な取り組みと言えるだろう。

今回の取材では、中西直孝支社長をはじめとするTMP岐阜支社メンバーに加え、TMP岐阜PC二代目会長1社、新会員2社、TMP岐阜支社の支援でオーダーメイドのツールスタンド(からくり改善ツール)を初導入した既存会員への訪問取材を行った。

【TMP岐阜支社】目指すのは、岐阜県全体の整備の質の底上げ

「単に、会員数を増やすことが目的ではありません。新規会員エントリーは弊社だけの判断ではなく会員工場様の推薦が必須で、会員全社の賛成が必要という入会基準を設けています。

入会のルールは発足時から変わっていませんが、会員様の現場の声を、弊社だけでなく連携パートナーの地域部品商の皆様にもフィードバックしています。岐阜県内の整備工場、地域部品商、TMP岐阜支社の3者がWin-Winで成長し、岐阜エリアのカーオーナー様を整備難民にしないインフラを作るのが使命だと思っています」(中西支社長)

TMP岐阜支社は、2030年に向けた中長期ビジョンとして、会員数40社(TMP直接の得意先20社+部品商の2次店20社)」を掲げている。

トヨタモビリティパーツ岐阜支社 中西支社長

【新任会長の視点】他社に勝つことではなく、自社を磨く

「私たちが勝つべき相手は、同業他社ではありません。価格競争ではなく、目の前のお客様といかに固い信頼関係を築くことであり、そのためには自社の研鑽が欠かせません。TMP岐阜支社は、整備工場で生じがちな情報格差を埋め、最先端の技術を『橋渡し』してくれる、とても頼もしいパートナーです。

会長の任期期間となる2年間で、「この組織がより高度な技術、マネジメント、マーケティングのスキルを習得し業界と社会貢献の一助となればと思っております」

2026年4月から2代目の会長に就任した、株式会社オートラインの佐藤敏則社長は、クラブが目指すべき方向性と課題を見据えながら、任期2年で実現したいビジョンを語ってくれた。

左から、株式会社オートライン 佐藤孝昭取締役と、TMP岐阜PC 新任会長の佐藤敏則代表取締役

また、ご子息の佐藤孝昭取締役は自動運転時代を見据え、一級自動車整備士の資格取得に向けて日々勉強を続けている。TMP岐阜PCのリーダー企業が技術向上の手本を示すことは、他の会員工場のレベルアップにも繋がっていくことだろう。

クラブ活動3年目に完成となった、TMP岐阜PC 認定店 会員証

【新会員の視点】情報の入手やレンタル活用で現場の自立を実感

2025年4月に加入した株式会社松浦自動車興業の松浦宏樹代表取締役は、加入1年目で確かな手応えを感じており、次なるステップアップも見据えている。

「短時間で手早く入手するのが難しい整備情報を、TMP岐阜支社の技術支援グループが迅速に調べて教えてくれることで、現場のタイムロスが劇的に減りました。正確な情報を得られることで、若いメカニックたちだけで整備を完結できるケースが増え、彼らの自立に繋がっています。

また、高額な設備を自社で抱えずにタイムリーに活用できるツールのレンタルは、小規模な弊社にとって、本当に大きな恩恵となっています」と、松浦代表は想いを語ってくれた。

さらに、今後への期待について「一部の複雑な作業は、外注パートナーを頼っているので、今後はそういった部分をできるだけなくして自社内で完結する『100%内製化』を実現できるようなスキルを身につけられる研修を企画してもらえたら本当にありがたいです。

自社が、最新の整備作業に対応できることを、地域のお客様に知っていただくための店舗紹介動画やSNS活用、集客に直結するサポート、さらにはヘッドライト磨きなど車検時に提案しやすいメニューや用品などを増やしていけるように、TMP岐阜支社との連動を強めていきたいです」と、松浦代表は率直な思いを語ってくれた。

TMP岐阜PCに、2025年4月に加入した株式会社松浦自動車興業の松浦宏樹代表取締役

【新会員の声】現場の安心感が技術力を引き上げる

地域部品商からの紹介で2025年7月に加入した有限会社川瀬モータースはTMP岐阜支社と直接取引がないため、「他の会員工場と同じような支援が受けられるのか最初は不安だった」と川瀬由美代表取締役は振り返るが、現在は、大いにさまざまな支援を活用している。

「早いスピードで整備作業(電子制御装置整備)が高度化し続けている状況のため、経験を積んでいるメカニックでも、自身の判断が本当に正しいのか不安になります。そういった時に、TMP岐阜PCに相談すれば正確なデータを得られる。これが本当に大きくて、確かな “ 後押し ” となり、現場の若いメカニックたちが自信を持って作業できるようになりました。自社で最先端の整備を対応するための内製化の土台ができました。

また、少人数で集中できる研鑽会はピンポイントで学びたい技術を修得できるので、若手たちが自発的に『次はこれが知りたい、これをやりたい』と熱心に取り組む姿勢になった。これには本当に驚きましたし、嬉しかったですね」と、川瀬代表は笑顔を見せる。

クラブへの加入が、現場の若手メカニックたちのモチベーションを大きく引き上げる起爆剤になっていることがわかる。その上で、川瀬代表は、今後の課題やTMP岐阜PCに期待することも話してくれた。

「技術の自立に加え、今直面しているのは『一般ユーザーの新規獲得』という課題です。都心部だけの話ではなく、ネットで修理工場を探して自社に来店いただいた新規のお客様が増えています。

今後はエンドユーザーがネット検索した際に、自社が選ばれるような具体的なWEB集客やマーケティング支援を、TMP岐阜PCに強く期待しています。また、外注費が高額になりやすいDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)の洗浄クリーニングや、リビルト品(再生部品)を内製・メニュー化できるようなノハウを提供していただけたら本当にありがたいです」

地域部品商からの紹介で加入した有限会社川瀬モータースの川瀬由美代表取締役

株式会社増田カーサービスが初導入した「からくり改善ツール」

今回の取材では、TMP岐阜PCが取り組む新展開として、会員工場の作業ピット内の効率化に貢献するオーダーメイドの移動型ツールスタンド(からくり改善ツール)を導入した株式会社増田カーサービスを訪問した。

増田賢俊代表取締役は、自社で使用する電動工具の種類が多く、充電場所が複数あることでのタイムロスや管理に課題を抱えており、作業を効率よく行えるツールスタンドを探していたという。

それをTMP岐阜支社に伝えたところ、電動工具を一括収納できるツールスタンドのオーダーメイド製作企画へ発展。「からくり改善ツール・ソリューション」プロジェクトが立ち上がり、増田社長の要望を技術支援グループのメンバーが丁寧にヒアリング。こうして現場の理想を形にした、世界に一台のツールスタンドが完成した。

TMP岐阜PC活動の一つとして企画・製造されたオーダーメイドの移動型ツールスタンドを導入した、TMP岐阜PC会員の増田カーサービス 増田賢俊代表取締役

移動型ツールスタンドの完成後も、TMP岐阜支社のメンバーが、使い勝手について増田社長や現場メカニックたちにヒアリングし、ツールスタンドの機能性を高めるための微調整を行っている。その過程の中で、電動工具やスプレー缶を手軽に収納できるカップ型のオプションパーツを製作するために3DプリンターをTMP岐阜支社で導入し、電動工具が収まるサイズの樹脂パーツが製作・取り付けられていた。

赤系のカップ型の樹脂パーツは、3Dプリンターで製作されている

「からくり改善ツール・ソリューション」では、オーダーメイド・ツールの企画製作だけでなく、現場改善コンサルティングも開始。さらに、現場改善につながる“からくり”を自ら考案・製作できる人材を育てるための人材育成プランの提供に向けても準備が進められている。

同ソリューションは、整備工場ごとに異なるピットの動線や作業スタイルに合わせ、オリジナルのツール製作を依頼できる体制を構築しており、生産性向上と実利に直結する活動を展開している事例と言える。

必要性が増す「地域連携」の理想的なモデルケース

トヨタグループの専門商社であるTMP岐阜支社は、地域の自動車アフターサービスを支える整備・鈑金塗装工場が長期的に事業を継続できるように、個々の課題に寄り添い続けている。この密なサポートが強固な信頼関係を生み、ひいては地域のカーオーナーを「整備難民」にさせない、安全・安心なインフラ維持に直結している。

今回、3年ぶりの取材で目にしたTMP岐阜PCの活動は、高齢化や過疎化が深刻化する日本各地のローカルエリアの整備・鈑金塗装事業者が直面している「担い手不足」や「技術変革の課題」に対応する、ひとつの答えだと感じた。岐阜で着実に取り組まれている地域連携の共生モデルは、全国の自動車アフターマーケット事業者にとって理想的と言えるモデルケースなのではないだろうか。今後、各地で同様の地域連携が実現していくことを期待したい。

▼トヨタモビリティパーツ岐阜支社パートナーズクラブ会員メンバー(2026年7月2日時点)
会長:株式会社オートライン 佐藤敏則 代表取締役(関市)
理事:協和自動車工業株式会社 若尾淳一 代表取締役(多治見市)
監査役:株式会社豊田モータース 豊田典義 代表取締役(大垣市)
会員:東濃自動車工業株式会社 古田祐嗣 代表取締役(多治見市)、吉田整備株式会社 吉田猛志 代表取締役(可児市)、有限会社くるまの河田 河田文仁 代表取締役(恵那市)、日の丸興業株式会社 川上秀人 代表取締役社長(岐阜市)、有限会社成木自動車 成木崇久 代表取締役(中津川市)、株式会社田中モータース商会 田中雄二 代表取締役(大垣市)、有限会社昌美自動車工業所 堀尾成臣 代表取締役(各務原市)、株式会社松浦自動車興業 松浦宏樹 代表取締役(本巣市)、株式会社増田カーサービス 増田賢俊 代表取締役(大垣市)、有限会社川瀬モータース 川瀬由美 代表取締役(揖斐郡大野町)、有限会社赤保木自動車 大坪正人 代表取締役(高山市) ※順不同※ TMP岐阜PC加入の14社

岐阜の「整備難民」を防ぐ …トヨタモビリティパーツ岐阜支社が地域部品商とも手を組み、優良な整備事業者を徹底バックアップ…TMP岐阜パートナーズクラブにみる理想的な “ 地域連携 ”

《カーケアプラス編集部@金武あずみ》

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