車中泊「エアコン使用でも油断禁物」熊本地震で熱中症死か---対策

令和8年熊本地震(7月31日、熊本県氷川町)
令和8年熊本地震(7月31日、熊本県氷川町)全 3 枚

2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震で、車中泊で避難していた70代の女性が、熱中症の疑いで死亡した。熊本県は一連の地震で初めての災害関連死の可能性があるとして、詳しい状況を調べている。

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●熊本地震、車中泊の70代女性が熱中症疑いで死亡

熊本県によると、女性は7月30日、車内で意識のない状態で見つかり、その後、死亡が確認された。発見された際、車のガソリンは空の状態だったという。

大規模災害では、余震への不安やプライバシーの確保などから、自動車を避難場所として利用する人が少なくない。いっぽう、夏の車内は短時間でも高温となる。エアコンを使用していても、燃料切れなどで停止すれば、急激に危険な環境となる可能性がある。

●不十分な対策:窓を3cm開けても車内は45度

JAF(日本自動車連盟)が実施した「真夏の車内温度」のユーザーテストでは、外気温35度の炎天下に複数の車を駐車し、車内温度の変化を調べている。

午後0時から4時間測定した結果、何も対策をしなかった黒い車の車内温度は最高57度、平均51度に達した。白い車でも最高52度、平均47度だった。サンシェードを装着した車でも最高50度、窓を3cm開けた車でも最高45度となった。いっぽう、エアコンを作動させた車は最高27度だった。

JAFは、サンシェードや窓開けによる車内温度の上昇を抑える効果は低く、人や動物が耐えられない温度になるとしている。つまり「窓を少し開けておけば大丈夫」とはいえない。車中泊避難では、窓を開けることだけを熱中症対策とするのは危険だ。

●エアコン使用の危険:燃料切れに注意

いっぽう、JAFの実験ではエアコン作動中の車内温度は低く保たれていた。ただし、エアコンを使っていれば車中泊が安全というわけでもない。

JAFは、エンジンをかけたままにしていると、誤操作によって車が動くほか、燃料切れでエンジンが停止する可能性があると指摘している。今回の熊本地震で死亡した女性の車も、発見された際にはガソリンが空の状態だった。ただし、女性の死亡に至る詳しい経緯については熊本県が調べており、燃料切れと死亡との因果関係は現時点では明らかになっていない。

猛暑時に車内を避難場所として使う場合には、燃料残量やエアコンの作動状況を確認する必要がある。燃料切れや車両の不具合などでエアコンが停止すれば、車内温度が上昇する危険がある。

●熱中症が疑われる場合:高齢者は特に注意、周囲からの見守りも

厚生労働省は、熱中症予防では水分補給と暑さを避けることが重要だとしている。エアコンが効いた室内や風通しのよい日陰など、できるだけ涼しい場所を選び、体調の変化に注意して早めに水分を補給するよう呼びかけている。

特に注意が必要なのが高齢者だ。厚労省によると、熱中症患者のおよそ半数は65歳以上。高齢者は暑さや水分不足に対する感覚機能や、体の調整機能が低下しているためだ。

災害時に車中泊を続けざるを得ない場合でも、水分をこまめに補給するだけでなく、車内環境や本人の体調を確認することが重要になる。高齢者など熱中症のリスクが高い人については、周囲による定期的な確認も求められる。

熱中症が疑われる場合、厚労省はエアコンの効いた室内や風通しのよい日陰などへ移動させ、衣服をゆるめ、首の周り、脇の下、足の付け根などを冷やすよう案内している。経口補水液などによる水分補給も必要だ。自力で水が飲めない場合や意識がない場合には、すぐに救急車を呼ぶとしている。

●熱中症を防ぐ:「車を長時間の避難場所にしない」という選択

車はプライバシーを確保しやすく、災害時には一時的な避難場所となる。いっぽう、猛暑下ではエアコンが停止すると、車内環境が短時間で悪化する危険がある。

内閣府は現在、「在宅避難者・車中泊避難者等の支援の手引き」を公開し、指定避難所以外で生活する被災者も含めた支援体制の整備を自治体などに求めている。

熱中症を防ぐ観点では、水分補給や窓開けだけに頼らず、暑さそのものを避けることが基本となる。猛暑下では自動車を長時間の避難場所とし続けず、利用可能であれば冷房の効いた避難所や施設など、より涼しい場所へ移ることが重要だ。

車中泊を続けざるを得ない場合には、燃料残量やエアコンの作動状態を確認するとともに、体調の変化を見逃さないことが求められる。

●2016年熊本地震でも車中泊避難者の把握が課題に

車中泊避難をめぐる問題は、熊本では今回が初めてではない。

2016年熊本地震でも、指定避難所に避難・滞在せず、車中泊などを選んだ被災者が多数いた。内閣府による熊本地震の検証では、指定避難所以外への避難や在宅避難、車中避難などを選択した被災者について、全体的な状況の把握や避難者のケアが困難だったことが課題として挙げられた。

内閣府はその後、車中泊をしている人の動向をはじめ、被災者のニーズや物資の配送状況など、把握が難しい情報が少なくなかったと指摘している。2016年熊本地震をめぐる資料では、車中泊の問題点として「避難者の健康状態の把握が困難」「情報が集まりにくい」ことなども挙げられている。

車中泊避難者は指定避難所の外にいるため、行政や医療・保健関係者から見えにくくなる可能性がある。猛暑下では、車内環境への対策だけでなく、どこに車中泊避難者がいるのかを把握し、必要な支援や健康確認につなげることも重要になる。

《高木啓》

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