11月18~20日に開催される「EdgeTech+ 2026」。フィジカルAIの応用分野のひとつが自動運転だ。自動車産業の視点から注目したいのが「E2E AI」「センサーフュージョン」「TinyML」の3つの技術である。
これらは、自動車が周囲の状況を認識し、走行を判断し、車両を制御する仕組みや、そのためのAIを車載機器に実装する技術に関係する。違いを理解することで、自動運転向けAIや車載コンピューター、センサー関連の技術を読み解きやすくなる。
●E2E AIとは何か
E2E AIは、End-to-End AI(エンド・ツー・エンドAI)の略だ。自動運転の分野では、カメラなどのセンサーから得た情報をもとに、車両の走行に必要な判断や制御出力を、学習モデルによって統合的に処理する方式を指す。
従来の自動運転システムでは、周囲の認識、車両の動きの予測、走行経路の計画、車両制御などを、複数の機能に分けて開発する方法が使われてきた。E2E AIは、こうした処理の一部または全体を、学習モデルによって一体的に扱う考え方だ。
例えば、カメラ画像などから車両の進路や走行軌道を出力する方式がある。ただし、E2E AIが車両のすべての制御を単一のAIモデルだけで実行することを意味するわけではない。AIが出力した走行計画を、別の制御システムが実行する構成もある。
●センサーフュージョンとは何か
センサーフュージョン(Sensor Fusion)は、複数のセンサーから得られた情報を統合する技術だ。
自動運転車には、カメラ、レーダー、LiDARなど、さまざまなセンサーが利用される。カメラは画像によって周囲の状況を捉え、レーダーは電波を使って対象物との距離や相対速度などを測定する。LiDARはレーザー光を使って周囲の物体までの距離や形状を把握する。
それぞれのセンサーには得意な条件と不得意な条件がある。センサーフュージョンは、複数の情報を組み合わせることで、周囲の状況をより適切に把握するための技術だ。
E2E AIとの違いは、センサーフュージョンが主に情報の統合に関係するのに対し、E2E AIは入力から出力までを学習モデルで結び付ける開発方式である点だ。両者は対立する技術ではなく、複数のセンサー情報を利用するE2E AIも考えられる。
●TinyMLとは何か
TinyML(タイニーML)は、小型のマイコンなど、計算能力やメモリー、消費電力に制約のある機器で機械学習を実行する技術だ。「Tiny」は小さいこと、「ML」はMachine Learning(機械学習)を意味する。例えば、小型センサーの情報をマイコンで解析し、異常を検知するような用途が考えられる。
通常、大規模なAIモデルを動かすには高い計算能力が必要になる。いっぽう、TinyMLでは、比較的小さなモデルを使い、限られたハードウェア資源で推論を実行する。自動車には、車両の状態を監視するセンサーや、さまざまな制御装置が搭載されている。TinyMLは、こうした小型機器へのAI機能の実装に利用できる技術だ。
ただし、TinyMLが大規模なE2E自動運転モデルをそのまま動かす技術というわけではない。自動運転を支える周辺のセンサー処理や異常検知など、小規模なAI処理に適している。
自動運転におけるAIの流れと関連技術
●自動運転を支えるAIと組込み技術
3つの用語は、それぞれ異なる役割を持つ。
E2E AIは、自動運転の認識や判断などを学習モデルで統合的に扱う方式だ。センサーフュージョンは、車両の周囲を把握するために、複数のセンサー情報を統合する技術である。TinyMLは、計算資源が限られた小型機器にAIを実装するための技術だ。
自動運転システムでは、センサーによる認識、AIによる判断、車両の制御などが連携して動作する。そのため、AIモデルの性能だけでなく、処理の遅延、信頼性、消費電力、安全性なども重要になる。
フィジカルAIは、こうした技術を組み合わせ、現実世界で自律的に動作するシステムを実現する考え方と結び付いている。EdgeTech+ 2026では、自動運転向けのAI技術だけでなく、車載センサー、組込みコンピューター、AI処理を支える半導体やソフトウェアにも注目したい。
具体例:自動運転車の場合●EdgeTech+ 2026開催概要
EdgeTech+ 2026は、11月18~20日に神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で開催される、組込みシステムやエッジテクノロジーに関する展示会だ。主催は組込みシステム技術協会(JASA)。会場では、組込みハードウェア、ソフトウェア、AIなどの技術が紹介される。
EdgeTech+ 2026【キーワード】
Vol. 1 「フィジカルAI」って何? 似ている4つの基本用語
○フィジカルAI
○Embodied AI
○Embedded AI
○エッジAI
4つの用語を理解することで、自動運転車やロボット、産業機械などの展示が、どのような技術によって成り立っているのか見えてくる。
Vol. 2 「VLA」って何? AIが判断し行動する技術
○VLA
○ワールドモデル
○AIエージェント
○マルチモーダルAI
VLAは、ロボットなどが周囲の状況を認識し、人間の指示を理解して行動するためのAIモデルだ。それに関連するワードも。
Vol. 3 「Sim-to-Real」って何? AIを動かす実装技術
○Sim-to-Real
○デジタルツイン
○オンデバイスAI
○NPU
フィジカルAIの実用化を理解するうえでは、AIモデルの性能だけでなく、開発したAIを実際の機械で動かすための技術にも注目したい。
Vol. 4 「E2E AI」って何? 自動運転を支える技術
○E2E AI
○センサーフュージョン
○TinyML
フィジカルAIの応用分野のひとつが自動運転だ。自動車産業の視点から注目したい3つの技術だ。




