夏の炎天下に駐車した自動車。車内に人やペットを残すことが危険なのは広く知られているが、置き去りにしてはいけないのは人や動物だけではない。モバイルバッテリーやスマートフォン、ライターなど、普段何気なく車内に置いている物にも注意が必要だ。
JAF(日本自動車連盟)や消費者庁、NITE(製品評価技術基盤機構)は、高温になった車内での製品事故について注意を呼びかけている。
◆真夏の車内、ダッシュボードは70度超も
まず知っておきたいのが、炎天下に駐車した車内がどれほど高温になるかだ。
JAFは、外気温35度の晴天時にミニバン5台を使い、正午から4時間にわたって車内温度を測定する実験を行なっている。窓を閉め切り、エンジンを停止した黒色の車両では、わずか30分後に車内温度が約45度に達した。ダッシュボードは車内よりさらに高温となった。NITEはJAFの実験を引用し、直射日光が当たるダッシュボードの温度は70度を超えることがあるとしている。
このような環境では、車内に置かれた物にもさまざまな危険が生じる。
◆モバイルバッテリーは発火のおそれ
特に注意したいのが、モバイルバッテリーなどリチウムイオン電池を使用した製品だ。
消費者庁は2026年5月、暑い時期のリチウムイオン電池について注意喚起した。モバイルバッテリーやスマートフォンなどのリチウムイオン電池使用製品は、外気温が上昇する夏季に電池への負荷が高まり、発火などの事故リスクが増える傾向があるという。
リチウムイオン電池を高温環境に置くと、電池内部の化学反応が加速することなどにより、性能低下や発火などの事故につながるリスクが高まる。
消費者庁は特に自動車について、車内は短時間で高温になることがあり、電池に深刻なダメージを与える可能性があると指摘。ダッシュボードだけでなく、座席やトランク内への放置も避けるよう呼びかけている。
実際の事故も起きている。消費者庁によると、トランク内にモバイルキーボードを放置したところ、走行中に発火してトランク内部が焦げた事例が報告されている。さらに消費者庁の堀井奈津子長官は2026年7月2日の記者会見で、炎天下の車内など高温になる環境には「短時間であっても製品を放置しない」ことが重要だとして、改めて注意を呼びかけた。
車内放置すると危険なもの
◆NITEはモバイルバッテリーの発火を再現
NITEも、高温の車内にモバイルバッテリーを放置しないよう注意を促している。
NITEが紹介した事故では、自動車内に置かれていたモバイルバッテリー付近から出火し、周辺を焼損した。原因は特定できなかったものの、約8年の長期使用による電池の劣化に加え、高温の車内に置かれていたことから、電池セルが異常発熱して発火した可能性が考えられるという。
NITEは高温環境に放置したモバイルバッテリーが発火する再現映像も公開している。リチウムイオン電池を使用した製品は外部からの熱に弱いため、真夏の車内や直射日光が当たる場所には放置しないよう求めている。
注意が必要なのはモバイルバッテリーだけではない。リチウムイオン電池は、スマートフォンや携帯用扇風機、ワイヤレスイヤホンなど身近な製品にも使われている。
◆ライターやスプレー缶も置かない
リチウムイオン電池以外では、ライターやスプレー缶など可燃性の高い物にも注意が必要だ。
JAFは車内温度実験で、ダッシュボードにスマートフォンや使い捨てライターなどを置き、状態の変化を調べた。スマートフォンは高温警告が表示され、一部の機能を除いて使用できなくなった。使い捨てライターは2~3時間でケースに亀裂が生じ、内部のガスが抜けた。
実験ではスプレー缶やライターの破裂、引火には至らなかった。しかしJAFは、可燃性の高い危険物は車内温度の上昇によって破裂や引火の可能性が高まるとして、車内に放置しないよう呼びかけている。
◆クレヨンは約1時間で溶け始める
火災や破裂に至らなくても、高温によって使えなくなる物もある。
JAFの実験では、ダッシュボードに置いたクレヨンが約1時間で黒色から溶け始め、約1時間20分ですべての色が溶けて流れ出した。消せるボールペンで書いたメモも、約2時間で文字が消えて見えなくなった。
スマートフォンのような電子機器では一時的に機能が停止する場合もある。車内に置いた物が発火や破裂を起こさなくても、高温による故障や変形、性能低下には注意が必要だ。
車内放置すると性能・品質が劣化するもの◆「短時間だから大丈夫」は禁物
特に近年、身の回りにはリチウムイオン電池を搭載した製品が増えている。モバイルバッテリーだけでなく、スマートフォン、携帯用扇風機、ワイヤレスイヤホンなども対象になる。
しかも危険なのはダッシュボードの上だけではない。消費者庁は座席やトランク内についても、高温になる車内への放置を避けるよう求めている。
また、NITEによると、高温の車内での事故は真夏以外の天気の良い暑い日にも発生している。
炎天下で自動車から離れる際は、人やペットが残っていないことを確認するのはもちろん、モバイルバッテリーなどの電池製品やライター、スプレー缶といった高温に弱い物、可燃性の物も車内に残していないか確認する必要がある。




