首都高速道路東京西局は8月26日、首都高速道路中央環状線の大井北換気所敷地内(東京都品川区)で、「2026年地震防災訓練(道路啓開実働訓練)」を実施した。3月に国土交通省が「関東ブロック道路啓開計画」を策定してから、初めての道路啓開訓練となった。
訓練には国土交通省関東地方整備局道路部、川崎国道事務所、首都高速道路、首都高メンテナンス西東京、首都高パトロール、首都高技術、KDDIスマートドローンが参加した。関東ブロック道路啓開計画で重視する関係機関との連携を確認し、道路啓開の実効性向上を図った。
“特車”(2026年地震防災訓練)
◆地震防災訓練のねらい
大規模災害が発生した場合、首都高は警察や消防、自衛隊などの救助部隊が被災地へ向かうルートとして使用されることが想定される。このため、緊急車両などが通行できるよう、関係機関と連携して道路を迅速に啓開する必要がある。
首都高ではハード面の対策として、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、同レベルの地震に耐えられるよう全ての橋脚で耐震性向上対策を完了している。橋桁についても、支承の交換など、さらなる耐震補強を優先順位を定めて計画的に進めている。ソフト面では地震防災訓練を繰り返している。
横転車両の引き起こし(2026年地震防災訓練)関東ブロック道路啓開計画では、首都直下地震発生時に「八方向作戦」に基づいて各機関が道路啓開を実施する。例えば南西方向では、東名高速道路、首都高、国道246号のうち、比較的被害の少ない区間を組み合わせて都心へ向かうルートを確保する。
八方向作戦では、人命救助で重要となる発災後72時間を意識し、発災後48時間以内に各方向で上下1車線ずつの道路啓開を完了することを目標としている。
路面段差と目開きの測定。段差30cm、目開き50cm(2026年地震防災訓練)◆最大震度7想定、道路に段差と目開き
今回の訓練では、最大震度7の首都直下地震が発生したと想定した。東名高速道路は川崎付近で通行できず、国道246号も瀬田交差点東側付近でビルが倒壊し、上下線とも通行できない状況とした。
このため、東名高速道路から国道246号を経由し、首都高3号渋谷線を通行するルートを優先啓開ルートに設定した。
さらに国道246号の新二子橋で30cmの段差、首都高3号渋谷線上りの渋谷入口先で50cmの目開きと30cmの段差が発生したと想定。川崎国道事務所が国道246号、首都高が3号渋谷線の段差をそれぞれ啓開する手順を確認した。
2026年地震防災訓練(道路啓開訓練)◆交通特別パトロールが出動
首都高では災害発生と同時に交通特別パトロールが出動し、高速道路上を巡回する。被害や交通状況を現地対策本部に報告し、収集した情報をもとに対応方針を決定する。交通特別パトロールは35班で、災害時に巡回するコースを事前に設定している。
車両啓開では、有人車両を直近の出口へ誘導するいっぽう、無人車両はゴージャッキやレッカー車を使って移動する。訓練ではゴージャッキによる車両移動のほか、トーイングトラクターによる車両の牽引も実施した。車両啓開隊・段差啓開隊の車両が通行するためにも、まず車両啓開だ。
段差修正(2026年地震防災訓練)◆軽量段差修正材
段差啓開では、保全特別パトロールが現地対策本部の指示を受けて被害箇所へ向かい、被害状況を詳しく確認する。その情報をもとに段差啓開隊が作業を実施。軽量段差修正材や渡し板を使用し、路面の段差や目開きを解消して車両が通行できる状態にする手順を確認した。車両啓開隊・段差啓開隊は22班を編成している。
被害状況の把握にはドローンも活用した。首都高社員がドローンとパトロールの双方で現場を確認し、道路啓開に必要な情報を収集する訓練を実施した。
首都高では、大規模災害時に緊急交通路を確実に確保できるよう、シミュレーションや訓練を繰り返している。また災害時、利用者が車を置いて避難する場合について、車両を迅速に移動できるよう、鍵を車内に置いて避難するよう呼びかけている。
必ず一輪にはゴージャッキを装着しないでおく。逸走しないため。ゴージャッキのない車輪を中心に車両を回転させる(2026年地震防災訓練)◆関連:首都直下地震に「八方向作戦」
国土交通省関東地方整備局は、道路法に基づく「関東ブロック道路啓開計画【地震・津波災害】」を策定した。首都直下地震など大規模災害が発生した際、救助活動や緊急物資の輸送に必要な道路を早期に確保するための計画だ。関東ブロックは東京都と茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨、長野の1都8県を対象とする。
計画は、2024年1月の能登半島地震で、人命救助やライフラインの早期復旧、孤立集落への交通確保に道路啓開が重要な役割を担ったことを踏まえたもの。2025年の道路法改正で道路啓開計画が法定化されたことを受け、関係機関との連携・協力による実効性向上をめざす。
想定する災害は、首都中枢機能への影響が最も大きい「都心南部直下地震(マグニチュード7.3級)」だ。被害が甚大となるエリアとして東京都23区全域と多摩北部、神奈川県北東部、埼玉県南部、千葉県北西部を想定。防災拠点のある地域は114市区町となる。
2026年地震防災訓練(道路啓開訓練)●発災後72時間以内の道路啓開めざす
道路啓開では、道路管理者と関係機関が連携する「関東地方ブロック道路啓開八方向作戦」を実施する。発災後72時間以内の道路啓開を目標とし、防災拠点につながる路線を設定する。
全国から派遣される応援部隊や緊急物資を迅速に防災拠点へ送り込むため、都心を中心とする放射方向の道路を活用。八方向ごとに高速道路、国道、都道のうち被害の少ない区間を組み合わせ、優先して啓開する路線・区間を決める。
目標時間は、全国からの応援部隊が進出拠点へ向かう「広域支援ルート」が24時間以内、進出拠点から被災地内へ向かう「被災地進出ルート」、救助活動拠点までの「被災地内ルート」、災害拠点病院までのルートがそれぞれ48時間以内。「活動支援ルート」は72時間以内とした。
また、首都直下地震で深刻な道路交通まひが発生し、陸路での到達が難しくなる地域を想定し、海路や空路によるアクセスルートも設定する。荒川、多摩川、江戸川では、緊急用河川敷道路や緊急用船着き場などを活用し、道路啓開ルートを多重化する。
車両牽引(2026年地震防災訓練)●放置車両の移動などに協力要請
道路啓開に必要な資機材については、被害想定から必要量と備蓄量を整理した。災害協定を結ぶ関係団体の保有分や道路管理者間の調整を含め、必要な資機材を確保できることを確認したとしている。能登半島地震の教訓から、アスファルトプラントの位置情報も資機材の保管場所と合わせて把握する。
実践的な訓練も行う。道路管理者のほか、警察、消防、自衛隊、建設関連団体、ライフライン事業者、医療関係者、技術系NPOなどが参加。車両移動や土砂・がれき撤去、橋梁の段差補修、倒壊した電柱の除去、通信途絶を想定した訓練などを組み合わせ、年1回以上実施する年次計画を策定する。
災害時には「道の駅」も活用する。埼玉県桶川市の道の駅「べに花の郷おけがわ」と、千葉県八千代市の道の駅「やちよ」の2カ所を救助活動拠点に設定した。人工衛星画像やドローンなども活用し、広域的な被害状況の把握や啓開路線の見直しを効率化する。
さらに地震・津波後に大雨や火山災害(広域降灰)が重なる複合災害も想定し、各種リスクを関係者間で共有する。計画は基本的に5年に1回見直す。
いっぽう、首都直下地震の発生時には深刻な道路交通まひが想定される。このため緊急輸送ルートの確保には、自動車利用の制限や放置車両の移動など、一般の道路利用者の協力が不可欠としている。道路管理者などは一般車両の通行禁止などについて、SNSを通じて協力を呼びかける方針だ。
計画は「関東ブロック道路啓開計画策定協議会」が策定し、3月27日の第3回協議会での協議を経て、3月30日に公表した。




