昨年のジャパン・モビリティーショーだったか、初めて実車を目の前にして、「全然変わっとらんやん」というのが、第1印象だった。あれからほぼ1年。ようやくその変わっていない外観の新車に乗ることができた。で、結論から言うと、「ここまで良くなっているとは…」が、偽らざる感覚であった。
【詳細画像】マツダ CX-5 Gグレード EXパッケージ装着車
確かに見た目の印象はほぼ旧型と同じ。実際に隣に並べてみたわけではないので、大型化したボディについても比較のしようがなかったから、まさに代わり映えのしないニューモデルなのである。まあ、子細に見れば、テールゲートにはエンブレムに代わってMAZDAの文字が入るから、少なくともリアビューでは一目で違いが判る。でもすれ違いざまには「? 今の新車?」で終わる程度の改変である。この改変、まさにメルセデスが良く使う手だ。
一方で、横浜のR&Dから車を借り出して、ものの100mも走らないうちに、「静か、それに路面からの当たり具合がとてもスムーズで、乗り心地が良いことに気づく」。というのも、R&Dを出るとすぐに踏切があって、かなり大きな段差があって、乗り味の具合はまずそこで試すことができるからだ。
マツダ CX-5
これまで販売の半数以上を占めてきたディーゼルがなくなったことによるデメリットばかりが頭に渦巻いていたのだが、今回700kmほど走ってみて、正直ディーゼルの穴は埋められる!と思えたものである。というのも、ディーゼルはガソリンモデルに比べて従来30万円ほど価格が高かった。
同列に比較はできないものの、MHEVは素のガソリン車とディーゼルの中間に位置し(価格的に)、その価格差をランニングコストで埋めていくと、先代の場合は5年くらい乗らないと(年間走行距離を1万kmとして)元が取れない計算だった。今回は燃費も向上しているので、確かに距離を走るユーザーにはディーゼルが良かっただろうが、普通に使うユーザーはあえてディーゼルに拘らなくてもよいかな? というのが実感だった。
◆格段に進化した「乗り心地」と「静粛性」
マツダ CX-5傍から見ていると新車の実感はないけれど、購入して実際に乗っている既納客は、その良さを痛感しているに違いない。具体的に良くなっている点として一番は、まず乗り心地が格段に良くなっていること。それに静粛性が大きく向上している点だ。
特に始動から低速域でも従来は明確にエンジン音が室内に届いていたものが、今回はほぼ抑え込まれている印象。そこからスピードを上げていけば当然ながら、他の音源の音が大きくなってあまり気にならなくなる。以前はそれでも回転をあげると独特のサウンドが入り込んだのだが、今回は全体的にそうしたノイズが抑え込まれている。
乗り心地は明確に突き上げ感が減少している。こうなると縦置きエンジン組の『CX-60』は分が悪い。この2台を比べた場合、明らかにCX-5が良いからだ。
マツダ CX-5すでに多くのジャーナリストが書いているが、加速の際は確かにスロットルが少し早開きをしている印象があるものの、と言って個人的にそれが大きなネガ要素とは感じず、むしろ出足の良さとして感じられたし、パーシャルからの加速感にしても個人的には俊足感を感じられた。
ハンドリングも同様である。少しシャープになり過ぎ…という意見もあるようだが、快適になって俊敏に走り、シャープな回頭性があるのだから、やり過ぎという印象はもたなかった。むしろ全体的な調和が取れて、その上でスムーズさと乗り心地の良さを手に入れたという印象である。
◆「Gグレード」を買うなら必須の「EXパッケージ」
マツダ CX-5今回の試乗車はFWDのGグレード。いわゆる中間グレードで、最上級のLと比較して加飾の違いや、シートヒーターの有無、それに一番大きなセンターディスプレイのサイズ違いなどが主たる違いだが、それで車両本体価格が352万円(Lは407万円)なら、Gで十分納得ができる。今回の試乗車はこれに「EXパッケージ」というオプションが付くが、それを含めて車両価格377万3000円はかなりバーゲンプライスである。
このEXパッケージなるオプション、Gを買うなら必須のアイテムで、ADASが充実するうえ、BOSEのサウンドシステムなども含んで22万7700円である。ADASの良さは、例えば一般道を走っていて前方の信号が赤、こうしたケースで前車がいる場合は、前車に従って緩やかにブレーキをかけてくれる。停車まではサポートしないので、最後は自分でブレーキを踏む必要があるのだが、これはずいぶんと役に立った。
また、渋滞時には40km/hまでハンズオフ機能が働くので、今回の場合は東名高速の渋滞で大いに役立ち、疲労を半減してくれる。今回感じたのは、ACCは前車との車間を最短にしても以前よりも距離を開けていて、割り込みリスクはその分高くなるものの、きちんとそれに対応してくれるから、安全性は高まった印象である。
さらにこのオプションパッケージには、リアシートヒーターも含まれるから、ディスプレイのサイズを除けば、ほぼLグレード並みの装備をお安くGで手に入れることができるという寸法である。
マツダ CX-5◆レギュラーでOK! ディスプレイに関しては一長一短
中部地方まで往復600km、これに都内や自宅周辺での100kmほどの短距離移動を含め、おおよそ700kmを試乗した。行った先では5人乗車をする機会もあったが、大の大人5人が乗っても後席で不満が出ることはなく、室内の広さはこうしたケースでも発揮される。それに荷室の広さも顕著で、5人分の1泊用ボストンバッグを軽く飲み込み、さらに遊びの道具も詰め込めて、その広さを実感することができた。
最近のマツダはハイオクガソリンを要求するモデルが多くなったように感じたが、新しいCX-5はレギュラーでOK。700km走った燃費も、車載コンピューターによれば14.2km/リットルだから、十分満足できる。因みにWLTCモードでは15.2km/リットルである。
マツダ CX-5インフォテイメントの使い勝手もよい。今回からグーグルのOSが仕込まれているので、OKグーグルの後に、住所を言ったり、目的地の施設名を言えば、瞬時に反応してナビを使える。いちいち打ち込む必要はほぼない。ただ、物理スイッチはほとんど姿を消し、パワーシートのメモリーもセンターディスプレイに内包されてしまったので、いちいち呼び出すのは不便。それになんと、トリップメーターもセンターディスプレイに引っ越してしまったのは、やはり不便だった。と、ディスプレイに関してはまだ一長一短ありである。
それでも俊敏な走りで時にワインディングを快適に飛ばすこともできれば、ACCを使ってストレスフリーで高速移動をできるクルマになったので、先代と形は似ていても、ここまで良くなったのか…という実感があるわけである。
マツダ CX-5■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。




