アーシングチューンは昔から賛否が分かれる定番メニューだ。エンジンレスポンスや始動性、ライト、オーディオなどへの効果が語られるが、本当に変化はあるのだろうか。
◆アーシングチューンとは何か クルマの電気の流れを理解する
自動車の電気回路ではバッテリーのプラス端子から各電装品へ電気が送られ、使用された電気は車体やエンジンなどを経由してバッテリーのマイナス端子へ戻る。車体を配線の一部として利用する仕組みがボディアースだ。
アーシングチューンとは、このマイナス側の電気経路を専用ケーブルで補強するチューニング。ボディやエンジンブロック、シリンダーヘッドなどとバッテリーのマイナス側をケーブルでつなぎ、電気抵抗や電圧降下を抑えることを狙っている。
新車時には問題なく機能していた電気経路でも長期間使用すると端子やボルトの腐食、接触部分の酸化、アースケーブルの劣化などによって抵抗が増える場合がある。特に年式の古いクルマでは純正アースポイントの状態が悪化しているケースも考えられる。
そこで劣化した電気経路を清掃したりアースケーブルを交換したり、必要に応じて補助的なアーシングケーブルを追加することでマイナス側の電気経路を改善できる可能性がある。
◆アーシングで期待できる効果は本来の電気性能を取り戻すこと
アーシングの効果としてよく挙げられるのがアイドリングの安定、エンジンレスポンスの向上、始動性の改善、ヘッドライトの明るさやオーディオ音質の変化などだ。
ただしアーシングによってエンジンそのものの性能が大幅に高まるわけではない。重要なのは電気系統の抵抗や電圧降下が発生していた車両で、それを改善することで本来の性能に近づけられる可能性があるという点だ。
例えばエンジンやボディのアース状態が悪く電圧降下が大きくなっていた場合、点火系や各種電装品に安定した電圧を供給できるようになることでアイドリングや始動性に変化が現れることがある。ライトの明るさやオーディオの動作についても同様で、もともとの電気経路に問題があれば改善を体感できる可能性がある。
一方で電気系統が正常な車両にアーシングケーブルを追加しても抵抗値の変化はわずかで、ドライバーが体感できるほどの違いが出ないケースも多い。そのため「アーシングをすれば必ずパワーや燃費が向上する」と考えるのは早計だ。
◆アーシングが効果を発揮しやすいのは旧車や過走行車
アーシングの効果を考えるうえで大きなポイントになるのが車両の年式とコンディションだ。製造から長期間が経過した旧車や走行距離が伸びたクルマでは、端子やアースポイントの腐食、ケーブルの劣化などによって電気抵抗が増えている可能性がある。
そうした車両では純正アースケーブルを新品に交換したり、端子部分を清掃して確実に接触させたりするだけでも電気系統のコンディションを改善できることがある。結果としてエンジン始動性や電装品の動作が改善するケースも考えられる。
対して比較的新しいクルマではメーカーが車両全体の電気回路を細かく設計しており、純正アースも十分な容量が確保されている。経年劣化も少ないため、アーシングケーブルを追加しても体感できるほどの変化が出ない可能性は高い。
そのため年式の古いクルマで電気系統を改善したい場合には、いきなり追加アーシングを行うよりも、まず純正アースポイントの点検や清掃、純正アースケーブルの交換から始めるのが合理的だ。
◆アーシングのDIY施工には注意。配線ミスは重大トラブルにつながる
アーシングケーブルを追加する場合には取り付け場所と配線方法にも十分な注意が必要だ。エンジンブロックやシリンダーヘッド周辺は高温になるうえ、ベルトやプーリーなどの可動部も存在する。
配線を誤ればケーブルがベルト類に巻き込まれたり、高温部分に接触して被覆が損傷したりする可能性がある。さらにケーブルの端子が外れてプラス端子などに接触すればショートにつながり、最悪の場合は車両火災を招く危険もある。
また近年のクルマではバッテリーのマイナス端子付近に電流センサーを備え、充電状態や電力消費を車両側で管理しているケースもある。こうした車両ではアーシングケーブルの接続方法によっては電流計測に影響を与える可能性があるため、車種ごとの電気回路を理解したうえで施工することが重要だ。
DIYで施工する場合には耐熱性や許容電流に適したケーブルを使用し、可動部や高温部分を避けて確実に固定することが必須。不安がある場合には専門ショップや整備工場へ依頼した方が安全だ。
◆アーシング追加の前に純正アースと電気系統をリフレッシュ
年式の古いクルマで電気系統のコンディションが気になるなら、まず試したいのは純正状態のリフレッシュだ。バッテリー端子やアースポイントの清掃、劣化した純正アースケーブルの交換、ヒューズや配線の状態確認など基本的な部分から点検していきたい。
アーシングチューンは車両の状態によって効果の現れ方が大きく変わる。新しいクルマにケーブルを追加すれば必ず性能が向上するというものではなく、経年劣化によって増えた電気抵抗を減らして本来のコンディションへ戻すという考え方の方が実態に近い。
まず純正の電気経路を正常な状態に整え、それでも電圧降下などの問題が確認できる場合に補助アーシングを検討する。この順番で進めることが、アーシングチューンを安全かつ効果的に取り入れるポイントだ。




