「グリーン・ヘル(緑の地獄)」の異名を持つドイツのニュルブルクリンク北コース。世界の自動車メーカーがスポーツカーの性能を競ってきたこの場所で、新たに「自動運転」によるラップタイム競争が始まろうとしている。
【画像】手放し走行をおこなうメルセデスAMG GT63 プロトタイプ
その新たな挑戦者となりそうなのがメルセデスAMGだ。
◆ステアリングから手を離した!
スクープ班のカメラがニュルブルクリンクで捉えたのは、メルセデスAMG『GT 63』をベースとしたプロトタイプだ。一見すると通常のテスト車両にも見えるが、ルーフには3つのセンサーが取り付けられている。
走行中、ドライバーがステアリングから意図的に手を離している様子も確認された。メルセデスAMGは、高速サーキット走行を自動でこなす技術のテストを進めているとみられる。
◆ドライバーが限界に挑むコース
ニュルブルクリンクは、これまでドライバーが限界に挑む場所として知られてきた。いっぽう、自動運転技術にとっても厳しいテスト環境となる。
その理由はコースの難しさにある。
全長20kmを超えるニュルブルクリンク北コースには、170以上ともいわれるコーナーがあり、高低差も大きい。ブラインドコーナーや高速区間が連続し、人間が高速で走行するだけでも容易ではない。
自動運転車を高速走行させる場合、車両位置の把握からステアリング、アクセル、ブレーキまで、高度な制御が求められる。
メルセデスAMG GT63 プロトタイプ
◆1周目は右端、2周目は左端
今回のメルセデスAMGも、最初から高速走行を始めたわけではない。
撮影者によると、プロトタイプはまずコース右端をゆっくりと走りながらマッピングを実施。約25分かけて1周した後、今度は左端を走行しながら同様の作業を行ったという。
コース幅や境界などの情報を収集した後、ハンズフリーでの周回を開始した。
◆最初のラップタイムは20分弱
ハンズフリーでの最初の走行は慎重なものだった。加速を抑え、コーナーのかなり手前からブレーキをかけるなど、安全マージンを大きく取って走行し、ラップタイムは20分弱だった。運転席のドライバーはステアリングを操作せず、緊急時に介入できるよう待機していたという。
走行終了後、GT 63はピットへ戻り、エンジニアが取得したデータを解析した。その後、再びコースへ出ると、2回目は最初の走行より「数分速い」タイムを記録したとされる。
ただし、現時点では絶対的な速さを狙ったテストとは言い難い。
メルセデスAMG GT63 プロトタイプ◆ライバルは中国のシャオミ YU7 GT
比較対象となるのが、中国シャオミの『YU7 GT』だ。
YU7 GTの自動運転車は2026年夏、ニュルブルクリンクを10分29秒483で周回した。人間が運転する高性能車の記録には及ばないものの、自動運転による高速サーキット走行でタイムを残している。
今回のメルセデスAMG GT 63は、その記録には遠く及ばなかった。
いっぽう、メルセデスAMGはニュルブルクリンクという厳しい環境で、マッピングから自動周回、データ解析、再走行まで、一連のテストを実施した。
高速域で車両を正確にコントロールするには、路面や車両位置を把握しながら、タイヤのグリップや旋回速度、制動距離などを踏まえた制御が必要になる。今回のテストでは、こうした高速走行時の自動制御に関するデータを収集しているとみられる。
◆ニュルブルクリンクが自動運転の聖地になる?
ニュルブルクリンクのラップタイム競争も、自動運転技術の進化によって新たな段階に入る可能性がある。
これまでは「どのメーカーが最も速い量産車を作れるか」が注目されてきた。今後、自動運転技術がさらに進化すれば、車両性能だけでなく、自動運転システムによるラップタイムも競争の対象となりそうだ。
メルセデスAMGは2回目のテストを終えた後、走行を終了している。現時点で正式なラップレコードへの挑戦は発表されていない。今回収集した走行データを基に制御技術の開発が進めば、GT 63のプロトタイプが再びニュルブルクリンクでテストを行なう可能性もある。
ニュルブルクリンクを舞台にした速さの競争は、ドライバーだけでなく、自動運転技術にも広がりつつある。




