圧倒的な没入感『Dolby Atmos』が作り出す次世代の車載オーディオに注目

圧倒的な没入感『Dolby Atmos』が作り出す次世代の車載オーディオに注目
圧倒的な没入感『Dolby Atmos』が作り出す次世代の車載オーディオに注目全 7 枚

近年「空間オーディオ」という言葉を耳にする機会が増えた。高級車への純正採用も進む中、その代表格であるドルビーアトモスに注目し、車内で味わえる音の魅力と導入方法を探った。

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◆ドルビーアトモスとは? 音に新たな次元をもたらす空間オーディオ技術

そもそもドルビーアトモス(Dolby Atmos)とは何だろう。ドルビーアトモスは立体的な音響空間を表現する技術で、空間オーディオを再生する代表的なフォーマットのひとつだ。空間オーディオは前後、左右に加えて上下方向まで含めた音場を表現できるのが特徴。従来のステレオ音源が左右の音を組み合わせて音場を作るのに対し、高さ方向、前後の方向の奥行を加えた空間として音場を作成し、さらにオブジェクトとして音を自在に動かすことで、没入感の高いサウンドを楽しめる。

では、ドルビーアトモスはどのように高さ方向を含めた音空間を作り出しているのだろう。基本的な考え方としては前後左右の平面方向に加えて高さ方向にも音の情報を持たせ、それらを組み合わせることで三次元的な空間を表現する。

◆5.1chサラウンドとドルビーアトモスは何が違う?

従来から5.1chサラウンドなどの多チャンネルオーディオは存在する。ではドルビーアトモスとは何が違うのだろう。大きな違いは音を扱う考え方にある。ステレオや従来型の5.1chサラウンドでは、基本的に各チャンネルへ再生する音を割り振る。一方ドルビーアトモスでは「オブジェクト」と呼ばれる音の位置や動きに関する情報を音源に持たせる。この方式が「オブジェクトオーディオ」だ。

そのため再生するスピーカーの数や配置が異なっても、その環境に合わせて音の位置を再構成し、制作者が意図した空間表現を再現しやすいのがドルビーアトモスの特徴となる。この技術はもともと映画館などさまざまな規模の施設で同様の音響表現を実現することを目的として発展してきた。映画館ごとに空間の広さやスピーカー数が違っていても、作品が意図する音場を再現できることが求められたからだ。

その特徴はクルマの中でも効果を発揮する。しかもドルビーアトモスを純正オーディオとして採用する車両では、設計段階からスピーカーの位置やチューニングを最適化できるため、空間オーディオを再生する上で非常に有利な環境を構築できる。

◆車載ドルビーアトモスはスピーカーの数に合わせて音を最適化する

カーオーディオでドルビーアトモスを再生する場合、どのような条件が必要なのだろう。一般的な2chステレオなら左右2つのスピーカーが基本となり、5.1chサラウンドではフロント、リア、センタースピーカー、サブウーファーなどを組み合わせる。

一方ドルビーアトモスでは、ホームオーディオなどでは7.1.4chといった構成が代表的だが、車載では必ずしも同じスピーカー構成を用意する必要はない。元の音源にレンダリングと呼ばれる処理を施し、車両ごとのスピーカー数や配置に合わせて再生する音を最適化できるからだ。純正オーディオに採用されるドルビーアトモスでは、搭載されているスピーカー構成を前提に車載システム側で最適化した上で再生する仕組みが採られている。

◆21スピーカーのアルファードで体感したドルビーアトモスの没入感

そこでドルビーアトモスによる音の表現を体感するため、ドルビージャパンがプロデュースしたデモカーで試聴を行った。デモカーとして用意されたアルファードには21個のスピーカーが搭載され、そのうち6個がルーフ側に配置されている。

実際に車内でサウンドを体感すると、前後左右だけでなく上下方向にも音場が大きく広がり、その空間の中に自分自身が入り込んだような感覚になる。まさに「没入感」という言葉がふさわしい。リスナーの周囲を移動する音の動きも明瞭で非常にリアルだ。

このデモカーはリア中央のリスニングポジションを重視してチューニングされており、その位置に座ると音の定位がより鮮明になり、空間オーディオならではの立体的なサウンドを体感できた。

◆ドルビーアトモスは音の演出だけでなく音楽の聴き方も変える

ドルビーアトモスや空間オーディオというと、移動する音や立体的なサウンドといった派手な演出に注目しがちだ。しかし魅力はそれだけではない。音の表現方法そのものを広げられる可能性を持っている。

例えばリスニングポジションの考え方を変えることで、オーケストラの指揮者の位置で音を聴いているように表現したり、ホールの最前列で鑑賞しているような雰囲気を作ったりすることもできる。バンド演奏ならボーカルの立ち位置にリスナーを配置し、後方からドラムが聴こえるような音場を作るといった表現も可能だ。

さらに音そのものの聴こえ方を進化させられる可能性もある。複数の楽器を演奏している位置が近いと、音が重なってマスキングが生じ、一部の音が聴こえにくくなることがある。しかし空間上で音の位置を分けて表現できれば、それぞれの楽器をより明瞭に感じさせることも可能になる。結果として聴き取れる音の情報量が増え、よりリアルで緻密なサウンドを楽しめる可能性を秘めている。

このように空間オーディオの最先端を行くドルビーアトモスは、車載オーディオでも採用が広がっている。対応音源も増えつつあり、今後オーディオのメインストリームのひとつになる可能性は十分にある。カーオーディオ好きにとっても、映画の音響効果だけではなく音楽を新しい形で楽しめる技術として注目すべき存在だ。

◆市販カーオーディオでもドルビーアトモスが楽しめる時代へ

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そんなドルビーアトモスは、カーオーディオの世界ではこれまで自動車メーカーの純正オーディオを中心に発展してきた。そのため高級車などに設定された専用システムを選ばなければ体験できず、非対応車や現在所有しているクルマへの後付け導入は難しいと思われてきた。

しかしパイオニア・カロッツェリアのディスプレイオーディオ「DMH-SF1000」が登場したことで状況は変わった。同機は市販カーオーディオでドルビーアトモスによる空間オーディオ再生に対応し、純正採用車以外でもその世界を体験できるようにしたモデルだ。

純正オーディオの場合、搭載する車種やスピーカーシステムはあらかじめ決まっている。その環境に合わせて音声信号をレンダリングし、最適な再生環境を構築できる。一方「DMH-SF1000」は市販オーディオのため、取り付ける車種もスピーカー構成もさまざまだ。そうした幅広い環境でドルビーアトモスを体験できるようにしている点が大きな特徴となっている。

◆DMH-SF1000は一般的な4スピーカーで高さ方向まで表現

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具体的にはフロント左右、リア左右という一般的な4スピーカー構成があればドルビーアトモスを楽しめる。多くのユーザーが大掛かりなスピーカー追加をすることなく空間オーディオを導入できる点は大きなメリットだ。

その鍵を握るのがパイオニアがこれまで培ってきたチューニング技術だ。4スピーカー構成でも、ドルビーアトモスの空間を表現可能なデータを提供する特性を利用して、スピーカーのない上方向の音が聞こえるように処理を行い、それをパイオニアのチューニング技術(オートTA・オートEQ等)で車両環境に合わせて仕上げることで、音の反射や人間の聴覚特性を利用して、ルーフスピーカーを追加することなく立体的な音場を作り出しているのがポイントだ。

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実車に装着された「DMH-SF1000」でドルビーアトモス音源を試聴すると、再生されている音の空間へ自分自身が入り込んだような感覚になる。従来のステレオサウンドのように前方に定位する音像だけではなく、天井方向からも音が降り注いでくるように感じられ、後方を含めた全方位の音に包み込まれる。没入感の高さは明らかだ。

試聴では制作者の意図に合わせて楽器やボーカルが縦横に移動するコンテンツも用意されていた。音が頭上を通過したり、リスナーの周囲を回り込んだりする感覚は従来のステレオ再生では味わいにくい。実際のステージ演奏とは異なる表現ではあるが、ドルビーアトモスだからこそ可能になる新しい音楽表現として興味深い。

◆Apple Musicのドルビーアトモス音源をCarPlay経由で再生

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「DMH-SF1000」でドルビーアトモスを楽しむ場合、対応する音源も必要になる。現時点ではApple Musicで配信されているドルビーアトモス対応音源をApple CarPlay経由で再生するのが基本となる。

ただし多くのユーザーにとって所有している楽曲の大半は従来型のステレオ音源だろう。「手持ちの楽曲も空間オーディオのように楽しみたい」と考える人は少なくないはずだ。

◆通常のステレオ音源を立体化する「ステレオスペーシャルサウンド」

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そこでパイオニアが「DMH-SF1000」に搭載したのが「ステレオスペーシャルサウンド」だ。通常の2chステレオ音源を使いながら、立体的な音場を表現する独自機能となる。

従来のステレオ再生では左右と前後を中心とした平面的な音場になりやすい。しかしステレオスペーシャルサウンドを利用することで高さ方向にも音場が広がったように感じさせる。その仕組みには、人間が音の方向を判断する際の聴覚特性などが利用されている。

こちらも「DMH-SF1000」を搭載したデモカーで試聴した。通常のステレオ再生からステレオスペーシャルサウンドへ切り替えると、音場がふわっと上下左右に広がる感覚が得られる。まるで広いライブ会場に入ったかのような印象だ。

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実際には頭上にスピーカーがなく、音源にも高さ情報が含まれていないにもかかわらず、上方向にも音が存在するように感じられるのが興味深い。しかも派手な演出を加えた不自然なサウンドではなく、自然に音場が広がっているように感じられた点も好印象だった。既存のステレオ音源を活用できる点で、ステレオスペーシャルサウンドは空間オーディオを身近にするもうひとつの選択肢となりそうだ。

◆ドルビーアトモスはカーオーディオの新しいスタンダードになるのか

カーオーディオの世界でもドルビーアトモスをはじめとする空間オーディオへの注目度は急速に高まっている。自動車メーカーによる純正採用だけでなく、市販カーオーディオにも対応モデルが登場したことで、これまでよりはるかに身近な存在になった。

従来のステレオ音源とは異なる立体的な音表現は、一度試聴すれば違いを体感しやすい。さらに空間オーディオを前提とした音楽制作や対応音源が増えていけば、アーティストや制作者側の表現方法もさらに広がっていくだろう。

「良い音」を追求してきたカーオーディオに「どのような空間で音を聴かせるか」という新たな要素を持ち込んだドルビーアトモス。これからの車内エンターテインメントを変える新世代のオーディオ技術として、その進化に注目したい。

《土田康弘》

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