ポルシェが開発を進める次世代『718ボクスター』はEVになる予定だが、プロトタイプがこれまでで最もカモフラージュの少ない姿を見せた。シリーズ初のEVは長期間にわたって開発テストが続けられており、いよいよ市販モデルの姿が見えてきた。
【画像】ポルシェ 718ボクスターEV プロトタイプとICEの現行
今回捉えられたプロトタイプは、ライト周辺やリアクォーターパネルに偽装用ステッカーが残されているものの、前後バンパーを覆っていた大掛かりなカモフラージュはほぼ取り払われている。
◆フロントエンドに縦型スリット
特に注目されるのがフロントだ。グリル部分には『911』の「911 GTS」や「911ターボ」と同様の縦型アクティブ・クーリング・スリットを装備していることが確認できる。いっぽう、ベースモデルや兄弟車となる次期『718ケイマンEV』では、「911カレラ」などに近い、よりシンプルなグリルが採用される可能性がある。
リアには大型ディフューザーを装備する。EVのためエキゾーストパイプはない。ポルシェが718ボクスター/ケイマンのEV化計画を現在も進めていることをうかがわせる。
◆高性能仕様の可能性
さらに今回のテスト車両には、高性能モデルであることを示唆する装備も確認された。
ドアのインナーハンドルには通常のレバーではなく、布製のループ式ストラップを採用している。これは「911 GT3」や従来の「718ケイマンGT4」、「718スパイダー」など、軽量化を重視する高性能モデルで見られる装備だ。このため今回のプロトタイプは、通常のボクスターEVではなく、将来設定される高性能仕様の可能性もある。
ポルシェ 718ボクスターEV プロトタイプ
◆初のEV、初のAWD
パワートレインについては、ベースモデルがリアを駆動するシングルモーター仕様となるいっぽう、上位モデルには前後にモーターを搭載するデュアルモーター仕様が設定されるという。実現すれば、ボクスター/ケイマンとして初のAWDモデルとなる。
その性能を占うヒントとなるのが、ポルシェが開発したレーシングコンセプト『GT4 e-Performance』だ。これを参考にすると、高性能AWD仕様では最高出力が最大612ps(450kW)級に達する可能性もある。さらに『タイカン』に導入された、仮想的な変速感を演出する機能が採用される可能性もあるという。
バッテリー配置も一般的なEVとは異なる。トランスミッショントンネル部分とシート後方にT字型のバッテリーを配置することで、床面の上昇を抑えながら、従来のミッドシップエンジン車に近い着座位置と重量配分を狙う。
ポルシェ 718ボクスターEV プロトタイプ◆エンジン車は高性能グレードに限定?
次世代718ボクスター/ケイマンのEVモデルは、2027年の登場が見込まれている。いっぽうで、718を巡るポルシェの電動化戦略には変化も起きている。
当初、次世代718はEVへ全面移行する構想だったが、その後ポルシェは電動化戦略を修正。EVモデルの投入後、数年遅れて内燃エンジンを搭載する718も追加する方向へ転換したとされる。ただし、エンジン車は高性能グレードに限定される可能性がある。
ポルシェ 718ボクスターEV プロトタイプ◆ポルシェの電動化戦略に変化
背景にあるのが、EVを取り巻く市場環境の変化だ。718の電動化計画が本格化した2010年代後半は、タイカンの登場もあり、高性能車でも急速にEV化が進むとみられていた。しかし現在、EVの普及速度には市場によって大きな差が生じている。特に米国や高級スポーツカー市場では、依然として内燃エンジンを求めるユーザーが少なくない。
こうした状況を受け、ポルシェはEVだけに絞るのではなく、内燃エンジン車も残す方向へ戦略を修正したとみられる。ただし、次世代718のEV開発そのものを止めるのは簡単ではない。電動ボクスター/ケイマンは、アウディが開発する次世代スポーツカーともプラットフォームやハードウェアを共有するとされ、すでに開発はかなり進んでいる。
長い開発期間を経て、市販型に近い姿を現した次世代718ボクスターEV。最大612ps級の出力とシリーズ初のAWDが実現すれば、従来とは大きく異なる718となる。同時に、エンジン搭載モデルも残る可能性がある。EVと内燃エンジンという2つの選択肢を用意することになるのか。次世代718は、ポルシェの電動化戦略を映す重要なモデルとなりそうだ。




