【メルセデスベンツ CLAシューティングブレーク 新型試乗】社運を賭した力作であることは間違いない

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メルセデス・ベンツCLA220シューティングブレーク(FF/8AT)【試乗記】

メルセデス・ベンツの「CLA」がフルモデルチェンジ。シャシーやパワーユニット、さらにインフォテインメントシステムなど、すべての要素を刷新したとされる、メルセデスの次世代を切り開くモデルだ。1.5リッターハイブリッドの「シューティングブレーク」を試す。

BEV専用からの方針転換

ご承知のように、新しいCLAには電気自動車(BEV)とハイブリッド車(HEV)が用意される。これまでのCLAは、ダイムラークライスラー(と三菱)時代にまでさかのぼる「GSプラットフォーム」の発展型を土台としていたが、今回は全身が完全新開発という。

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ところで、メルセデスは2021年7月に「(市場が許せば)2030年までに全車BEV化する」と明言していたものの、2024年2月にその方針を撤回した。ちなみに、新型CLAのワールドプレミアは昨2025年3月。こうした時系列から見ると、このクルマの企画開発がスタートしたのは、ちょうどメルセデスが全車BEV化にまい進していた時期と推察される。

まして、CLAは「GLA」「GLB」「Aクラス」「Bクラス」などと基本骨格を共有してきたコンパクトなエントリーメルセデスだ。一般論としては、コンパクトモデルこそBEV化には適している。当時のメルセデスの勢いから考えても、新型CLAというか、その基礎となる「MMA」プラットフォームはBEV専用であるほうが、筋としては納得しやすい。しかも、新型CLAの超ショートノーズのプロポーションは、見るからにBEVっぽい。

……なんてことを思っていたら、webCGでもおなじみの渡辺慎太郎さんが、雑誌の『CAR GRAPHIC』の2026年10月号で、新型CLAの背景についての記事を書かれていた。それによると、案の定、新型CLAは当初BEV専用としてスタートしたが、開発の最終盤になって、BEVだけではビジネス的に厳しいと「HEVも用意する」という軌道修正が入ったとか。この時点でパッケージレイアウトやスタイリングを変更できるフェーズはとうにすぎていたのだろう。メルセデスは開発を巻き戻すのではなく、そのままのデザインで搭載できるパワーユニットを新開発することにしたというのだ! 通常のクルマ開発とは、順序が逆である。

新型「メルセデス・ベンツCLA」は3代目。前の2世代と同様に4ドアクーペとワゴンの「シューティングブレーク」(今回の試乗車)がラインナップされる。

みっちりと詰まったエンジンルーム

今回試乗したのは、日本で売れ筋となりそうなHEVのCLA220シューティングブレークである。そうしたエピソードを念頭に、試乗車のエンジンフードを開けると、そこには機械がギチギチに詰まっている。前後左右にスキ間がほとんどないのもスゴいが、今どき「こぼれ落ちそう!?」と錯覚するくらいに、パワートレインがせり上がっているのに驚く。素人目に歩行者保護性能が心配になったりもするが、日本導入時にメディア向け技術説明会を開いて、とくに衝突安全性の高さをアピールしていたので、そこは大丈夫なのだろう。

印象的なほどコンパクトな1.5リッター4気筒ターボは、モーター内蔵の8段DCTと組み合わせられて、後輪駆動のBEV版とは正反対に前輪を駆動する。3気筒ならもう少し余裕が……とは思うが、高級ブランドを自認するメルセデスゆえ、あえての4気筒らしい。

走りだすと、4気筒にこだわった甲斐は、それなりに実感できる。加速時には心地よいエンジン音(はオプションの「スポーツエンジンサウンド」の効果もあるはず)が響いて、それとともに軽快かつスムーズに吹け上がる。さらにDCTならではの小気味いい変速が加わって、ちょっとしたスポーツユニットを思わせる味わいとなっている。また、回転上昇ととも二次曲線的にパンチが増すあたりには古典的なターボ風味もあり、素直にパワフルでもある。少なくとも、筆者のような中高年クルマオタクはちょっとうれしくなる。

停止状態から静かに発進して、スムーズに加速、その後は規則正しく加減速して、信号で停止……みたいな教科書的な走りでは、発進やアクセルオフ時には電気走行となり、途中のエンジン駆動の出入りもスムーズだ。ただ、たとえば変速とエンジン介入の瞬間がシンクロしたりすると、不意にドンと強めのショックが出たり……と、エンジン単体の魅力とはちょっとちがって、HEVとしては熟成の余地があるように思えた。

「CLA220」の1.5リッター4気筒ターボエンジン(マイルドハイブリッド)は最高出力190PS、最大トルク300N・mを発生。同じエンジンでアウトプットを抑えた「CLA180」もラインナップされている(136PS/200N・m)。

スッキリとしたステアリングフィール

シャシーの仕上がりも評価できる。速度を問わずサスペンションがしなやかにストロークしているのが手に取るように実感できて、乗り心地はすこぶる滑らかであると同時に、上屋が安定したフラットライドも印象的。その快適性はCセグメントとしては間違いなく上位にあり、しかもオーソドックスな固定減衰型ダンパーであるところに、さらに感心する。

ときおり鋭めの突き上げが不意にやってくるクセは少し気になったが、これは試乗車が、40偏平の19インチ(標準は45偏平の18インチ)タイヤとなる「AMGラインパッケージ」を装着していたのとも無関係ではないだろう。

いずれにしても、BEV最優先で基礎設計されたプラットフォームや車体が、今回のような開口面積の大きいワゴンスタイルでもすこぶる高剛性なのに加えて、四輪マルチリンクともいえる凝ったサスペンション形式も効いている。さらに、ステアリングの軽めの操舵力が舵角を問わずに安定しているのも、新型CLAの美点だ。高出力、大トルクのFF車とは思えないスッキリとしたステアリングフィールも、快適な印象に拍車をかけている。

もっとも、新型CLA最大の売りは、インパクト絶大の全面垂直ガラスのインストゥルメントパネルと、そこに3枚のディスプレイがならんだ「MBUXスーパースクリーン」だろう。ちなみに、これは上級オーディオやマルチビームLEDヘッドライトなどがセットになった57万8000円の「アドバンストパッケージ」に含まれる装備である。しかも、同パッケージは先述のAMGラインパッケージ(の代金は59万8000円)との同時選択が条件なので、スーパースクリーンを手に入れるには、120万円近いエクストラコストが必要となる。そこは要注意だ。

シャシーには新開発の「MMA(メルセデス・ベンツ モジュラーアーキテクチャー)」を使う。BEV前提のプラットフォームだけあって非常に高い剛性感が味わえる。

AIには愛着がわくものの

MBUXスーパースクリーンには、「MBUXバーチャルアシスタント」=EQ顔をしたキャラクターが常駐する(アイコンは全3種ある)。そこに組み込まれた「ChatGPT」や「Google Gemini」などのAI役を、このCLAキャラがつとめるようだ。

AIとのコミュニケーションは音声が基本で、たとえば「エアコン温度を下げて」みたいなAIが相手をするまでもない超簡単なコマンドにも、CLAキャラが可愛く反応する。オーディオがうるさかったので、「ラジオを消してください」というと、音量だけがミュートされた。しかし、選択ソースはそのままだったので、再度「ラジオを消してください」というと、「ミュートしてますけど」とちょっと口答え(?)するなど、どこか人間っぽいのには笑った。

また、どこかの宣伝にあったように「冷蔵庫にある牛肉とタマネギで夕食をつくりたい」とたずねると、和風の炒め物料理をレシピとともに紹介してくれた。さらに「それにはどんなお酒が合う?」と続けると「フルボディーの赤ワインが合います」と優等生回答。思わず「ありがとう」とつぶやくと、CLAキャラは大きく首を振りながら「とんでもございません」と答えた。謙虚なやつだ(笑)。

こうして1日~2日のにわか体験でも、CLAキャラには愛着がわいたが、いかんせんAIを使いこなせていない中高年の筆者は、これに(抱き合わせ装備分のコストを省くと)実質数十万円のエクストラを積極的に支払う気にはならなかった。ちなみにMBUXスーパースクリーン非装着でも、インストゥルメントパネルは特徴的な垂直全面ガラスのままで、運転席と中央の2枚のディスプレイは残る。個人的にはそれで十分……と思いつつ、AIのいないCLAは魅力半減という気もする。

BEV専用で開発がスタートしながら、時代の変化に即応してハイブリッドを追加し、ダイナミクス性能にも妥協なく、そしてメルセデス初の本格ソフトウエアディファインドビークルにしてAIも複数搭載……と、新型CLAがメルセデスの社運を賭した力作であることは間違いない。これまではAクラスとBクラスは現行型をもって終了という話だったが、これもまた戦略が見直されて、Aクラスについては同じMMAプラットフォームを使う新型の開発にゴーサインが出たとか。これにも期待だ。

(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=メルセデス・ベンツ日本)

WLTCモードの燃費は19.9kmリッター。500km余りを走行した今回のテストでは満タン法で12.9km/リッターという微妙なスコアに終始した。

テスト車のデータ

メルセデス・ベンツCLA220シューティングブレーク

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4730×1835×1455mm
ホイールベース:2790mm
車重:1680kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:190PS(140kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/2000-3500rpm
モーター最高出力:30PS(22kW)/1150rpm
モーター最大トルク:200N・m(20.4kgf・m)/0-1000rpm
タイヤ:(前)225/40ZR19 93W XL/(後)225/40ZR19 93W XL(ブリヂストン・トランザ6)
燃費:19.9km/リッター(WLTCモード)
価格:710万円/テスト車=854万6000円
オプション装備:AMGラインパッケージ(59万8000円)/アドバンストパッケージ(57万8000円)/ボディーカラー<MANUFAKTURアルペングレー[ソリッド]>(27万円)

テスト車の年式:2026年型
テスト車の走行距離:2194km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:513.1km
使用燃料:39.8リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:12.9km/リッター(満タン法)/13.3km/リッター(車載燃費計計測値)

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《webCG》

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