【日産 エルグランド 新型試乗】「走りのいいミニバン」でアルヴェルに立ち向かうことはできるか日産エルグランドG e-4ORCE(4WD)【試乗記】
日産のプレミアムミニバン「エルグランド」がフルモデルチェンジ。その動力を担う第3世代の「e-POWER」は優れたドライバビリティーとともに、懸案だった高速燃費の改善もうたう。ロングドライブで進化のほどを確かめた。
敵もさるもの
アイポイントが高く、ウィンドウ面積も大きく見晴らしがいいおかげで気がつきやすいのかもしれないが、街なかでも高速道路でもずいぶんと注目されているようで、話題の新型車であることを実感する。16年もほったらかしにしておいて突然帰ってきた昔なじみを、待ってました! と歓迎してくれていると考えるのはあまりにも都合がよすぎるが、それでも2026年8月末時点で受注9000台以上というから大したものだ。王者「アルファード/ヴェルファイア」ではなく、あえて新型エルグランドを選んでくれる人がこれほどいるということを日産は肝に銘じるべきだろう。
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しかしながら、世の中はそんなありがたい応援団ばかりではない。ライバルになるかもしれないニューモデルのデビューを黙って見ているようなトヨタではない。エルグランドの発売に先立って現行型アルファード/ヴェルファイアのマイナーチェンジを実施。周波数感応式ダンパーを全車に標準装備、さらにハイブリッド車にも装備が簡潔な「G」グレードを追加するなどの手を打ってきた。もともとガソリン/ハイブリッド/プラグインハイブリッドのパワーユニットをそろえ、そのすべてにFWDと4WDを用意する幅広いラインナップを誇っていたが、ハイブリッドのGなら「E-Four」でも500万円台から手に入るというさらに隙のない布陣となった。アルヴェル合わせて月間1万台前後を売る圧倒的な強さの理由が分かろうというものだ。
いっぽうご存じのとおり、エルグランドのパワートレインは「e-POWER」のみで駆動方式も4WDの「e-4ORCE」のみ、グレードも「X e-4ORCE」と「G e-4ORCE」の2種類のみ(他に日産モータースポーツ&カスタマイズによる特装車があるがメカニズムの違いはなし)という割り切った車種構成である。Xは689.7万円、上級グレードのGは757.9万円と(最近の日産車はどうしても割高に感じられる)絞り込んだラインナップでアルヴェルに立ち向かうのは容易ではない。

モーター駆動で予想以上に身軽
もちろん、そんな現実は日産も百も承知のはず。それゆえにライバルとは異なる際立った特徴を持つプレミアムミニバンを目指したと思われる。全長はほぼ5m、全幅1.9m、全高も2m近いボディーサイズを持ち、さらにパリッとしたボディーパネルが裾広がりになっているエルグランドはいかにも堂々たる体躯である。全幅と全高はライバルをわずかに上回っており、特に全高は先代と比べて165mmも高くなっているという。それを生かして、ドライバーのアイポイントは同じく76mmも高くなっているというのが自慢らしい。聞くところによれば、従来型のユーザーから「ライバル車から見下ろされるのが嫌だ」という声があったためという。こういう要望にも応えなければいけないのだから、ミニバン開発はなかなかに大変だ。
G e-4ORCEにツインガラスルーフや後席用の3個のモニターなどオプションをたっぷり盛り込んだこの試乗車は車検証値の車重が2490kg(カタログ値は2440kg)と、もはや大型BEV並みのヘビー級なのだが、それを感じさせない身軽さを備えているのが驚きだ。発進時に「よっこらしょ」と動き出すのではなく、リニアにスイッと動き出し、その先も滑らかに力強く加速するだけでなく(大差ではないがアルファードのハイブリッドよりパワフル感あり)、渋滞のなかでの微妙な速度調整もやりやすい。電動モーターの制御についてはさすがに一日の長がある。加減速時に軽快さを感じるのは前後2モーターのe-4ORCEの効果だろう。さらに発進時や停止直前のスクォットとダイブを制御する機能も盛り込まれているという。

第3世代e-POWERの燃費
第3世代をうたう新型e-POWERは発電用エンジンがまず新しい。「エクストレイル」に積まれている可変圧縮比のKR15DDT型ではなく、同じ1.5リッター3気筒ターボながらさらにロングストローク(79.7×100.1mm)のZR15DDTe型(最高出力140PS/5000rpm、最大トルク228N・m/3600rpm)という高効率エンジンを新たに開発した(欧州向け新型「キャシュカイ」にも採用)。前後の駆動モーターの最高出力/最大トルクはそれぞれ205PS/330N・m、136PS/195N・mという。KR15DDTは日産自慢の革新的エンジンながら、複雑なリンク機構や高価なコーティングを特徴とするVCターボは発電用には最適ではない(コストもかさむ)という判断なのだろう。さらにモーターや発電機、インバーター、増速機と減速機を一体化した「5-in-1」電動ユニットを採用、振動抑制と剛性アップに貢献しているという。
今回はいつもの箱根山中だけでなく、高速道路を長距離走る機会もあった。制限速度を守って(特に燃費走行することはなく)走った結果は、車載燃費計によれば100km/h区間で12~13km/リッターを記録、120km/h区間ではそれが11.8km/リッターぐらいに低下する。やはり高速域はあまり得意ではないらしく、100km/h以下でおとなしく走ったほうが数字が伸びるようだ。WLTCモード燃費は両グレードとも16.8km/リッター(高速モードは16.9km/リッター)である。およそ1200kmの総平均は12.2km/リッター(満タン法計測)とボディーサイズの割には優秀といえるが、それでもライバルと同レベルである。燃料タンク(無鉛レギュラー)は67リッター入りで、かなりの航続距離を持つと言えるだろう。

脚力が自慢
ドライバビリティーに優れ、しかもさまざまな対策のおかげで静かなことがエルグランドの美点、エンジンが始動してももはや耳障りではない。さらに「インテリジェントダイナミックサスペンション」と称する電子制御連続可変ダンパーを標準装備することも特徴だ。「スポーツ」「スタンダード」「コンフォート」など計6種のドライブモードを選択可能で、それに応じて駆動力や減衰力が制御される。低速でのとろけるような乗り心地ではなく、速度を問わず落ち着いたフラットな姿勢制御を志向しているようで、路面によってはフロアに振動が残るなど弱点なしとは言わないが、実際ミニバンとしてはかなりレベルが高い。
着座位置の高いドライバーに不安感を抱かせないボディーコントロールも見事である。レスポンスに優れる前後モーターの駆動力コントロールは効果てきめん、この図体にもかかわらず山道でもオヤッと驚くほど自然にフラットに曲がる。もちろん、どんな電子制御アシストも物理的限界は超えられない。調子に乗って下り坂のコーナーでおっとっと、と慌てないように、大きく重く重心も高いことを忘れてはいけない。
脚が自慢で走行性能に自信あり、という開発陣の主張に間違いはない。ロングドライブでもドライバーに不安や疲労を感じさせないという点ではまさにドライバーズミニバンと言えるだろう。ただし、それだけがミニバンを選ぶ理由ではないのはご存じの通り。一気に空白期間を埋めようと欲張るのではなく(悠長なことを言っていられないのも事実だが)、着実に魅力を伝える努力を続けてほしいところである。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=日産自動車)

テスト車のデータ
日産エルグランドG e-4ORCE
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4995×1895×1970mm
ホイールベース:3000mm
車重:2440kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:140PS(103kW)/5000rpm
エンジン最大トルク:228N・m(23.2kgf・m)/3600rpm
フロントモーター最高出力:205PS(151kW)/4400-8500rpm
フロントモーター最大トルク:330N・m(33.7kgf・m)/0-4300rpm
リアモーター最高出力:136PS(100kW)/5500-1万0900rpm
リアモーター最大トルク:195N・m(19.9kgf・m)/0-3000rpm
タイヤ:(前)235/60R18 103H/(後)235/60R18 103H(ヨコハマ・アドバンV61)
燃費:16.8km/リッター(WLTCモード)
価格:757万9000円/テスト車:933万9850円
オプション装備:ボディーカラー<FUJI DAWN -フジドーン-/至極 -シゴク-プレミアム2トーン>(25万3000円)/IRカット&スーパーUVカット高遮音ガラス<プレミアム仕様、フロント、フロントドア、フロントクオーター>+IRカット&スーパーUVカット高遮音プライバシーガラス<プレミアム仕様、リアドア>+ステアリングスイッチ<プロパイロット2.0>+ヘッドアップディスプレイ<カラー、プロパイロット2.0情報表示>+BOSEプレミアムサウンドシステム<22スピーカー、3Dサラウンドサウンド、オーディオゾーンコントロール、通話音ゾーンコントロール>+ダブルシャークフィンアンテナ+プロパイロット2.0+プロパイロットリモートパーキング(73万2600円)/ツインガラスルーフ<電動チルト&スライド、UVカットプライバシーガラス>(15万4000円)/クリアビューパッケージ<リアLEDフォグランプ[中央]、ワイパーデアイサー>(3万3000円)/シートバックパーソナルリアモニター取り付けパッケージ(1万6500円) ※以下、販売店オプション ウィンドウはっ水12カ月<フロントウィンドウ+フロントドアガラスはっ水処理>(1万4850円)/後席専用モニター<HDMI、NissanCONNECTインフォテインメントシステム搭載車用、ツインサンルーフ搭載車用>(17万6000円)/シートバックパーソナルリアモニター(26万1000円)/フロアカーペットセット<エクセレント>(11万9900円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:3838km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:1246.4km
使用燃料:102.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:12.2km/リッター(満タン法)/11.8km/リッター(車載燃費計計測値)






