タイヤ交換の「締め忘れ」どう防ぐ? KTC「e-整備TIRE」、繁忙期の作業リスクをデジタル管理…ジャパンモビリティショービズウィーク2026

KTC「e-整備TIRE」(ジャパンモビリティショービズウィーク2026)
KTC「e-整備TIRE」(ジャパンモビリティショービズウィーク2026)全 12 枚

10月13日に開幕した「ジャパンモビリティショービズウィーク2026」。京都機械工具(KTC)のブースで紹介されていたのが、10月からサービスを開始したタイヤ脱着作業支援・管理サービス「e-整備TIRE」だ。

【画像】KTCがブースで紹介した「e-整備TIRE」

これから秋から冬にかけて、タイヤショップやカー用品店、ディーラー、整備工場などでは夏タイヤからスタッドレスタイヤへの交換が集中する。1日に何台もの車両が入庫し、タイヤ交換以外の作業や顧客対応も並行して行われる繁忙期だ。

そこで問題になるのが、ホイールナットの締め忘れや締めすぎ、あるいは車両ごとに異なる規定トルクの設定間違いといったヒューマンエラーである。

タイヤ脱着は日常的に行われている整備作業のひとつだが、ひとつのミスが重大な事故につながる可能性がある。しかも重要なのは、単に作業者が「正しく締める」だけではない。作業を管理する側にとっては、「正しく締めたことを後から確認できる」ことも必要になる。

KTCが「e-整備TIRE」で狙うのは、まさにこの部分だ。同社は「正しく締める」ことと「正しく締めたと証明できる」ことをタイヤ交換現場共通の課題と位置付けている。

◆ナンバープレートを撮影すれば「そのクルマのトルク」が出てくる

ホイールナット1本ごとに、締付結果を記録ホイールナット1本ごとに、締付結果を記録

e-整備TIREの大きな特徴は、作業開始時の手軽さにある。

基本操作は、スマートフォンなどで車両のナンバープレートを撮影するところから始まる。そこから車両を特定し、その車両に対応したホイールナットの目標トルク値を取得。対応するKTCのデジタルトルクツールへ設定し、締付け作業を行う。

つまり作業者がその都度、車種や年式を確認して規定トルクを調べ、工具へ数値を入力するという一連の作業を減らせるわけだ。

ホイールナットの規定トルクは、すべてのクルマで共通ではない。メーカーはもちろん、同じメーカーでも車種や年式によって異なる場合がある。多種多様な車両が次々に入庫する店舗では、1台ごとに正しい数値を確認し、確実に作業する必要がある。

e-整備TIREでは車両データベースとトルク値データベースを利用し、この確認・設定をシステム側で支援する。KTCによれば、車両データベースは自動車検査登録情報協会および全国軽自動車協会連合会のデータと連動している。輸入車については、ナンバープレートからの車両情報取得には対応せず、車種・トルク値を手入力して使用する仕様だ。

◆「締めたつもり」をなくす、ナット1本ごとの記録

KTC「e-整備TIRE」(ジャパンモビリティショービズウィーク2026)KTC「e-整備TIRE」(ジャパンモビリティショービズウィーク2026)

もうひとつの重要なポイントが、ホイールナット1本ごとに締付け結果を記録できることだ。タイヤ交換で怖いのは、「作業したと思っていた」「締めたはずだった」というケースだろう。

とりわけ繁忙期には、作業途中に別の仕事が入ったり、顧客対応が必要になったりすることもある。複数の車両を扱う現場では、作業者個人の記憶だけに依存した管理には限界がある。

e-整備TIREでは、締付けたトルク値をホイールナット1本単位でデータとして記録する。そのため締め忘れや締めすぎを防ぐだけでなく、「どこまで作業が完了しているのか」を確認しやすくなる。

KTCが目指しているのは、熟練者の注意力を置き換えることではなく、人間の注意力だけに安全を委ねない仕組みをつくることだと言える。

これは作業者だけでなく、店舗を管理する側にもメリットが大きい。作業結果はクラウドに保存され、Webブラウザから確認可能。作業品質を「作業者がちゃんとやったはず」という前提ではなく、記録によって確認できるようになる。

タイヤ交換後のホイール脱落などは、ユーザーの安全に直結するだけに、整備事業者にとっても大きなリスクとなる。作業そのものの確実性と、作業した事実を記録として残すこと。この2つを同時に実現しようというのがe-整備TIREの考え方だ。

◆タイヤ溝も測定、そのまま顧客への提案材料に

対応デプスゲージで測定したタイヤ溝の深さを記録し、減り具合をわかりやすく表示対応デプスゲージで測定したタイヤ溝の深さを記録し、減り具合をわかりやすく表示

e-整備TIREが管理するのはホイールナットだけではない。

KTCの対応するタイヤデプスゲージを使用すれば、タイヤの残り溝を測定し、その結果も記録できる。また、単なる整備記録だけでなく、次回のタイヤ交換時期などを提案するための材料として活用することも想定されている。

つまりe-整備TIREは、安全管理ツールであると同時に、店舗にとっては顧客とのコミュニケーションを支援するツールでもある。

「タイヤが減っているので交換したほうがいい」という口頭での説明だけではなく、測定値を記録として見せられる。整備内容の“見える化”は、ユーザー側の納得感にもつながりそうだ。

対応デプスゲージで測定したタイヤ溝の深さを記録し、減り具合をわかりやすく表示対応デプスゲージで測定したタイヤ溝の深さを記録し、減り具合をわかりやすく表示

◆タイヤ交換のDX、本質は「速くすること」だけではない

タイヤ交換というと、一見すると昔から変わらない「工具を使ってナットを締める作業」に見える。しかし、e-整備TIREがデジタル化しようとしているのは、工具そのものだけではない。

どの車両を、どの規定値で、どのナットまで締め、どんな結果だったのか。

これまで作業者の確認や記憶、紙の記録などに依存していた工程を、車両情報、工具、測定値、作業記録まで一連のデータとしてつなぐことに意味がある。

特にタイヤ交換が集中する秋から冬にかけては、店舗にとって「いかに多くの台数をこなすか」と同時に、「忙しい状況でも、いかにミスを起こさないか」が大きな課題となる。

ナンバープレートを撮影し、正しいトルク値を呼び出し、その値を工具へ設定する。そしてナット1本ごとの作業結果まで残す。

KTCのe-整備TIREは、タイヤ交換を単純に効率化するためのシステムというより、繁忙期でも作業品質を落とさないための「仕組み」を現場に持ち込むサービスと見ると、その狙いが分かりやすい。

「e-整備TIRE」に対応するTRASASデバイス「e-整備TIRE」に対応するTRASASデバイス

◆2000年以降の車両に対応、大型車は2027年以降に

e-整備TIREは法人・事業者向けのサービスで、アプリを利用して作業を行い、記録はPC、スマートフォン、タブレットなどのWebブラウザから閲覧できる。KTCの「TRASAS」シリーズのデジタルトルクツールやタイヤデプスゲージと組み合わせて使用する。

料金は初期設定費用が3万円、ライセンス登録費用が1ライセンスあたり3000円。月額利用料は1ライセンスあたり6000円とされている。

導入方法についても、作業者1人につき1ライセンスを割り当てる方法と、店舗単位でライセンスを運用する方法が例示されており、店舗の規模や運用方法に合わせた使い分けが想定されている。

対応車両は2000年以降に発売された軽自動車、小型・普通乗用車、輸入車、小型・普通貨物車など。大型車(トラック)については2027年以降の対応を予定している。

今後はタイヤまわりだけでも、エアゲージ(空気圧)、タイヤの使用年数、ブレーキ残量などへの対応の可能性を探るという。

《宮崎壮人》

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