ソフトウェアによってクルマの機能や価値を進化させるSDV。その開発競争が激しくなる中、日本の車載ソフトウェア開発現場は何を課題と捉えているのか。QNXは10月27日、意識調査「Under the Hood:SDV開発者レポート2026」の日本市場分析を発表した。
調査で浮かび上がったのは、サイバーセキュリティや協業の重要性への理解が進む一方、ソフトウェアの統合や調達、協業を支える社内体制に課題が残る実態である。
この調査はQNXの委託により、市場調査会社OnePollが2026年7月20日~8月4日にオンラインで実施。日本、米国、中国、韓国など8カ国の車載組み込みソフトウェア開発者1100人を対象とし、日本からは100人が参加した。なお、調査は前年に続く2回目となるが、対象国の構成が一部異なるため、世界平均の前年比較は傾向を示す参考値となる。
調査結果を説明したQNXのテクニカルソリューション アカウントマネージャー APAC、遠藤真樹氏は、ソフトウェアの大規模化や規制対応に加え、中国メーカーの開発スピードが現場への圧力になっていると指摘した。QNXによれば、中国メーカーの車両開発期間は約24カ月で、既存メーカーで一般的な40~50か月のおよそ半分。日本の回答者も79%が、開発スピードで勝る競合からのプレッシャーを感じていると答えた。
◆セキュリティを品質の中核に据える日本

そうした中で最も際立った変化とされたのが、サイバーセキュリティへの危機感だ。SDV展開の最大リスクとして「サイバーセキュリティ脆弱性」を挙げた日本の開発者は60%に及ぶ。前年の41%から19ポイント上昇し、世界平均47%を上回って8か国で最高となった。さらに87%が、3年以内にSDVがサイバー攻撃の主要な標的になると予測している。
今後5年で重要になるスキルについても「サイバーセキュリティ」が64%で最多となり、「AI/機械学習の統合」が63%で続いた。今後3年でAIが最も影響を与える領域についても、日本ではサイバーセキュリティが30%で首位。世界平均では15%で4位にとどまっており、この領域に対する日本の関心の高さが表れた。
これについてQNXは、日本の開発者がセキュリティを開発の後段で追加する対策ではなく、設計段階から組み込むべき要件として捉え始めていると分析する。つまり、セキュリティをクルマの品質を支える中核的な要素と位置付ける認識が、前回の調査より強まったというわけだ。
◆開発工数の35%を費やすソフトウェア統合
開発上の課題については、世界と日本で違いが見られた。世界全体では「デバッグ・テスト」が44%で最多だったが、日本では29%で7位にとどまる。一方、日本の最多は「統合の複雑さ」と「長い開発サイクル」で、ともに45%と高い。また、「調達・ライセンス取得の遅れ」は前年の23%から39%、「SoCの柔軟性不足」は21%から37%へ上昇している。
遠藤氏は、世界が検証段階で苦労する一方、日本は必要な部品やソフトウェアを揃え、それらを組み合わせる段階に課題を抱えている可能性を指摘した。ただし、今回の調査では、その背景にある具体的な原因の特定には至っていない。
また、日本の開発者は、OSなどの基盤ソフトウェアを組み合わせ、正しく動くよう調整する作業に工数の平均35%を費やしているとの調査結果も出た。66%が車種や案件をまたいで共通して使えるソフトウェア基盤がないことを、開発が遅れる要因に挙げたのだ。
つまり、基本部分の調整を毎回繰り返していては、新機能の開発に十分な時間を割くことはできない。そのため現場では、開発ツール同士の連携改善や、あらかじめ必要なソフトウェアを組み合わせた基盤の活用によって、調整や動作確認の負担軽減が求められていることが鮮明になったのだ。



