警察庁が『人間Nシステム』導入の布石

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警察庁が『人間Nシステム』導入の布石
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警察庁は、“ゼロ免許”すなわち、免許を返納した高齢者などを対象に、身分証明書としてだけ使うことができる「運転資格がない免許証」(米国での「ノードライバーライセンス」)の発行を検討しているということだ。

これは、今年5月の、運転免許制度に関する懇談会「運転免許証の更新制度についての提言」において「運転免許証の身分証明書的な機能からすれば、運転免許証を持っていた人が更新しなかった場合について、何らかの形で身分証明書的に用いるものを持つことができるようにすることも併せて検討していくことが望まれる。」と提言されたのを受けてのことのようだ。

98年4月にスタートした、70歳以上の高齢ドライバーを対象とした免許返納制度(視力や体力の低下した高齢者に免許を返納させる)をはじめ、更新をしなかったドライバーや、はじめから運転免許資格を持たない者を対象に、身分証明書として利用してもらおうというものだ。

こういったタテマエの部分だけきかされると、「国民への利便性向上」のための「規制改革」といったイメージを受けるが、警察庁の本当の狙いはそんな生易しいものではない。警察庁にとってのゼロ免許とは、より多くの国民の顔貌データ(顔写真)の最新データが収集可能になるということとイコールになるからだ。

こうやって、収集された“顔貌”データベースが、最も威力を発揮するのが、“顔貌認識システム”だ。車両ナンバーならぬ、“人間版Nシステム”といっていいだろう。 すでに商品化されている、ある電子機器メーカーの顔貌認識システムは顔の位置関係と、パーツの特徴から照合する、本人排除率1%以下・他人受け入れ率1%以下と、100%に近い認識率を誇るという。

94年5月施行の運転免許証カードサイズ化に乗じて、「免許台帳ファイリングシステム」なるものが導入され、運転免許更新時に撮影の顔写真もまた、イメージデータ(顔写真デジタル画像データ)として光ディスクに保存しているとのこと。

クルマのNシステムが監視システムとして成立する前提として、自動車登録データベースの存在がある。同様に「ゼロ免許」で顔貌データベースを収集した警察庁が、このシステムを街頭などに設置したら、どういうことになるのだろう。まさに「人間Nシステム」である。

ある事情通に聞いたハナシだが、「すでに水面下では、メーカー・警察庁・法務省のあいだで、導入にむけたプロジェクトが始まっています。技術的な問題はすでに解決しているので、あとはどうやって法的問題をいかにクリアしようかということだけ」ということだ。

そして「人間Nシステム」導入にむけ、免許証取得者以外のより多くの国民の「顔貌データ」を収集することが、「ゼロ免許証」の最大の目的なのである。

《小谷洋之》

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