信仰を理由に事故の謝罪せず---加害者の不誠実か、否か

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交通事故の賠償金支払いを求めていた裁判で福岡地裁は17日、加害者側の不誠実を理由とし、慰謝料を増額して支払うことを容認する判決を言い渡した。信仰している宗教の教義を理由に、遺影に向かって謝罪しなかったことが不誠実行為と認定されたようだ。

裁判記録などによると、訴えの理由となった交通事故は2000年9月に起きた。福岡県二丈町で、当時19歳の少年が運転する乗用車と、55歳の男性が運転する軽貨物車が正面衝突するという事故で、軽貨物車を運転していた男性が内臓破裂などを原因に死亡している。もう一方のクルマを運転していた19歳少年の居眠りによるセンターラインオーバー事故原因と警察が認定していた。

事故後、この少年は遺族の元に謝罪に訪れたが、「自分の信仰する宗教の教えに反する行為なので遠慮させていただく」として、仏前へ線香を上げることや、遺影に対しての謝罪行為などを一切行おうとしなかった。

この行為に遺族は激怒。「事故によって家族を殺されただけでなく、死後にも屈辱的な扱いを受けた」として、この19歳少年を相手に家族に対する慰謝料分を上乗せした損害賠償を請求する訴訟を起こした。が、少年側は「真剣に謝罪したが、信仰している宗教は偶像崇拝を認めておらず、仏壇の遺影に謝罪することは出来ない。信仰上の自由は憲法で保障されており、自分が被害を与えてしまったとはいえ、信仰上の問題に口を挟む権利はない」と真っ向から反論し、全面的に争う姿勢を見せていた。

17日に行われた判決公判で福岡地裁の大西忠重裁判官は、「被告側の主張するとおり、信教の自由は憲法で認められている保障されるべき権利であり、遺影に謝罪することを拒否したのがただちに不誠実な態度とは言えない」としながらも、「教義で禁じられているとはいえ、加害者側が線香を上げたり遺影に謝罪した場合に比べて、被害者側の精神的な苦痛が軽減される度合いは低い。反省しているというのなら、そのあたりを考慮する余地はあったのではないか」と、被告の少年の姿勢に疑問を投げかけた。

そして「信仰上の問題に第三者が口を挟むべきではないが、事故が自分の居眠り運転を原因としていたことを遺族側に告知しなかったことを裁判所は不誠実行為と考える」として、700万円を遺族への精神的苦痛に対する慰謝料として加算し、総額7300万円の支払いを命じた。

宗教上の問題に触れることを避け、別の不誠実理由を強引に見つけて慰謝料の増額を認めたという感が強いが、ある意味では最善の判断だったといえるかもしれない。

《石田真一》

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