昨年マツダは、新型車種の投入がなかった。その理由は、このクルマを試乗して分かった。欧州を中心に、世界中で販売される『アテンザ』は、きわめて高い実力を備えている。つまり、このクルマの開発のために昨年の空白があった、と考えてもおかしくない。アテンザはそれほどの完成度を誇っていた。
内外装はとにかく品質を追求。細部までこだわった手抜きのない仕上げがすばらしい。そして肝心の中身、それはつまり走りだが、運動性能にうるさいと言われている欧州のユーザーも納得させるレベルだ。
エンジンもいい。これまでのマツダ4気筒はイマイチ評価されていなかったが、今回の4気筒は回転時の質感とパワーがバランス良く実現されており、環境性能もバッチリ。爽快で気持ちよいエンジンに仕上がった。
しかし何と言っても注目はシャシー性能。つまり走りの良さだろう。ステアリングはしっかりとした感触をもっており、非常になめらかでダイレクト感も充分。その上、ロードスターやRX-7を彷彿とさせるようなスポーティな雰囲気も盛りこまれていた。
もちろん、乗り心地も悪くないし、高速走行時はどっしりとした落ち着きさえ感じられた。このようにアテンザは、あらゆる要素が高次元でバランスしている世界をもっていたのである。
この乗り味、走り味は、まさにBMWやメルセデスベンツといった欧州セダンに匹敵するもの。「今年注目の1台がようやくデビューした」。これが試乗を終えての素直な感想である。
《河口まなぶ》