東京と大阪で異なる判断---私有地での無免許運転は無罪、それとも有罪?

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23日、東京高裁と大阪高裁で「私有地内での無免許運転」という同一のテーマを争点に争っていた裁判で、それぞれ正反対の判決が言い渡される珍事が起きた。東京高裁判決は1審を破棄して無罪に、大阪高裁は1審の一部無罪を覆して有罪の判決を言い渡した。判決でどのような処分を下すのかは裁判官の自由心証によるものだが、正反対の判決が同日に下されるというのは珍しい。

東京高裁で争っていたのは群馬県前橋市に住む46歳の会社員が月極駐車場内で無免許運転を行い、道路交通法違反の罪に問われたというものだった。この男性は2001年6月、運転免許の停止処分中に自分が借りている駐車場内でクルマの入れ替えをしている際、誤って他のクルマと接触する事故を起こした。

保険会社からのアドバイスもあり警察に事故を届け出たところ、群馬県警は「道路交通法で定められた無免許運転に該当する」と判断、この男性を略式起訴し、前橋簡裁は8万円の罰金支払いを命じる判決を言い渡した。これに対して男性は「私有地内は公道ではなく、無免許運転には当たらない」と主張し、支払いを拒むとともに東京高裁に控訴していた。

判決で東京高裁の原田国男裁判長は「特定の人だけが利用する月極駐車場は、道交法の適用対象となる“一般交通の用に供する場所”でない。そこで運転して物損事故を起こしたという事実は消せないが、取り締まりを行う合理性はない」と判断。一審判決を破棄して、男性に無罪を言い渡した。

いっぽう大阪高裁で裁かれたのは兵庫県播磨町に住む53歳の男性。この男性は以前に行った飲酒運転で免許停止状態であったにも関わらず、飲酒した状態でラーメン店の駐車場をクルマで走っているところを警官に発見、逮捕されていた。一審の神戸地裁姫路支部では「駐車場は道交法の適用対象となる“一般交通の用に供する場所”でない」と判断。無免許と飲酒運転については不問とする判断を行った。

ところが大阪高裁では被告の飲酒を「常習である」と判断。そして「問題の駐車場は店舗に併設されたもので、不特定多数の人や車両が自由に通行する場所である以上、道路と同じ“一般交通の用に供する場所”と判断できる」として、無免許運転と飲酒運転の事実を認め、懲役6カ月、保護観察付き執行猶予5年の判決を言い渡した。

ポイントになったのは飲酒状態であるか否か、そして駐車場が月極か店舗併設であるか、だった。ただし私有地での無免許運転についてきちんと定義されていないことから起こったトラブルともいえるわけで、今後の規制の整備が求められる。

《石田真一》

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