ヤナセはかつてVW(フォルクスワーゲン)、アウディやメルセデスベンツ、キャデラック、シボレーなどの輸入権を持ち、国内の輸入業者最大手だった。ヤナセの梁瀬次郎会長が、日本の輸入車市場を作ってきたのはまぎれもない事実だ。
しかし、ヤナセは時代の波に翻弄された。メルセデスベンツが日本法人メルセデスベンツ日本(現ダイムラークライスラー日本)を設立して輸入権を剥奪、続くVW本社も輸入権を剥奪するとともに、トヨタ系ディーラーでも販売を開始した。怒った梁瀬会長は、VW、アウディ販売から撤退、これがヤナセの運命を決定付けた。
代わって輸入権を取得して取扱ったのはGMグループのオペル。しかし、年々オペルの販売は低迷、見かねた日本GMがオペル、シボレーの輸入権を自社に移管してGM車の抜本的な立て直しを始めた。しかし、これもうまくいかず、ヤナセのGM車の販売が低迷するなか、拠点のコスト負担ばかりが増して業績が悪化していた。
そこでヤナセは、背に腹は代えられないとばかりに、アウディの販売を再開し、同時に人員削減などリストラを進めた。それでも業績が改善しないため、遂にキャデラック、サーブの輸入権も返上した。輸入車業界の歴史を作ってきたヤナセだが、海外メーカーに翻弄されながら、ついにインポーターから、ただの輸入車販売会社になってしまった。
ヤナセに残る輸入権はウニモグだけ。これまで輸入車最大手としてヤナセが牛耳ってきた業界団体の日本自動車輸入組合(JAIA)は、輸入権保有が組合員の条件で、ウニモグの輸入権で組合員として認められるか注目される。加えてウニモグの年間数10台の取扱いで、梁瀬会長のJAIA名誉理事長の席も微妙だ。