正直な話、実車を見るまでは「どれほどの品質なのか」と疑問だらけだった『フィット・アリア』だが、その品質の良さには驚いた。車体各部の組み付けも良いし、いわゆる“チリ”もきっちりと揃っている。
アリアの車体開発を担当したチーフエンジニアの一尾智史さんは「タイの人たちがこのクルマに要求する品質は、日本のそれとは段違いといえるほど高い」と説明する。そのため、このクルマは従来のスモールカー以上に神経を尖らせて作られたようなのだ。
タイでは『シティ』として販売されるのは前述のとおり。現地では1.5リットルエンジン搭載バージョンのみが用意され、日本円での価格は150万円前後となる。日本での価格は約140万円で、現地との差はほとんど無いといえるのだが…。
「実は現地での150万円という価格に問題がある」と一尾さん。タイでは150万円もあれば地方に家が一軒買えてしまうという。そう、クルマ=財産なのだ。それだけに開発中も現地スタッフから「あれはダメ、これもダメ」という改善リクエストが非常に多く、逆に学ばされることの方が多かったとか。
アリアではデザイン上の観点から省かれているが、シティではドアにモールが配されている。もちろんこれも実用面を優先したから。インテリアの内装がクラスを超えた高級感を強調しているのも、「これだけのお金を払うのだから、これぐらいはやらないと顧客は満足しない」という現地営業サイドからの突き上げがあったらしい。
こうした要求の集大成がアリアというクルマを作り上げているが、裏話を聞かされると品質の良さにも納得ができる。