危険運転罪を求める遺族と、「それはできない」とする検事との間で大論争

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交通事故の被害者遺族と、事件を担当する検事との間にトラブルが起きたことで、山口地検が「両者の信頼関係が損なわれ、公判維持が難しくなる」と判断し、初公判前日までに担当検事を交代させていたことが28日、明らかになった。罪名を巡るトラブルを発端としたもので、異例の出来事。

これは昨年秋、山口県萩市内で発生した交通事故が発端となっている。昨年11月17日の午後6時ごろ、萩市椿東の国道191号線で51歳の男が運転する大型トラックがセンターラインをオーバーし、対向してきた39歳の女性が運転する乗用車など、クルマ2台と次々に衝突。後部座席に乗っていた13歳の少女が頭などを強打し、事故から6日後に死亡したというもの。

事故後、トラックを運転していた男が「1時間前にドライブインでビールを飲んだ」と供述。酒気帯び相当量のアルコールを呼気から検出したため、業務上過失傷害(後に致死に切り替え)と道路交通法違反(酒気帯び運転)で現行犯逮捕した。取り調べでは加害者に「飲酒運転に恒常性が見受けられる」ということが判明したものの、「センターラインをオーバーしたことが事故の原因となったが、検出されたアルコール量も少なく、飲酒によって正常な運転が出来ない状態ではなかった」と判断されていたという。

業務上過失致死罪での起訴後、少女の両親が山口地検を訪れ、事件を担当する副検事に対して「相手は酒を飲んでトラックを運転していたのに、どうして危険運転罪を適用しないんだ」という内容の質問を行った。副検事は「危険運転罪は飲酒運転でも、特に悪質なケースにしか適用できない。今回は悪質なケースに当たるとは考えられない」などと説明してきた。

ところが「悪質なケースだと思う」と主張する遺族側と、「実例を考えると安易に適用できない」と押し通す副検事側で議論がエキサイトし、最終的には副検事が「刑法論争しても始まらない。もっと法律を勉強しろ。お前が言っているのは殺人罪で起訴しろと言っているのと同じだ」などと怒鳴りながら机を叩くなどしたという。

遺族側はこの行動に激怒。初公判を控えた今月23日、山口地検内の被害者支援室に副検事とのやり取りを書面にして提出した。この結果、「両者の信頼関係が損なわれ、公判維持が難しくなる」と判断に達し、即日で担当検事の交代が決まったという。

危険運転罪というものが一般に浸透してきた反面、加害者への厳罰を求める遺族と、適切な刑罰で起訴を行う検察関係者と間に起きた初のトラブルだが、同様のトラブルは表ざたにならないだけでこれまでにも起きていた可能性も。

《石田真一》

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