2000年5月、熊本県天草町で起きた交通事故の保険金支払いを巡って争われてきた請求訴訟(民事)で東京地裁は12日、保険会社に対して総額約4億3000万円を支払うように命じる判決を言い渡した。保険会社は控訴する方針を示している。
問題の事故は2000年5月28日に熊本県天草町で発生した。同県にある医療法人の関係者4人が乗った乗用車が崖から80m下の海岸に転落。クルマが大破して全員が死亡した。事故死した人の中には理事長夫人が含まれており、この夫人に掛けられていた災害時の死亡保険金の総額は57億9000万円という莫大なものだったことから、現在は休刊中の写真週刊誌が「保険金を狙った計画的な事故」と大々的に報じた。
この報道を機に、莫大な保険金が掛けられていることを知った生損保約10社は一斉に支払いを拒否。遺族側は「支払い拒否には根拠が無い」として各社に対して支払いを求める訴訟を起こしていた。
しかし、保険会社が支払い拒否の理由として掲げていた疑惑については、熊本地検が「事件性はない」と判断。遺族側が出版社を相手に訴えを起こしていた名誉毀損訴訟でも出版社側が全面的に敗訴しており、支払い拒否の理由は完全に否定されてきた。
12日の判決で東京地裁の難波孝一裁判長は「60km/hで走行している運転者がガードレールの切れ目を見つけ、そこに飛び込んで転落するのは不可能であり、事故は故意ではなく偶発的に起きたものと断定せざるを得ない」と断定した。
その上で「前方不注意によって偶発的に起きた事故である以上、保険会社が支払いを免れる理由はない」と判断。総額5億4000万円の請求に対し、4億3000万円の部分で支払いを命じた。遺族側は同様に支払いを拒否する会社すべてに裁判を起こしているが、判決が出たのは今回が初めてとなった。
ただし、保険会社は控訴する方針を示しており、一連の訴訟はまだまだ続いていく。