昨年12月、千葉県松戸市内の市道で泥酔状態のドライバーがクルマを猛スピードで走らせ、歩行者5人をはねて死亡させ、危険運転致死罪に問われた52歳の男に対する論告求刑公判が6月30日、千葉地裁松戸支部で開かれた。検察側は「無差別な殺人行為に匹敵する」として同罪の最高量刑となる懲役15年を求刑している。
この事件は昨年12月9日の未明に発生している。松戸市南花島3丁目付近の歩道の無い道路を歩いていた5人の男女が、後方から猛スピードで走ってきた乗用車に次々にはねられたというもの。
5人は当時2人と3人のグループに分かれて現場付近を歩いていたが、事故を起こしたクルマは歩行者の存在に気づかず、ブレーキも掛けない状態で激突したらしく、被害者うち1人は数メートル先に路上駐車してあったクルマに叩きつけられ、ガラスを突き破るような状態で発見された。被害者全員がほぼ即死の状態だったという。
クルマを運転していた男からは酒気帯び相当量のアルコールが検出されたが、実際には酩酊状態で事故当時は居眠り運転もしていたと判断。当初は業務上過失致死で逮捕されたが、翌日には危険運転致死に切り替えられ、送検されていた。
30日の論告求刑公判で検察側は被告の当時の状況について「自分が何時から酒を飲んでいたかも理解できていない酩酊状態にも関わらずに運転を継続し、クルマを走る凶器に豹変させた」と指摘。さらには遺族感情の一部にも触れ、「大切な家族の生命を突然奪われた遺族の深い悲しみは簡単に癒やされるものではなく、長い時間が必要だ」と被告に向かって語りかけた。
その上で「被告の行為は無差別な殺人行為に匹敵する。悪質で身勝手極まりない行為が前代未聞の事故を引き起こしており、その代償は大きい」として危険運転罪の最高量刑となる懲役15年を求刑した。
これに対して弁護側は「被告は今後の一生をかけて謝罪し、二度とクルマを運転しないことを誓っている」として情状酌量を求めた。
危険運転致死罪の最高量刑の求刑は大阪府堺市で発生した5人死傷の事故に続いて今回が2回目となる。判決公判は10月6日に行われる予定だ。