道路に排水するシステムは安全性に欠ける---国と県に賠償命令

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「凍結によるスリップ事故で負傷し、後遺障害を負ったのは、かんがい用水路が増水した際には道路上に排出する構造となっていたからだ」として、奈良県新庄町に住む55歳の男性が設備を管理する奈良県や国を相手に総額1億2500万円の損害賠償支払いを求めて訴えていた民事訴訟で、奈良地裁は20日、国の責任を認めて約8400万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

判決によると、問題の事故は1996年3月3日に発生している。奈良県新庄町の県道で、原告の男性が凍結路で事故を起こした知人のクルマの撤去を進めていたところ、このクルマに向かって同じ地点でスリップ事故を起したトラックが突っ込んできた。男性は押し出されてきたクルマにはねられ、腰骨を折る重傷を負い、現在も四肢のまひが残るなどの後遺障害がある。

事故現場となった道路の真下には1965年に設置されたかんがい用水路があり、設置当時はクルマの通行がない里道だったこともあり、サイホン式の排水口を設置した。これは用水路が増水した際、オーバーフロー状態となった水を水圧で路面まで押し上げて排水するというもので、1981年に県道が敷設された際にも撤去されず、そのまま残されていた。

原告の男性は「クルマが通行する道路に設置してよいものではなく、あふれ出した水が冬季に凍結する可能性は十分に予見できた」として道路設置者の県や、かんがい事業を行っていた国などを相手に総額1億2500万円の損害賠償を求める民事訴訟を奈良地裁に提訴していた。

20日の判決で奈良地裁の東畑良雄裁判長は、路面へ水があふれ出した理由を増水ではなく、用水路の弁にゴミが詰まるなどしていたことが原因であると認定し、過去にも同様のケースが5件ほど発生していた事実を指摘した。

その上で「水が路上にあふれ出した場合には、これを積極的に排水するための対策を講じる必要があった。その対策ができないというのであれば排水口そのものを撤去する必要があった」と、かんがい事業を行った国の責任を指摘。

また、県道を設置した奈良県についても「道路を敷設する際、排水口から水があふれ出すことを想定し、道路そのものの位置を変えることや、排水用の配水管を設置するなどの対策は行えたものと推測できる。危険性の認識や予測が欠けていたと言わざるを得ない」として責任を認め、男性が請求していた額のうち約8400万円の部分については請求に整合性があるとして、両者に連帯して支払うように命じる判決を言い渡した。

《石田真一》

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