フェード現象が起きたら運転中止---元バス運転手に有罪判決

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昨年6月、静岡県熱海市内の県道(通称:熱函道路)で大型観光バスが暴走し、道路脇の石垣に激突。乗客34人を死傷させる事故を起こしたとして業務上過失致死傷罪に問われた36歳の元バス運転手の男に対する判決公判が17日、静岡地裁沼津支部で開かれた。裁判所は男に禁固2年6カ月(執行猶予4年)の有罪判決を言い渡している。

問題の事故は昨年6月9日に発生している。同日の午後5時ごろ、熱海市熱海の熱函道路を走行していた大型観光バスのブレーキが効かなくなった。バスは下り坂を暴走し、カーブを曲がりきれずに道路脇の石垣に激突した。この事故で乗客1人が死亡。運転手を含む33人が重軽傷を負った。

その後の調べで、バスの運転手は事故直前にフットブレーキを多用していたことが判明した。現場となった熱函道路は長い下り坂が続いており、ブレーキを使いすぎるうちにブレーキパッドが加熱して制動力が著しく低下する「フェード現象」を起こし、ブレーキが効かなくなったとみられている。事故直後に行われた取り調べでは、ブレーキが効かなくなったことにパニックを起こした運転手がさらにブレーキを踏み続け、状態をより悪化させたこともわかっている。

17日の判決公判で、静岡地裁沼津支部の鎌田豊彦裁判官は「被告は職業運転手であるにも関わらず、安全に対する配慮を軽視した態度は非難せざるを得ない。ブレーキの利きが悪いと感じた時点で運転を一時中止するなどできたのに、安易に運転を継続。結果的に多数の乗客を死傷させた」と指摘した。

しかし、「この事故では本人も全治2カ月の重傷を負っており、事故後に退職していることからすでに社会的制裁は受けている。本人も反省しており、情状の酌量を考慮する必要がある」として、執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。

現場となった熱函道路では同様の事故がさらに一件発生し、これを契機に道路形状の見直しや、ブレーキ故障時の退避ルートが設置されることとなった。

《石田真一》

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